最終話 星の厄災
魔王となってから、一年。
世界は少しずつ変わり始めていた。
人間と魔族は争いをやめ、互いの国を行き来するようになった。
魔王城は恐怖の象徴ではなく、両種族が話し合うための場所となっていた。
玉座には魔王・りょう。
その隣には紗耶とルナ、そして仲間たちがいた。
ある日。
りょうは王城の宝物庫を訪れる。
そこには、かつて勇者だけが抜けると言われた一本の剣が眠っていた。
若き日の自分は何度挑戦しても、その剣は微動だにしなかった。
りょうは静かに笑う。
「ああ……。」
「そういうことだったのか。」
紗耶が首をかしげる。
「どうしたの?」
りょうは剣を見つめながら答えた。
「この剣は、最初から俺を選んでなかった。」
「勇者になるのは……。」
「紗耶、お前だったんだ。」
紗耶は驚く。
「私が?」
りょうは優しくうなずいた。
「俺は魔王になる運命だった。」
「でも、お前は勇者になる運命だったんだ。」
紗耶はゆっくりと剣の柄へ手を伸ばす。
その瞬間。
キィィィン……。
神々しい光が宝物庫を包む。
長い年月、一度も抜かれなかった伝説の剣が、軽々と鞘から抜かれた。
誰もが息をのむ。
ガイウスは涙ぐみながら笑った。
「やはり……。」
「歴代最高の勇者じゃ。」
ルナの胸の星の紋章が輝き始める。
「来る!」
空が裂けた。
黒い亀裂の向こうから、世界を覆うほど巨大な存在が姿を現す。
星の厄災。
空そのものが敵だった。
魔王りょうは黒耀を抜く。
勇者紗耶は伝説の聖剣を構える。
星の子ルナは両手を天へ掲げる。
「みんな!」
「行こう!」
戦いは三日三晩続いた。
りょうは漆黒の魔力で厄災を押さえ込む。
紗耶は聖剣で核を斬り裂く。
ルナは星の力で世界を守る結界を張り続けた。
一人では勝てない。
三人だからこそ戦えた。
最後の瞬間。
ルナが叫ぶ。
「今だよ!」
りょうは黒耀に全魔力を込める。
紗耶も聖剣へすべてを託す。
二人は互いを見て笑った。
「行くぞ!」
「うん!」
漆黒と黄金。
二つの剣が交差する。
「終焉黎明斬!!」
光と闇は一つとなり、星の厄災を貫いた。
世界を覆っていた黒い空が、ゆっくりと晴れていく。
そして――
厄災は静かに光となって消滅した。
世界は救われた。
人間も魔族も歓声を上げる。
誰もが理解した。
勇者だけでも。
魔王だけでも。
星の子だけでも。
世界は救えなかった。
三人がいたからこそ、未来は守られたのだと。




