第98話 魔王の継承
漆黒の鎧をまとった二人が激突する。
ガァァァァン!!
衝撃で玉座の間の天井が崩れ、無数の瓦礫が降り注ぐ。
りょうは黒耀を振るい、魔王は漆黒の剣で受け止める。
互いの一撃には、一切の迷いがなかった。
「はああああっ!」
りょうの剣が閃く。
魔王は紙一重でかわす。
反撃の斬撃。
りょうは身体をひねり、受け流す。
幾度も剣を交えるうちに、二人は言葉を交わさずとも互いの覚悟を理解していった。
魔王は静かに笑う。
「見事だ。」
「もう、お前は私を超えた。」
りょうは首を振る。
「まだ終わってない!」
「終わらせるのは、世界の争いだ!」
その言葉に、魔王は目を細めた。
「……そうか。」
「ならば。」
「受け取れ。」
魔王は剣を高く掲げる。
漆黒の鎧が砕け始める。
「えっ!?」
紗耶が驚く。
アリシアも目を見開いた。
「鎧が……。」
黒い光は、すべてりょうの黒耀へ吸い込まれていく。
魔王は苦しそうに笑った。
「歴代の魔王が受け継いできた力。」
「今日、お前に託す。」
りょうは叫ぶ。
「やめろ!」
「そんなことをしたら!」
魔王は穏やかに首を振る。
「これは、私が選んだ道だ。」
「もう……終わりにしよう。」
最後の力を振り絞り、魔王はりょうの胸を軽く押した。
黒い光がりょうを包む。
玉座の間に、静寂が訪れる。
魔王は膝をつき、ゆっくりと倒れた。
りょうは駆け寄る。
「しっかりしろ!」
魔王は弱々しく笑う。
「勇者。」
「いや。」
「新たな……魔王。」
「世界を頼む。」
その言葉を最後に、静かに息を引き取った。
玉座の間に、黒耀の鼓動だけが響く。
ドクン。
ドクン。
りょうの身体を漆黒の魔力が包み込む。
紗耶は涙を浮かべながら叫んだ。
「りょう!」
しかし、りょうは穏やかに微笑んだ。
「大丈夫。」
「俺は俺だ。」
黒い王衣が肩に羽織られ、漆黒の王冠が静かに現れる。
彼は玉座を見つめた。
試練で見た、あの孤独な勇者の姿が脳裏をよぎる。
そして、ゆっくりと玉座へ歩く。
座る直前、振り返った。
「一人じゃない。」
そう言って、紗耶へ手を差し伸べる。
紗耶は涙を拭い、その手を握った。
「うん。」
「ずっと一緒。」
ルナも笑顔で駆け寄る。
「私も!」
アリシアとガイウスも静かに二人の後ろへ立つ。
りょうは玉座へ腰掛けた。
だが、その瞳には支配欲も憎しみもない。
世界を守るという、ただ一つの決意だけが宿っていた。
その瞬間――
城全体が淡い光に包まれる。
遥か彼方の空で、巨大な黒い亀裂が開いた。
ルナの胸の星の紋章が強く輝く。
彼女は空を見上げ、小さくつぶやく。
「……来る。」
「星の厄災が。」
世界を救う最後の戦いは、今まさに始まろうとしていた。




