新たなメンバー、加わる
仕事探しを終えた彼らは、この日も外食で夕食を済ませていた。この街の安価な物価のおかげで、彼らの食欲を満たすことは容易だったが、亜月は早くも今後の生活を案じていた。
陰平 亜月
「今日もいっぱい食ったなー。流石に毎日外食するのは金かかるから、明日からは自炊もしていかないと。瑠樹と燐乃に頑張ってもらおう。」
魅羽月 瑠樹
「そうね。スーパーで色々買い出しに行かないと。この街の食材で、どんな料理が作れるか楽しみだわ。」
そんな会話をしながら、彼らがアパートへと続く裏道を歩いていると、ふと、足元に小さな影が寄り添ってきた。
扶情 隼は、その影に気づき、目を丸くした。
「えっ、野良猫だ!可愛いすぎるだろ!」
隼は、その巨体に見合わない優しい手つきで、弱々しく鳴く猫を構い始めた。猫は、隼の大きな手のひらに、警戒心なく頭を擦り付けてくる。
凪乃 朱木は、その猫を観察し、すぐにその異変に気づいた。
「三毛猫かー。珍しいな。……ていうか、この猫、かなり体が小さくて、今すぐにでも倒れそうな気がする……。栄養失調じゃないか?」
猫は、全身が泥と埃で汚れており、毛並みはゴワゴワとして、骨格が浮き出るほど痩せ細っていた。
扶情 隼は、その姿に心を痛め、決断した。
「ど、どうしよう。とりあえず、家で保護するか……。このままじゃ、この暗い街で生きていけないだろ。」
彼の提案に、誰も反対する者はいなかった。彼らは、この異世界で、自分たちと同じように「居場所を失った存在」に、強い共感を覚えたのかもしれない。
彼らは、急いで近くの店で猫の餌を買い、ウィーリス荘へと連れ帰った。
アパートに戻ると、まずは猫を風呂場へと連れて行き、牙 燐乃が丁寧に洗ってやることにした。
牙 燐乃は、猫の体を拭きながら、驚きの声を上げた。
「これで、拭いてと……って、こいつ三毛猫かと思ってたら、白猫じゃねぇか!」
泥と埃にまみれていた毛が洗い流され、現れたのは、雪のように真っ白な毛並みだった。
陰平 亜月は、その変わり果てた姿を見て、胸を痛める。
「泥とかで汚れてたんだな……可哀想に……。どれだけ過酷な環境で生きてきたんだ。」
風呂から上がった猫は、タオルで体を拭かれるや否や、すぐにリビングの壁側に用意されていた餌の元へ駆けつけ、むさぼり食べた。その勢いは、よほど空腹だったことを物語っていた。
魅羽月 瑠樹は、その様子を優しく見守る。
「よっぽどお腹空いてたのね……可哀想に。これで少しは安心ね。」
猫は、餌を一粒残らず食べ尽くすと、満足したように伸びをした。そして、そのまま彼らに近づき、隼の足元に寄り添い、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
陰平 亜月
「可愛いなー。まさかの白猫だったとは……。まるで、光が戻ってきたみたいだ。」
凪乃 朱木は、その猫を撫でながら、提案した。
「この猫の名前決めるか。何が良い?」
すると、猫は、再び地面に寝っ転がり、全身を大きく伸ばした。その姿は、まるで餅が伸びるかのように、だらしなく、しかし愛らしかった。
扶情 隼は、その姿を見て、閃いた。
「……なんかこいつ、伸びたら、ぶみ〜って感じするから、「ぶみ」って名前良くね?」
その独特なネーミングセンスに、一同は顔を見合わせたが、誰も反対はしなかった。
牙 燐乃は、笑いながら賛成する。
「かなり特徴的だな(笑)。私はそれでも良いよ。ぶみ、か。覚えやすい。」
こうして、彼らの規格外の五人組に、新たなメンバー「ぶみ」が加わった。
ぶみは、彼らの殺伐とした日常に、一服の清涼剤のような存在となった。その純粋な白さと、無邪気な仕草は、彼らがこの街で触れた「闇」を一時的に忘れさせてくれる。彼らは、ぶみを囲み、久しぶりに心からの笑顔を見せた。この小さな命を守ることが、いつしか彼ら自身の心の拠り所になっていく予感がした。
このまま時は流れ、深夜になった。ぶみは、隼の足元で、ぐっすりと眠っていた。きっと、久しぶりに安心できる場所で、疲れていたのだろう。
凪乃 朱木は、部屋の電気を消すために立ち上がった。
「ぶみも寝たことだし、みんなも寝よう。明日からバイトもある。電気消すよー。」
みんなは、それぞれの寝床につき、眠りにつく。
だが、扶情 隼は、まだ起きていた。彼は、静かにぶみを撫でながら、小さな声で呟いた。
扶情 隼
「俺の家は、動物飼うの禁止されてたから、なんか余計に嬉しいな。……ぶみ、お前は俺たちの家族だ。」
まさかの、新たなメンバー「ぶみ」が、この異世界での彼らの生活に、温かい光をもたらした。
こうして、彼ら五人と一匹は、ようやく眠りにつき、朝を迎えた。
明日から始まる、偽りの社会人生活と、世界を救うための潜伏活動。
その過酷な日々の前に、彼らは、つかの間の安らぎを得たのだった。




