彼らが手にしたもの
突如として始まった、この街の支配者「死刻の五柱」 vs 「異世界に迷い込んだ中学一年生」という、あまりにも無謀な戦い。
スペスが語った「この世界を救う」「光を取り戻す」という途方もない約束は、彼らにとって遠い夢物語のように思えた。
しかし、「死刻の五柱を倒す」という、たった一つの決意が、彼らを突き動かした。
そして、奇跡は起きた。五人全員がソウルエンデムの能力を手に入れ、絶望的な確率を覆して勝利を掴んだのだ。
激しい戦いの傷跡は、いつの間にか消え失せていた。まるで、すべてが夢であったかのように。
戦いを終えた五人は、再び北京都の街並みへと帰路についていた。
例の繁華街を歩くと、そこにいた人々から、堰を切ったように凄まじい感嘆の声が上がった。
「あの死刻の五柱を倒した五人組だ!!」
「……まるでヒーローだわ……」
「この街を救ってくれてありがとう!」
人々の声は、感謝と歓喜の嵐となって彼らを包み込む。
扶情 隼は、その声に耳を傾け、どこか照れくさそうに呟いた。
「どうやら、俺たちはこの街を救ったわけみてぇだな」
陰平 亜月は、空を見上げながら問いかける。
「……スペスの言った光を取り戻すって、これでいいのか?」
凪乃 朱木は、腕を組み、納得したように頷いた。
「あぁ。世界を救う、とまではいかないが、一つの街を救ったと考えるなら、光は取り戻したと言えるだろう」
魅羽月 瑠樹は、柔らかな笑みを浮かべた。
「そうね……なにより、みんながこうしてまた集まれる形になれてよかったわ」
牙 燐乃は、フッと鼻で笑う。
「ふっ、まぁお前らのことだから死なないとは思ってたぜ。……とりあえず、私らはこれからどうすればいいんだ?」
燐乃の問いに、隼は腕を組んで考え込む。
「確かにそうだな……もう『光』は取り戻したし、これから他に何すればいいんだ……」
朱木は、遠い目をして呟いた。
「この五人以外の人たちも、今頃どこで何をしてるんだろうな……俺たちみたいに、上手くいってるといいけど……」
瑠樹は、少し不安げに尋ねる。
「このままこの街で住むことになるのかしら……」
亜月は、現実的な提案をした。
「とりあえず、あのアパートにでも戻るか。話はそこからにしよう」
ひとまず五人は、これからのことについて話し合いながら、慣れ親しんだアパートへと戻っていた。
その時、突然、空から巨大な光が彼ら五人に向けて降り注いだ。
「……!? なんだ!? この光は……眩しい……」
燐乃は、思わず目を細める。
朱木は、どこか予感めいた表情で呟いた。
「……またなんか起きそうだな……」
隼は、その光の中から微かに聞こえる声に耳を澄ませる。
「なんだ、微かに声がする……この声は……」
瑠樹と亜月は、同時にその声の主を悟った。
「……スペス!?」
その聞いたことのある声は、あの教会にいた謎の少女「スペス」のものだった。
スペスは、彼らに向けて口ずさむように語りかける。
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「あなたたちは、この『支配都市』で学んだのでしょう。
力を振るうことは容易い。だが、己が血を流し、傷つきながらも他者を守ろうとすることこそが、本当の強さであると。
誰かを救うために立ち上がること。
自分ではなく、人々の笑顔を信じて剣を取ること。
その姿は、時に孤独で、痛みを伴い、倒れそうになることもあった。
けれど、あなたたちは決して諦めなかった。
無力に思えた街の人々も、あなたたちの姿を見て正義を信じ、立ち上がる勇気を得た。
正義とは、押しつけるものではない。
正義とは、名声のために掲げるものではない。
正義とは、誰かを守りたいと願った、その一瞬の祈りから生まれるもの。
あなたたちは、その純粋で揺るぎない想いを、この世界で手に入れたのです。
胸に宿した『正義』を掲げ、互いを信じ抜け。さあ、行きなさい……。
【あなたたちの物語は、まだ終わっていないのだから】……」
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スペスの言葉が響き渡ると同時に、彼らの目の前に、眩いばかりの光の扉が現れた。
朱木は、その扉を見つめ、静かに笑った。
「……なるほど。まだ、俺たちの冒険は、【ここで終わりってわけじゃない】ってことだな」
亜月は、扉の向こうに広がるであろう未知の世界を想像する。
「この扉の先には、また新たな【世界】が繰り広げられてる。きっと、またこの先に飛んだら俺らはまた【離れ離れ】になる」
隼は、少し驚いた表情を見せながらも、どこか晴れやかな顔で言った。
「……びっくりさせんなよ……でも、俺たちはこの街での役目はもう果たしたってことなんだな」
瑠樹は、不思議そうに首を傾げる。
「……私たちは、本当に【選ばれし者】っていうことね。一体、元の世界にはいつ戻れるのかしら……」
燐乃は、不敵な笑みを浮かべた。
「まぁこんな世界でやっていくのも悪くねぇな。私たちの冒険は【始まったばかりだ】」
隼は、仲間たちを見回し、力強く宣言した。
「……この扉に入ったら、もう俺らは別の場所へと飛ばされる。俺らの友情は、いつまでも共鳴している。
勇気を振り絞って、【次の境地へ行こう。】」
朱木、亜月、瑠樹、燐乃は、一斉に声を揃えた。
「当たり前だ!」
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こうして、扶情 隼、陰平 亜月、凪乃 朱木、魅羽月 瑠樹、牙 燐乃の五人は、固く手を合わせ、光り輝く扉の向こう、次の境地へと飛び立った。
彼らの物語はまだ、終わらない。
いや、【始まったばかりだった。】
Chapter1【支配都市:グランドヴィル編】〜完〜




