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Dum Spiro Spero〜この教室33人は息をしている限り希望を捨てない〜  作者: AmorNoctis-アモールノクティス-


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崩ゆく理性と希望

山奥に忘れ去られた廃遊園地。錆びついた観覧車とジェットコースターが、かつての賑わいを嘲笑うかのように佇むその場所で、凪乃朱木と笑嵐廻の容赦ない戦いが繰り広げられていた。しかし、戦況は朱木にとって絶望的だった。廻の放ったナイフが右足に深く突き刺さり、朱木は地面に膝をついていた。戦いは、今にも幕を閉じようとしていた。


「くそ……いつの間にか奴のナイフが右足に……立てねぇ……」


朱木の呻き声が、廃遊園地の寂寥とした空気に吸い込まれていく。笑嵐廻は、そんな朱木を見下ろし、道化師の仮面の下で嘲笑を浮かべた。


「俺らがソウルエンデム持ちって言うのを知っててどうして戦いに挑んだのかな〜?また一人アホが釣れて嬉しいよ!周りよりも背も体格も大きいからって俺たちに勝てるなんて、そんなことは思ってないよね!」


廻の言葉は、朱木の心を深く抉る。しかし、朱木の闘志はまだ尽きていなかった。


「……能力者ってことを知った上で戦いに挑んだのが間違いだったか……俺としたことが、情けねぇ……でも、ここで勝たないと意味がない。誓ったんだ。あの『少年』との約束を……」


朱木の脳裏に、あの少年の顔がよぎる。その約束だけが、今、朱木を支える唯一の光だった。廻は、そんな朱木の言葉を鼻で笑い飛ばす。


「ということはきっと俺たちに殺されてその敵討ちってことかな?でもどの少年のことがわからねぇなー。そのくらい俺は人間のこと殺してきたんだもん。まぁそんなゴミみたいでつまらない約束も、ここでお終いさ。」


廻の言葉は、朱木の逆鱗に触れた。少年の約束を侮辱された怒りが、全身を駆け巡る。


「……このクソッタレが!」


朱木は、怒りに任せて近くにあった鉄パイプを精一杯廻に投げつけた。しかし、廻はそれを軽々と受け止め、自身のハンマー「ディトー」で跳ね返す。鉄パイプは、朱木の胸に強く当たり、朱木は呼吸困難に陥った。


「無駄だ!これ以上足掻いてもなぁ!」


廻の言葉が、朱木の耳に届く。しかし、朱木は諦めなかった。


「はぁ、はぁ……息が、苦しい……でも、こんなところで負けてたまるか……」


朱木の必死の抵抗も虚しく、廻は巨大化したハンマーを朱木に向けて大きく振りかぶった。


「口だけのようだな。この負け犬が。お前の死に場所は残念ながらここだ。死ねぇぇ!このクソガキがぁぁ!」


廻の狂気に満ちた叫びが、廃遊園地に響き渡る。巨大なハンマーが、朱木に迫る。朱木は、その時、この街の人々の涙と、あの少年のことを思い出した。無様な形で死んでたまるか。その強い思いが、朱木の心に再び火を灯した。



「……俺は……お前たちを倒すためにここにいるんだ!!」



朱木の叫びが、廃遊園地の空気を震わせた。その瞬間、廻の振り下ろされたハンマーが、まるで時が止まったかのように、空中で静止した。廻は、信じられないものを見るかのように目を見開く。


「!?なんだ!?俺のハンマーが……【凍ってやがる!?】しかも、そのオーラはもしかして!?」


朱木の背中から、一気に水色のオーラが遊園地内に放たれた。それは、澄み切った冬の空のような、あるいは深海の底のような、神秘的な輝きを放っていた。人々の涙、そして少年との誓い。それらが朱木の心の中で一つになり、新たな力が芽生えたのだ。その名は、【理氷結りひょうけつ:アイス・ドゥラトス】。手から氷を自由自在に出し、操れる能力。


「なんだこれは……俺のハンマーが、動かねぇぞ!」


廻は、凍りついたハンマーを必死に動かそうとするが、びくともしない。その顔には、焦りと恐怖の色が浮かんでいた。朱木は、ゆっくりと立ち上がり、その瞳には、もはや迷いはなかった。


「俺は、こんなところで負けてたまるか。この街の人々、そして少年との誓い。今ここでお前を倒す!」


朱木の言葉は、冷たい氷のように、廻の心を貫いた。廻は、必死に反論する。


「なんなんだ!お前もソウルエンデムが使えるなんてありえねぇぞ!くそ!なら俺のナイフでも喰らえ!」


廻は、ジャグリングナイフを朱木に向けて投げつけた。しかし、そのナイフは、朱木に届く前に、空中で一瞬にして凍りつき、地面に落ちて砕け散った。


「……くそ……立場が、変わっただと……お、お前なんかがこの俺様に……しまった!足が凍って動かないぞ!」


廻の足元から、急速に氷が這い上がり、その体を縛り付けていく。廻は、もはや身動きが取れなくなっていた。朱木は、一歩一歩、廻に近づいていく。その足音は、氷の上を歩くように、静かに、しかし確実に響いた。


「……もうこれ以上はこの街に手出しはするな。お前たちのせいでどれだけの人々が悲しみに溢れてると思ってんだ。」


朱木の言葉は、冷たく、しかし確かな怒りを帯びていた。廻は、恐怖に顔を歪ませ、必死に抵抗する。


「……そんなの知るか!おい、やめろ……来るな……俺様に近づくな!」


「いくら足掻いても無駄だ!お前ごと……【凍れ!!】」


朱木の静かな命令が、廃遊園地に響き渡る。廻の全身は、瞬く間に氷に覆われ、その動きは完全に停止した。廻の絶叫が、氷の檻の中に閉じ込められ、やがては途絶えた。廃遊園地での決闘は、こうして幕を閉じた。


朱木は、完全に凍りついた廻に背を向け、静かに語りかけた。


「……お前も、お前なりに正義を抱えて生きてきた。けれど、その正義が人々を無差別に殺すって言うのは違うと思うぜ。来世ではこんなことするなよな。……


【俺の、勝ちだ。】」


朱木の瞳には、勝利の喜びではなく、静かな悲しみと、そして未来への確かな決意の光が宿っていた。廃遊園地には、再び静寂が訪れた。ただ、凍りついた道化師だけが、その場に立ち尽くしていた。

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