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Dum Spiro Spero〜この教室33人は息をしている限り希望を捨てない〜  作者: AmorNoctis-アモールノクティス-


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女は【度胸】

【残滅ノ三穿尾ざんめつのさんせんび:カエデス・スコーピオン】


赤神 轟子が所持するソウルエンデム。

名前の通り、両腕には2つの鎖のついた鉄球、そして背中には毒針が付いている、まさにスコーピオンみたいな能力。

両腕の武器の名は、「岩鉄球がんてっきゅうセルロムピーラ」。背中についている毒針は、「ベネナムスティンガー」。

赤神轟子は、生まれつき人並み外れた体格を持っていた。その恵まれた肉体は、女子としては異質であり、幼い頃から周囲の好奇の目に晒され、恐れられてきた。故に、彼女には親しい友人がほとんどいなかった。しかし、そんな轟子にも、春は訪れた。


高校二年生に進級したばかりの春。新しいクラスに、轟子はいつも以上に緊張していた。自分の隣の席に座ったのは、この学校で一番のマドンナと称される

加奈芽かなめ 雪奈ゆきな」だった。登校初日、自己紹介の後に設けられた隣同士でのトークタイム。轟子は、いつものように身構えていた。


「私の名前は轟子だ。よろしくな!」


ぶっきらぼうな自己紹介にも関わらず、雪奈はにこやかに微笑んだ。


「轟子ちゃん、いい名前ね!私は雪奈って言うの。よろしくお願いします!」


雪奈の屈託のない笑顔と、飾らない言葉に、轟子は戸惑った。しかし、思いのほか二人の会話は弾んだ。共通の趣味や興味が見つかり、まるで長年の親友であるかのように、二人は時間を忘れて語り合った。帰り道も偶然同じ方向だったため、二人は自然と連れ立って帰るようになった。


「轟子ちゃんは身長何センチあるの?」


他愛のない会話が続く。雪奈の問いに、轟子は少し照れくさそうに答えた。


「私は187cmあるぜ。女子のくせになんでこんなに高くなっちまったんだろうな、はは」


雪奈は、そんな轟子の言葉を面白そうに聞いていた。彼女にとって、轟子の大きな体格は、畏怖の対象ではなく、むしろ魅力的に映っていたのだ。


「……そう言えば、またここら辺でヤンキーたちが集ってるらしいぜ。本当恐ろしいな」


轟子がふと、最近の街の噂を口にした。


「知ってる!それ!なんか夕方くらいに他校の男子たちがここら辺に集まってるらしいね。私たちも気をつけないといけないね!」


雪奈は、少し心配そうな顔で言った。轟子は、そんな雪奈を守るように、力強く宣言した。


「だな!もし雪奈になんか起こったら、その時はそのヤンキー共をボコボコにしてやるよ」


「頼もしいわ、轟子」


雪奈は、心底嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は、轟子の心を温かく包み込んだ。翌日も、二人は一緒に帰路についた。しかし、その日は、運命を大きく変える一日となる。


「それでね〜……あっ!数学の課題、教室に置いてきちゃった!」


轟子が、突然声を上げた。重要な課題を忘れてきたことに気づき、焦りの表情を浮かべる。


「えっ!まじか。あの課題、かなり重要なやつだもんね……私も一緒に行こうか?」


雪奈は、轟子を気遣うように言った。しかし、轟子は、雪奈に迷惑をかけたくない一心で、首を横に振った。


「いや大丈夫!私一人で行ってくるから先帰ってもいいよ……」


「あら本当?じゃあ先帰ってるね!また明日!」


雪奈は、轟子の言葉を信じ、笑顔で手を振って別れた。轟子もまた、雪奈に手を振り返し、学校へと引き返した。


「おう!気をつけてな!」


しかし、この時、誰もが予想だにしなかった悲劇が、静かに、そして確実に迫っていた。二人の別れを、陰から見つめる複数の視線があった。


「……おい、あのデカ女、学校に戻るらしいぞ」

「今のうちだな。行くぞ」


轟子の些細な忘れ物が、雪奈の運命を、そして轟子自身の運命を、大きく狂わせる引き金となることを、この時の二人は知る由もなかった。


轟子が学校へと引き返していると、どこからか女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。その声は、聞き覚えのある、大切な友人の声だった。


「なんだ!?叫び声だと……この声は、雪奈!まさか!?」


轟子は、迷わず悲鳴の聞こえた方へと駆け出した。路地裏に差し掛かると、そこには目を疑うような光景が広がっていた。数人のヤンキーに囲まれ、体がボロボロになった雪奈が、地面に倒れ伏している。


「雪奈!大丈夫か!?……えっ、、、、嘘だろ、、、」


轟子は驚愕し、声を失った。雪奈の周りには、下卑た笑みを浮かべるヤンキーたちが十人ほど苛立っていた。


「このクソビッチが。俺らの言う通りにしなかったらこんなことにはならなかったのにな」


「早く【入れてくれれば】こんなことにはならなかったのになー。くそ、ムラムラが止まらねぇ……あ?なんだお前、もう帰ってきやがったのかデブ女」


「なんならこの女も潰してやろうぜ。ムカついてきた」


「このナイフで血の海にしてやるよ」


ヤンキーたちの言葉が、轟子の耳に届かない。彼女の視界には、ただ、傷つき倒れる雪奈の姿だけが映っていた。怒り、悲しみ、絶望。様々な感情が渦巻き、轟子の心は真っ白になった。反撃する余地もなく、轟子は膝をつき、ただただ無心になっていた。


「……雪奈……そんな、嘘でしょ……」


その時、ヤンキーの一人が轟子に襲いかかろうとした。しかし、その瞬間、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


「やべぇ、サツが来た……ひとまずお前ら逃げろ!」


ヤンキーたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。すぐに警察官と救急隊員が駆けつけ、雪奈は病院へと運ばれていった。轟子は、状況が上手く掴めず、パニック状態に陥っていた。


「あなた大丈夫!?ここで何があったの!?」


救急隊員の問いかけにも、轟子はまともに答えることができない。


「……私もわからない……どうしよう、どうしよう!雪奈、雪奈!」


警察官は、轟子の様子を見て、彼女も保護するよう指示した。轟子は、そのまま病院へと運ばれ、悲しみの一夜が終わった。


翌日、轟子は病院のベッドで目を覚ました。頭がぼんやりとし、精神が落ち着かない。しかし、すぐに昨夜の出来事がフラッシュバックした。


「……そうだ!雪奈!雪奈はどうなった!」


轟子は、ベッドから飛び起き、看護師に詰め寄った。そこに、院長がやってきた。


「あぁ!落ち着いてください!今は気持ちをリラックスさせる方針なので……」


「先生!雪奈はどうなったんですか!?まだ生きてますか!?」


轟子の必死な問いかけに、院長は重い口を開いた。


「……残念ながら、あれ以来心肺停止になっていて、本日の13時38分に、死を確認しました……」


その言葉は、轟子の心臓を鷲掴みにした。轟子は、ベッドの上で泣き崩れた。たった一人の親友、雪奈が、一夜にしてこの世を去ってしまったのだ。轟子は、血が滲むほど強く拳を握りしめ、ただただ泣くことしかできなかった。


「……私のバカ……忘れ物しなかったら、こんなことにはなっていなかったのに……雪奈、たった一人の友達……クソ、あいつら……【絶対に殺してやる!】」


轟子の瞳に、憎悪の炎が燃え上がった。院長の制止も聞かず、轟子は病室を飛び出し、病院を後にした。彼女の心には、雪奈を奪った者たちへの、激しい復讐心が渦巻いていた。


「全てが憎い……あのヤンキーども、ぶっ殺してやる」


轟子は、街から離れた場所へと向かった。その道中、耳慣れた声が聞こえてきた。それは、昨夜のヤンキーたちの声だった。


「昨日は危なかったなー。あのままサツに捕まってたら少年院入りだったぜ」

「でも、あの女で抜いてみたかったなー笑。童貞卒業できたのに」


下劣な会話に、轟子の怒りは頂点に達した。彼女は、ヤンキーたちの元へと向かった。


「それマジわかるわー……て、お前は昨日のデブ女!?どうしてここがわかった!」


「ここはサツもいねぇし、こいつには死んでもらわねぇとな。今度こそ仕留めるぞ」


ヤンキーたちは、轟子を嘲笑う。しかし、轟子の表情は、もはや人間のものではなかった。その瞳には、殺意だけが宿っていた。


「雪奈の仇、ここで取る……」


その瞬間、轟子の体は、前よりも遥かに大きく肥大化した。筋肉が隆起し、皮膚が裂ける。そして、両腕は一気に鎖に繋がれた鉄球へと変化した。背中からは、鋭利な針が突き出す。それは、まさに巨大なサソリの姿だった。


「……待て!こいつ急にデカくなったぞ!しかも腕が変形してる!みんな逃げろ!」


ヤンキーたちは、轟子の異様な姿に恐れをなし、逃げ惑う。しかし、轟子は、彼らを逃がすつもりはなかった。


「逃さねぇよ。血の海になってもらうのは、


【お前らの方だ!】」


轟子の叫びと共に、鎖の鉄球が振り下ろされた。その場は、瞬く間に血の海と化し、ヤンキーたちは次々と命を落としていった。轟子の心には、殺戮の快感が満ちていた。


「……はぁ……殺すのって、こんなにも楽しいんだな……ワーハッハッハッ!全てどうでも良くなってきたぜ。これからは、私の好きに生きていく……」


これが、赤神轟子の「ソウルエンデム」

【残滅ノ三穿尾ざんめつのさんせんび:カエデス・スコーピオン】の誕生の瞬間だった。



ーーーーーーーーーーー



牙燐乃

「……お前はそんな辛い過去を背負ってきたんだな。見損なったぜ」


赤神轟子

「あの出来事は忘れもしねぇさ。さぁ、話を置いといて、死刻の五柱は、例えどんなに相手がどんな人だろうと、逆らった者は殺さねぇといけねぇ決まりがあってな。だから……」


轟子は、燐乃の言葉を遮るように、背後へと回り込んだ。燐乃が気づいた時には、すでに遅い。轟子の巨大な鉄球が、燐乃の背中に叩きつけられた。


「お前もこのまま生かしてはおけねぇよ。」


「アッ!いつのまに後ろに!?クソ!……いってぇ……体が血まみれだ……腰を強く打ったから上手く立てねぇ……」


燐乃は、衝撃で大きく吹き飛ばされ、地面に倒れ伏した。血が滲み、腰の激痛で立ち上がることができない。轟子は、ゆっくりと燐乃に近づき、その巨体を見下ろした。


「【血の雨は魂の温もりだぞレディ。】この轟子様に真っ当に逆らう奴は初めてみたよ。さぁ、ここで死になさい、

牙燐乃さいとり りんの】」


轟子の冷酷な言葉が、廃スタジアムに響き渡る。燐乃は、意識が朦朧とする中で、かすかに微笑んだ。


「ふっ、私は……こんなところでは死なねぇさ……」


その瞳には、まだ、諦めきれない闘志が宿っていた。

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