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Dum Spiro Spero〜この教室33人は息をしている限り希望を捨てない〜  作者: AmorNoctis-アモールノクティス-


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理知の正義 vs 笑う道化

笑嵐廻の能力によって、朱木たちと死刻の五柱は、この街のあちこちに散らされた。光が収束し、凪乃朱木が足元に着地した時、全身に鈍い衝撃が走った。アスファルトのひび割れた感触が足裏から伝わり、彼はゆっくりと周囲を見渡した。


「ここは…ボロボロな観覧車にボロボロなジェットコースター。廃業された遊園地だな」


錆びついた鉄骨が剥き出しになった観覧車は、まるで巨大な骸骨のように空にそびえ立ち、朽ちたジェットコースターのレールは、絡みつく蔦に覆われていた。かつて子供たちの歓声で満ちていたであろう場所は、今はただ、静寂と荒廃に包まれている。風が吹き抜けるたびに、錆びた金属が軋む音が、幽霊の囁きのように響いた。


その静寂を破るように、甲高い声が響いた。


「おっ!よくわかったねぇ!そして貴様の相手はこの僕、笑う道化こと、笑嵐廻様だよ!よろしくね!」


声の主は、朱木の目の前に立っていた。派手なピエロの衣装を身につけ、顔には不気味な笑顔の仮面。その仮面の下から覗く瞳は、狂気と愉悦に満ちているように見えた。笑嵐廻。死刻の五柱の一人。


「俺の相手はお前か」


朱木は、冷静に相手を見据えた。彼の心には、一瞬の動揺もなかった。ただ、目の前の異様な存在に対する警戒心だけが、静かに燃え上がっていた。


「初めて見た時のお前のその不気味なピエロのお面はとても印象深かった。さぁ、正々堂々戦おうぜ」


舞台は、山奥に忘れ去られた廃業遊園地。凪乃朱木と笑嵐廻は、この場所で、互いの命を賭けた戦いを始めることになった。


朱木は、戦いの前に、一つだけ確認しておきたいことがあった。


「…戦う前に、お前らの死刻の五柱について詳しく教えてくれるか」


朱木の問いに、笑嵐廻は一瞬、声のトーンを落とした。その不気味な仮面の下で、彼の表情がどう変化したのかは分からない。しかし、その声には、どこか冷たい響きが混じっていた。


「…俺たち五人組は元々皆、関係性なんて全くないままこの街、北京都で育った。生まれ育った学校も違う。わかりやすく言うと、赤の他人のような存在だった。けれど一つだけ共通点がある。それは、

【俺含め五人とも他の奴らよりも残酷で苦しく辛い過去を背負って生きてきたこと】だ」


廻の言葉に、朱木は眉をひそめた。残酷で苦しい過去。それが、彼らを結びつける共通点だというのか。しかし、それがこの街を支配しようとする理由とは、どう繋がるのか。


「なるほどな。五人ともどんな過去を歩んできたかは全く分からないが、それとこの街を支配することはどんな関係があるんだ。そして、噂の『能力』とやらも…うわ!」


朱木の言葉を遮るように、突然、笑嵐廻の全身から紫色のオーラが噴き出した。そのオーラは、廃遊園地の敷地全体を覆い尽くすように広がり、不気味な光を放つ。空気が重くなり、朱木の肌を粟立たせた。


「能力ってこのことかな!!??ビビっちゃってて面白い!君可愛いね〜!」


紫色のオーラを纏った笑嵐廻は、愉悦に満ちた声で叫んだ。その右手には、サーカスで使うような鋭利なナイフが三本、まるでジャグリングのように軽やかに握られている。廻は、そのナイフを朱木目掛けて投げつけた。その速度は尋常ではなく、まるでエイムアシストがついているかのように、朱木に集中的に狙いを定めて飛んでくる。


「危ねえ!」


朱木は、咄嗟に近くにあった朽ちた古屋の陰に身を隠した。ナイフは、朱木がいた場所を正確に貫き、壁に深く突き刺さる。あと一歩遅れていれば、彼の命はなかっただろう。心臓が激しく脈打つ。明らかに殺意のこもった攻撃だった。


「明らかに俺の方に向かって勢いよく飛ばしてきやがった…これがあいつの能力か」


朱木が古屋の陰から様子を窺うと、投げられたナイフは、まるで吸い寄せられるかのように笑嵐廻の元へと戻っていく。その光景に、朱木は改めて警戒心を強めた。


「僕の能力は、

【幻狂ノ乱舞:マッド・カーニバル】って能力。武器はこのジャグリングナイフとピコピコハンマーだ。見た目通りの能力と武器だろう?」


廻は、再びナイフを構えながら、挑発するように言った。その言葉通り、彼の能力は、その道化師のような外見と不気味な雰囲気にぴったりと合致していた。朱木は、このままではまともに戦えないと直感した。相手は、予測不能な動きと、正確無比なナイフ捌きで彼を追い詰めてくるだろう。


「その通りだな。でもこのままじゃ明らかに俺は勝てない…」


朱木は、周囲を見回し、近くに転がっていた錆びた鉄パイプを手に取った。頼りない武器だが、何もないよりはましだ。廻は、朱木の様子を嘲笑うかのように、再びナイフを投げつける。朱木は、鉄パイプを盾にするようにして、飛来するナイフを辛うじて弾き返した。金属がぶつかり合う甲高い音が、廃遊園地に響き渡る。


防戦一方の状況の中、朱木は、疑問をぶつけた。「なぜ死刻の五柱にしかその能力はないんだ!一体どのような経緯で…」


朱木の問いに、笑嵐廻は、ナイフを投げる手を止め、不気味な笑みを浮かべた。


「君、ソウルエンデムを知らないのか?まぁ当然か。一般市民には伝わるはずもない。この能力は過去に絶望を味わった人たちにだけ預けられる能力のことだ。けれど全員がそうじゃねぇ。確率的には数千万人に一人とされている。この街、北京都には奇跡的に五人もいた。その五人が集まって今の死刻の五柱ができたって訳だ」


ソウルエンデム。絶望を味わった者にのみ与えられる能力。そして、その発現確率は一千万人に一人。朱木は、その言葉に衝撃を受けた。死刻の五柱のメンバーが、皆、壮絶な過去を背負っているという廻の言葉が、脳裏をよぎる。彼らの異様な雰囲気の根源が、そこにあったのだ。


「なるほどな。てことは非道なお前にもそんな過去があったってことか?」


朱木の問いに、廻は一瞬、その不気味な仮面の下で表情を硬くしたように見えた。しかし、すぐにいつもの道化師の笑みに戻り、遠い目をして呟いた。


「ああそうさ。あのことは忘れられないさ…」


朱木には伝わっていないが、ここから笑嵐廻の過去の回想シーンが始まる。彼の狂気の根源、そして「幻狂ノ乱舞」が生まれた悲劇が、今、明かされようとしていた。

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