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Dum Spiro Spero〜この教室33人は息をしている限り希望を捨てない〜  作者: AmorNoctis-アモールノクティス-


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16/31

決意

翌朝、陰平 亜月は、疲労と不安が入り混じった状態で目を覚ました。


陰平 亜月

「あー。眠いし疲れが。……あれ?隼がいない……あっ、そうだったあいつ今病院にいるのか……。」亜月は、隼の不在に、改めて昨日の出来事の重大さを感じた。


彼らは、昨日の出来事をまだ深く思いながらも、生活と情報収集のために、仕事へと向かった。この街で生きるためには、日常を装うことが、最も重要な戦術だった。


そして夕方になり、亜月と朱木は仕事を終え、ウィーリス荘に帰宅した。


亜月・朱木

「ただいまー。」


魅羽月 瑠樹は、安堵の表情で二人を迎えた。

「おかえりなさい。今日は二人とも大丈夫だった?何事もなく過ごせた?五柱の動きはなかった?」


凪乃 朱木

「おう。少し疲れが溜まってたが、なんとか大丈夫だった。五柱の動きは、特になかったようだ。嵐の前の静けさってやつか。」


陰平 亜月

「俺も同じだ。今日は夜飯どうする?隼の面会に行く前に、腹ごしらえしておきたい。」


魅羽月 瑠樹は、ハッとした。

「今日は……あっ、食材切らしてたんだ、思い出した……。昨日スーパー寄ろうと思ってたんだ……。ごめんなさい、すっかり忘れてたわ。」


牙 燐乃

「仕方ない、外食するか。食ったあとは隼の面会に行こう。あいつの顔を見ないと、落ち着かない。」


こうして彼らは、外食するため街に出た。街を歩いていると、昨日事件が起こった道が目に入った。道の真ん中には、まだ微かに血の跡が残っていた。


牙 燐乃は、顔をしかめた。

「だめだ……どうしてもフラッシュバックしてしまう……あの出来事を思い出す……。ぶみと隼の姿が、目に焼き付いて離れない。」


凪乃 朱木は、冷静に判断した。

「……この道は避けよう。別のルートに行こう。今は、無駄な感情に囚われている場合じゃない。」朱木は、燐乃の肩を叩き、別の道へと誘導した。


彼らは、一つ街から離れたところで外食をし、厚生病院へと向かい、隼の面会に訪れた。病院の建物は、この街の他の建物とは違い、どこか清潔で、希望を感じさせる場所だった。


陰平 亜月

「えーと。8階だっけか?エレベーターはあっちだな。」


魅羽月 瑠樹

「そうね。そして8階の窓口で申し出るって。隼、私たちが行くまで、頑張ってね。」


エレベーターが8階に到着する。廊下は静かで、消毒液の匂いがした。


牙 燐乃

「窓口……はあそこか。すいません。扶情 隼の面会に来ました。」


窓口の看護師は、カルテを確認した。


窓口

「はい。面会ですね。扶情 隼さんは……特別室の22番のお部屋になります。

こちらを首にお下げしてから面会してください。彼の容態は、まだ安定していませんから、静かに面会してくださいね。」


彼らは、特別室という言葉に、隼の容態の深刻さを改めて感じながら、22番へと向かう。特別室は、一般の病室とは違い、廊下の突き当たりにひっそりと存在していた。


魅羽月 瑠樹は、静かにドアを開けた。

「失礼します……。」


すると、隼は裸のまま、包帯をぐるぐる巻きにされながら、巨大なベッドで眠っていた。その横には、昨日の医師がいた。医師は、隼の容態を注意深く観察していた。


医師

「こんばんわ。昨日はすまなかったね。

隼さんは、まだあの時から目を覚ましてないんだよ……ずっと寝ているんだ。彼の生命力は驚異的だが、意識が戻らないのは、脳に何らかのダメージがあるのかもしれない。」


魅羽月 瑠樹

「寝たっきりですか……隼。大丈夫?私たちの声が聞こえる?」瑠樹の心配する声が、静かな病室に響いた。その声は、隼の意識の奥底に届いたようだった。


扶情 隼

「ん……この声は、瑠樹の声……?」


隼は、瑠樹の声に導かれるように、1日ぶりに目覚めたのだ。彼の目は、ゆっくりと開かれ、焦点が合った。


牙 燐乃は、安堵と喜びで、声を震わせた。彼女の目からは、涙が溢れていた。

「隼!ようやく起きたか……よかった。本当に、よかった……。」


扶情 隼は、状況を把握できていないようだった。

「……あれ?瑠樹に燐乃に亜月に朱木。そして、医師?ここ病院か?なんでこんなところに。俺、なんか変な夢を見てた気がするな。」


医師は、驚きを隠せない様子で、隼に話しかけた。

「ようやく起きた……隼さん、大丈夫ですか?どこか痛いところはありませんか?」


扶情 隼は、自分の胸を見て、首を傾げた。

「え。どうなってるんだこれ。俺の胸に包帯がぐるぐる巻きにされてんな。ちょっと邪魔くせぇな。」


隼は、まだ寝ぼけており、胸の包帯をベリベリと剥がしてしまった。その動作は、まるで絆創膏を剥がすかのように、軽快だった。


医師

「!?隼さん!ダメです!それを外しちゃいけません!傷口が開いてしまう!」医師は、慌てて隼を止めようとしたが、間に合わなかった。


胸の包帯を剥がした途端、彼らと医師は、驚愕する。


なんと、昨日死刻の五柱にドリルで貫かれたはずの胸の傷が、何事もなかったかのように、無傷になっていたのだ。皮膚は滑らかで、傷跡一つ残っていなかった。ただ、ドリルが貫通した場所には、微かに黒い痣のようなものが残っているだけだった。


医師は、信じられないものを見たかのように、絶句した。彼の医学的な常識が、完全に崩壊した瞬間だった。

「信じられん……たったの1日でここまでになるとは……彼の免疫力は桁違いだ……ありえない……。これは、人類の範疇を超えている……。」


陰平 亜月は、隼の異次元の回復力に、呆れたような、安堵したような表情を浮かべた。

「お前嘘だろ……どうやったらあんな傷、ここまで……。まぁ、お前らしいといえばお前らしいが。隼、昨日の出来事を覚えてるか?ぶみのこと、五柱のこと……。」


扶情 隼は、記憶を辿った。彼の表情から、徐々に寝ぼけ眼が消え、真剣な眼差しに変わっていった。

「昨日のこと……

あ!!そうだ!!俺、あいつ、あの死刻の五柱のあいつに胸を……えぐられたんだ……。そして、ぶみが……。」


隼は、ようやく目覚め、昨日の出来事を全て思い出した。その記憶は、彼の心に、深い悲しみと激しい怒りを呼び起こした。


扶情 隼

「なるほど……確か救急に運ばれた気がするな……。そしてこの病院まで来たってことか。

にしても、なんであの胸の傷が何事もなかったかのように治ってるんだ?まぁ少し黒く滲んではいるが……。俺の体、どうなってんだ?」


凪乃 朱木

「お前自身もわからないのか……。一体どうなってんだ……。だが、その回復力は、俺たちの希望だ。」


扶情 隼は、医師に尋ねた。

「俺って今入院してるってことですか?先生。もう元気なんですが。」


医師は、まだ驚きから立ち直れていないようだった。彼は、隼の存在が、これまでの医学の常識を覆すことを理解し始めていた。

医師

「はい、そうですね……。しかし、あなたは奇跡だ。生きた奇跡だ。」


扶情 隼

「でも、俺もう痛いところなんてないし、このまま退院したいっす先生。」


燐乃・瑠樹、亜月・朱木

(こいつマジで言ってんのかよ……。)


医師は、必死に引き止めた。

「痛いところなんてない!?そんな馬鹿な……。で、でもこの状態でも、1週間は入院しないといけません!経過観察が必要です!」


扶情 隼

「そうか……まぁ仕方ない。先生の言うこともわかる。

てか、あいつ!ぶみはどうなったんだ!?」隼は、ぶみのことを思い出し、顔色を変えた。


亜月は、重い口調で、真実を告げた。彼の声は、静かでありながらも、深い悲しみを帯びていた。


陰平 亜月

「……落ち着いて聞けよ。覚悟しろ。」


扶情 隼

「おう。」隼は、最悪の事態を予感していた。


陰平 亜月

「ぶみは、この世にいない。

もう、死んでしまったんだ。五柱の奴らに、殺された。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


扶情 隼

「……え?」隼の瞳から、光が消えた。


皆は、悲しみと共に沈黙する。隼は、全てを理解し、顔を伏せた。彼の大きな体は、静かに震えていた。


扶情 隼

「ぶみ……あいつ、もういないのか……。生まれて初めてのペット。俺の帰りをいつも待っててくれた。可愛かったのになぁ。俺が、もっと早く気づいていれば……。」


隼は、ぶみとの短い思い出を振り返る。初めてぶみを拾った日のこと、一緒に遊んだこと、そして、いつも足元で眠っていた温かい感触。その全てが、今はもう戻らない過去となった。


扶情 隼は、顔を上げた。

隼は泣きはしなかったがその目には、悲しみと怒りが同居していた。それは、静かで、しかし底知れない、深い感情だった。

「また一緒に遊びてぇな……。

でも、ぶみはまだ家のどこかで寝てるさ。俺らには見えてないだけで……きっとそうさ。ぶみの魂は、この街のどこかにいる。

死刻の五柱。あいつらだけは許さねぇ。俺の、そしてこの街の光を奪った罪は、必ず償わせる。」


隼は、怒りと共に拳を握りしめる。その拳には、ぶみへの哀悼と、五柱への激しい復讐の念が込められていた。


医師は、この場の空気に耐えられず、退室した。彼は、隼たちの抱える闇の深さを理解し、これ以上立ち入るべきではないと感じた。

「……ごめんなさい。私はこれで失礼します。仕事が残っているので……。何かあれば、ナースコールで呼んでください。」


バタン(ドアを閉める音)


扶情 隼は、真剣な眼差しで、仲間たちを見た。彼の目は、もう迷いを一切含んでいなかった。

「なぁ、一つ提案していいか。俺の命を救ってくれたお前たちに、俺の決意を聞いてほしい。」


牙 燐乃

「あぁ。言ってみろ。俺たちも、同じ気持ちだ。」


扶情 隼

「俺が退院したら、死刻の五柱を、倒そう。

あいつらのせいで苦しめられてる人たち、そしてぶみの仇を、必ず取ってやる。俺たちの「光を取り戻す戦い」を、今度こそ始めるんだ。」


凪乃 朱木

「……俺も許せない。明仁の仇と、ぶみの仇。俺たちなら倒せるかもしれない。隼のその規格外の力と、俺たちの連携があれば。」朱木の瞳には、復讐の炎が燃えていた。


魅羽月 瑠樹

「私たちにしかできないことだわ……。この街の希望は、私たちにかかっている。ぶみのためにも、この戦いに勝たないと。」瑠樹は、悲しみを乗り越え、強い覚悟を示した。


牙 燐乃

「あいつらだけは許さねぇ……この手で倒してやる。隼、お前が動けるようになったら、すぐに訓練だ。俺たちの牙を、五柱に突き立ててやる。」燐乃は、獰猛な笑みを浮かべた。


陰平 亜月

「だな。この街の平和を取り戻すためにもだ。やるしかない。俺は、情報と戦略で、お前たちをサポートする。五柱の能力を解析し、必ず勝機を見つけ出す。」亜月は、冷静沈着な参謀としての役割を再確認した。


魅羽月 瑠樹は、時計を見て、ハッとした。

「あっ、もうこんな時間。面会の時間が過ぎていたわ……もう帰らなくちゃ。看護師さんに怒られちゃう。」


牙 燐乃

「だな。もう帰ってスーパー寄らないと。

隼。例え今が元気でも、しっかり安静にしてろよ。お前の回復力は、俺たちの切り札なんだから。」


扶情 隼

「おう。お前らと喋れて嬉しかった。ぶみのことも、ありがとう。しっかり安静にして、もっと元気になるからな!じゃあな。退院したら、すぐに作戦会議だ。」


陰平 亜月

「おう。またな。楽しみにしているぞ。」


こうして彼らは、隼の異次元の回復力と、ぶみの死という悲劇を糧に、死刻の五柱を倒すという決意を再び固めたのだった。

隼の退院が、戦いの火蓋を切る合図となる。彼らの戦いは、もう誰にも止められない。

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