表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dum Spiro Spero〜この教室33人は息をしている限り希望を捨てない〜  作者: AmorNoctis-アモールノクティス-


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/31

大きな街の小さな友情

主要人物No.9 【 笑嵐しょうらん かい男】


「死刻の五柱」の1人。

いつもピエロのような仮面をしており潮笑うような口調をしている。

逆らうものは容赦なく銃殺する。

そのような卑劣な行為から「笑う道化」とも呼ばれている。年齢は15歳。

愛用している拳銃は「トートオードー・ウォルカ」と呼ばれるリボルバー式の銃。

これも他国から持ち込んだと言われる。

三日が過ぎ、ウィーリス荘の朝は、いつもの穏やかな日常を紡いでいた。隼、亜月、朱木は、それぞれのアルバイトへと出かけ、残された家には昼下がりの静けさが訪れる。


リビングで、魅羽月瑠樹は、畳み終えたばかりの洗濯物の山を横目に、ふと壁掛け時計に目をやった。

「よし、洗濯物終わったー。もう昼の1時か。本来なら今頃、中学校の賑やかな給食の時間だったのね」

と、独りごちる声には、この非日常的な生活の中で、遠い過去への微かな郷愁が滲んでいた。


隣のソファで漫画に没頭していた牙燐乃が、その声に顔を上げた。

「あぁ、そうだな。一体私たちはどうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだ…まるで、アニメ漫画でありがちな展開、ってやつか」

と、ぶっきらぼうな口調で呟く。その言葉の端々には、彼女なりの戸惑いと、現状へのやるせない不満が隠されていた。


その時、足元で気持ちよさそうに眠っていたぶみが、小さく「なー」と鳴いた。空になった餌皿を前足でちょんちょんとつつく仕草は、まるで「ご飯なくなったよー」と訴えかけているかのようだ。


「腹減ったのか、あっでも餌切らしてたんだ…」燐乃は、ぶみの鳴き声に気づき、慌てて餌のストックがないことに思い至る。


瑠樹は、ぶみの健気な様子を見て、すっと立ち上がった。「あら本当?なら今から私1人で餌買ってくるね!」彼女の優しい声は、ぶみだけでなく、燐乃の心にも温かい安らぎを与えた。


「そうか。助かる。私はこいつ(ぶみ)と一緒に留守してるから。気をつけてな!」

燐乃は、瑠樹の気遣いに素直に感謝し、ぶみをそっと抱き上げた。瑠樹は、二人に軽く手を振り、猫の餌を買いにペットショップへと向かった。その背中には、午後の柔らかな日差しが降り注いでいた。


街の喧騒の中、瑠樹はペットショップで猫の餌を大量に購入した。両腕いっぱいに抱えた袋のずっしりとした重みが、彼女の達成感を物語る。「よし!いっぱい買ったわね!これで2ヶ月は持つと思うわ!」満足げに微笑み、ウィーリス荘への道を急ぐ足取りは軽やかだった。


その帰り道、瑠樹の目に、道端にポツンと立つ小さな影が飛び込んできた。青色と紫色のツインテールが特徴的な、ランドセルを背負った少女だ。その姿は、この街の灰色がかった風景の中で、ひときわ鮮やかな色彩を放っていた。瑠樹は、その少女の様子が気になり、思わず声をかけた。


「あら…どうしたの?道に迷った?」瑠樹の優しい問いかけに、少女はゆっくりと顔を上げた。大きな瞳には、不安と寂しさが揺れているのが見て取れた。


少女は、か細い声で答えた。「…うん。どこだっけ、おじいちゃんの家」。その声は、今にも消え入りそうだった。


瑠樹は、少女の不安な表情を見て、放っておけなかった。心の中に温かいものが込み上げてくる。

「ならわかるところまで道を教えてくれる?私着いていくよ!」

瑠樹の言葉に、少女の顔にぱっと明るい光が灯った。まるで、暗闇に差し込んだ一筋の光のように。


「本当!?やったー!お姉さん優しい!」

少女は、嬉しそうに瑠樹の手をぎゅっと握った。その小さな手の温かさが、瑠樹の心にじんわりと広がった。こうして、瑠樹は少女を家まで送っていくことになった。


歩きながら、瑠樹は少女に優しく尋ねた。

「名前はなんて言うの?いくつ?」


「私は、白山ルイノって言うの!小学2年生!」少女は、元気いっぱいに答えた。その無邪気な笑顔は、瑠樹の心を和ませ、張り詰めていた緊張を少しだけ解き放った。


「小2ね!私も瑠樹って言うの、奇遇ね!」瑠樹は不思議な親近感を覚えた。


ルイノは、少し寂しげな表情で続けた。


「ここ最近になっておじいちゃんの家で住むことになったのー。小学校からちょっと遠いから家を忘れちゃって…」。


その言葉が、瑠樹の胸にざわめきを起こした。


その言葉を聞いた瞬間、瑠樹の脳裏に、朱木から聞いた「ヤンキー」の話がよぎった。五柱によって親を失った子供たちのことだ。まさか、この子も……。胸騒ぎを覚えながら、瑠樹は慎重に問いかけた。


「…そうなの?…ちょっと聴きたいんだけど、お母さんとお父さんは、今どこにいるの?」


ルイノは、ぴたりと足を止め、俯いた。その小さな背中が、急に硬くなったように見えた。そして、絞り出すような声で、衝撃的な事実を告げた。


「…お母さんとお父さんは、前、一緒にデパートに行った時、身長が高い女の人に銃で撃たれて、天国に行っちゃったの」。


瑠樹は、息を呑んだ。やはり、この子も犠牲者だったのか。五柱の非道な行いが、また一つ、幼い命から大切なものを奪っていた。親を奴らに殺された人は他にもいたことに、瑠樹は深い衝撃を受けた。しかし、ルイノはすぐに顔を上げ、無理に明るい声を出した。


「…でも、今はおじいちゃんとおばあちゃんがいるから大丈夫だよ!」その健気な言葉に、瑠樹の胸は締め付けられた。この小さな体が、どれほどの悲しみを抱えているのだろう。彼女は、ルイノの強さに、ただただ感銘を受けた。


「…ルイノちゃんも、よく我慢できるね。すごいよ。小2にして親も…。尊敬するわ」。瑠樹の言葉は、偽りのない本心だった。


ルイノは、瑠樹の言葉に目を輝かせた。

「ほんと!?瑠樹さんから尊敬されちゃった!」

その笑顔は、一瞬、悲しみを忘れさせるほどに純粋で、瑠樹の心に温かい光を灯した。こうして、二人はこれからのことについて語り合った。ルイノは、新しい生活への期待と、時折見せる寂しさを、瑠樹に打ち明けた。瑠樹は、ただ静かに耳を傾け、その小さな手を優しく握りしめた。その手から伝わる温かさが、ルイノの心を少しでも癒せるようにと願って。


しばらく歩くと、ルイノは突然、声を弾ませた。

「…ここら辺、あっ!あった!おじいちゃんの家だ!」

指差す先に、古びた一軒家が見えた。瑠樹は、安堵の息を漏らした。「よかったね!これで一安心…」。


ルイノは、満面の笑みで瑠樹に駆け寄った。

「瑠樹ねえさん、ありがと!…えっ…」。


瑠樹は、ルイノを優しく抱きしめた。その小さな体を腕の中に感じながら、彼女の心は、怒りと悲しみ、そして強い決意で満たされた。この幼い命から大切なものを奪った者たちへの怒り、そして、この子を守りたいという強い願い。

「まだ小2だけど、ルイノちゃんは本当にすごいわ。強い心を持てて。あの人たちのことは私に任せて。いつか必ず…」瑠樹の言葉は、ルイノへの誓いであり、自分自身への、そしてこの街への誓いでもあった。


ルイノは、突然の抱擁に驚き、少し苦しそうに声を上げた。「わっ!ちょっと、苦しいよ…」。


「あ、ごめんね。ちょっと力んじゃった」瑠樹は、慌てて抱擁を解き、ルイノの頭を優しく撫でた。そして、その瞳をまっすぐに見つめ、語りかけた。

「ルイノちゃん、これからも頑張ってね。根強く生きるんだよ。そしておじいちゃんの家も忘れないようにね」。瑠樹の言葉には、深い愛情と、未来への希望が込められていた。それは、この街の闇に立ち向かう、小さな光のようだった。


「うん!強く生きるよ!おじいちゃんの家も忘れない!今日はありがとう瑠樹ねぇさん!」

ルイノは、力強く頷いた。その瞳には、瑠樹からもらった勇気が宿っていた。こうして、二人は固い約束を交わし、新たな友情が芽生えた。


瑠樹は、ルイノと別れ、空を見上げた。夕焼けに染まる空は、どこか物悲しく、しかし、明日への希望も感じさせた。猫の餌を抱きしめながら、彼女はウィーリス荘へと帰路についた。心の中では、ルイノのような悲劇を二度と繰り返させないという、強い決意が燃え上がっていた。この街に、再び光を取り戻すために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ