スペスの言った、「光を取り戻す」とは
主要人物No.8 【水無瀬 朧真男】
死刻の五柱の1人とされている冷酷な快楽者。
彼は感情を人に見せることがほとんどなく無愛想な性格をしている。年齢は18歳。
この年にして異様に顔は老けており、髭も生えている。
いつも白いスーツを着ており左目には眼帯をしている。
身長は217cmの痩せ型。
愛好している拳銃は「センシエアム・RR」というピストル型の銃。他の都市から仕入れたとのこと。
一方隼のスーパーでのアルバイトは、亜月や朱木のような劇的な遭遇もなく、平穏に終わった。彼の仕事は、その規格外の体格を活かした品出しと、時折の警備のようなものだった。
扶情 隼
「ふー。とりあえず今日は何事もなく終わったな……。このまま帰るか。」
彼は、街の暗い雰囲気に慣れつつも、特に危険な出来事に遭遇しなかったことに、安堵していた。街の陰鬱な空気は、まるで底なし沼のように、人々の心を静かに蝕んでいく。しかし、隼は持ち前の楽天的な性格と、ウィーリス荘の仲間たちの存在によって、その重苦しい空気から隔絶されていた。
ウィーリス荘への帰り道、隼は、小さな白い影を見つけた。
扶情 隼
「お!ぶみじゃねぇか!散歩してんのか。偉いなー。」
ぶみは、隼の足元に駆け寄り、「なー」と鳴いた。その鳴き声は、まるで「一緒に帰るにゃ」と言っているようだった。ぶみは、この街の数少ない癒やしであり、隼にとっては初めて飼った大切なペットだった。その小さな命の温かさが、隼の心を常に穏やかに保っていた。
扶情 隼
「どうせなら一緒に帰るか!」
こうして、隼とぶみは、仲良くウィーリス荘へと帰った。その光景は、この街の陰鬱な空気とはかけ離れた、温かい日常の一コマだった。隼はぶみを抱き上げ、その柔らかな毛並みに顔を埋めた。この一瞬の平和が、彼らの戦いの原動力になることを、この時の隼はまだ知る由もなかった。
扶情 隼
「ただいまー。」
ぶみ
「なー」
家へ帰ると、亜月と朱木はすでに帰宅しており、燐乃と瑠樹を含めた四人が、リビングで深刻そうな顔をして話し合っていた。テーブルの上には、広げられた一枚の地図。その地図には、この街の歓楽街を中心とした、いくつかの場所が赤く印されていた。
凪乃 朱木
「お……隼とぶみじゃねぇか。おかえり。」
朱木は、いつもの軽口を叩きながらも、その表情は硬い。その眼差しには、明仁から聞いた悲痛な過去と、五柱への激しい怒りが宿っていた。
扶情 隼は、その異様な雰囲気に気づいた。
「なんかみんな深刻そうだな。今日はなんかあったのか?」
陰平 亜月
「まぁな。とりあえず、夜飯だ。飯食いながら話し合おう。」
瑠樹と燐乃が用意した夕食を囲み、五人は、ぶみが足元で眠る中、今日の出来事について全てを話し合った。亜月が笑嵐 廻と遭遇したこと、店長から死刻の五柱の正体を聞いたこと。そして、朱木が明仁から五柱の全容と悲痛な過去を聞き、仇討ちを約束したこと。それぞれの情報が一つに繋がり、彼らの目の前に、この街の闇の全貌が姿を現した。
食事が終わり、食器が片付けられた後も、重い空気はリビングに漂っていた。誰もが、自分たちの置かれた状況の重大さを理解し、言葉を失っていた。
扶情 隼は、静かに口を開いた。
「……やっぱり、歓楽街で会ったあいつらが、その
「死刻の五柱」だったのか。」隼の声は、普段の明るさを失い、低く響いた。
牙 燐乃
「あいつら、周りよりも明らかにオーラが違ってたもんな……。あの時の威圧感は、今思い出しても背筋が凍る。あれが、この街の支配者か。」燐乃は、テーブルに肘をつき、悔しそうに唇を噛んだ。彼女の牙は、獲物を前にした獣のように、微かに震えていた。
魅羽月 瑠樹
「でも、なんでその人たちが、街の中を歩き回ってるの?そんな危険なことをする必要があるの?」瑠樹の問いは、最も素朴で、最も核心を突いていた。彼女の瞳は、この理不尽な世界の構造を理解しようと、必死に光を探していた。
陰平 亜月
「たまにこの街を歩き回って、人々の様子を見ているらしい。そして、気分が悪かったら、「無差別に銃殺するらしい」。彼らにとって、この街の住人は、ただの「動く標的」でしかないんだ。」亜月の言葉は、冷たい事実を突きつけた。
朱木は、明仁の悲しみを思い出し、怒りを滲ませた。
「飛んだ外道だよな。あんなやつらが、この街にいてはいけない……。光なんて、あいつらがいる限り、戻ってくるわけがない。」朱木は、拳を強く握りしめ、テーブルを叩いた。その音は、彼らの心の中で渦巻く、抑えきれない怒りの表れだった。
リビングの静寂が、彼らの怒りと使命感を増幅させる。彼らは、もはや単なる居候の少年少女ではない。この街の闇に立ち向かう、「光の担い手」としての自覚が、芽生え始めていた。
そして、扶情 隼が、決断を下した。彼の表情は、いつになく真剣で、その瞳には、揺るぎない決意の炎が燃えていた。
扶情 隼
「……よし。決めた。」
他の四人は、食べ進めていた箸を止めた。その決意に満ちた眼差しに、誰もが息を呑んだ。
扶情 隼
「その死刻の五柱ってやつら。
この俺ら5人で、“倒そう”。」
魅羽瑠樹は、隼のあまりにも大胆な発言に、驚愕した。
「…………え。何を、言ってるの?私たちが死刻の五柱を、倒す?」瑠樹の声は、微かに震えていた。五柱の圧倒的な力と、自分たちの非力さを、彼女は本能的に感じ取っていた。
隼は、まっすぐに瑠樹の目を見つめ、力強く頷いた。
扶情 隼
「そうだ。スペスの言ってた通り、俺らは「光を取り戻さなければいけない」。光を取り戻す。そう、つまり、俺らが死刻の五柱を倒し、街の平和を取り戻す。それがスペスに出された試練だ。俺たちが倒さなければ、何も始まらない。」
隼の言葉は、シンプルで、揺るぎない信念に満ちていた。彼の規格外の体躯から放たれるオーラは、その決意を裏打ちしていた。
牙 燐乃は、その決意に、ニヤリと笑った。
「やるしかねぇよ。私たち5人と、死刻の五柱の5人との死闘。この街に嵐が吹くぞ。」燐乃の笑みは、恐怖を乗り越えた者だけが持つ、獰猛な闘志に満ちていた。
陰平 亜月は、冷静に、しかし高揚した声で言った。
「ここからが本当の物語が始まる。ってわけか……。潜入捜査なんて、もう終わりだ。」
亜月は、広げられた地図を静かに畳んだ。もう、隠れる必要はない。彼らは、表舞台に立つことを選んだのだ。
凪乃 朱木は、拳を握りしめた。
「俺たちがこの街を救ってやるよ。明仁の仇も、この街の光も、全部取り戻す。」
朱木の瞳には、亡き明仁への誓いと、未来への希望が交錯していた。
魅羽月 瑠樹は、一瞬の迷いの後、覚悟を決めた。
「……そうね。確かにそうしないと光は取り戻せない。やるしかないわね。この闘い……。」
瑠樹は、不安を押し殺し、仲間たちと同じ方向を見た。彼女の決意は、仲間たちへの信頼と、この街への僅かな希望に支えられていた。
その時、足元で眠っていたぶみが、「なー」と鳴いた。その鳴き声は、まるで彼らの決意を祝福しているかのようだった。小さな猫の存在が、彼らの絆を、そして守るべきものの大きさを再認識させた。
扶情 隼は、時計を見た。
「もう12時過ぎたか。ぶみも散歩して疲れただろうに。俺たちも寝るかー。仕事で疲れた……。」
魅羽月 瑠樹
「そうね。私たちも疲れた。もう就寝としますか。」
こうして、一夜にして、五人は決意した。スペスの言った「光を取り戻す」。すなわち、この街を救う。そして、「死刻の五柱」を倒す。彼らは、このたった一日で、この世界の真実を知り、戦う覚悟を決めたのだった。規格外の少年少女たちによる、世界を救うための戦いが、今、始まろうとしていた。彼らの決意は、夜の闇を切り裂く、一筋の光となった。




