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Dum Spiro Spero〜この教室33人は息をしている限り希望を捨てない〜  作者: AmorNoctis-アモールノクティス-


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死刻の五柱

亜月は、店の奥にある小さなスタッフルームで、店長と向かい合っていた。先ほどの銃声と、店長の必死な行動の理由を、彼は知る必要があった。


陰平 亜月

「それで、あの人は一体なんなんですか?なぜ、あなたは命がけで、俺を止めたんですか?」


店長は、震える手で淹れた熱いお茶を一口飲み、重い口を開いた。


店長

「あの人はね、とにかく「とても危険な人」なの。……あなた、あの人以外の4人のことは知ってる?」


陰平 亜月

「……前に歓楽街で、その5人組と会ったんですよね。なんか、他の人たちよりも異様なオーラを感じました。あの人たちも危ないんですか……?」


店長は、深く頷いた。その表情は、恐怖と諦めが入り混じった、この街の住人特有のものだった。


店長

「そう。あの人たちは、この街の人間からは

【死刻の五柱しこくのごちゅう】って言われているのよ。」


陰平 亜月

「死刻の……五柱?」


その物々しい名前に、亜月の背筋に冷たいものが走った。


店長

「もともと、この街の市長は、とてもいい人だったの。そのおかげで、この街の景気も良く、人々の評判もものすごく良かった。

けれど、いつの日か、その市長は暗殺された。そう、彼ら死刻の五柱のせいでね。」


陰平 亜月は、衝撃を受けた。

「え!?なんで……どうして、とても評判も良かった総理大臣を暗殺したんですか?」


店長

「詳しくはわからないけど、彼ら1人1人に重い過去があったらしいわ。

それで、幸せに暮らしている人々、毎日を楽しく生きている人々を恨むようになり、市長を殺したのよ。そして、この街を、自分たちの思い通りに支配し始めた。」


亜月は、スペスが言っていた「心の崩れ」という言葉を思い出した。この街の暗さは、まさにその結果だったのだ。


陰平 亜月

「なるほど……。そして、暗殺して、自分たちがこの街を支配するようになったんですね……。あの笑嵐しょうらん かいも、その五柱の一人だと。」


店長

「そういうこと。彼らのやり方は本当に乱雑で、今はそのおかげで、人々が苦しい思いをしているわ。

彼らには、誰も逆らえない。よくわからないけど、なんかの「能力」を持っているの。信じられないと思うけどね。……だから、あなたは、あの人に抵抗してはいけなかった。」


店長は、窓の外を指差した。

「彼らはたまに、この街の様子を見に、この辺を歩いているの。

だから、気をつけて。彼らに会っても、絶対に逆らっちゃいけない。彼らは、法も秩序も無視して、自分たちの気分で全てを決める。」


陰平 亜月は、深く息を吐いた。

「……どうりで、この街の人々は暗い雰囲気を出していたんですね。あのレストランの店員さんも、みんな……。」


店長

「あの人たちは気分屋だから、下手したら無差別に人を殺すこともある。

決して近づいちゃダメ。……あなたも、もう二度と、あんな無謀なことはしないで。」


店長は、急に表情を和らげた。

「……少し深刻な話をしたわね。ごめんなさい。

でも、あなたには知っておいてほしかった。この街で生きるということは、そういうことなの。

この後も、仕事頑張ってね。」


亜月は、衝撃を受けていた。スペスの言葉が、現実のものとして、彼の目の前に突きつけられた。この街は、彼らが思っていた以上に、深く、暗い闇に支配されていた。


彼は、その重い事実を胸に、今日の仕事を終えた。


陰平 亜月

「店長さん。今日はありがとうございました。明日からもよろしくお願いします。」


店長に挨拶をし、亜月はウィーリス荘へと帰路についた。


帰り道、亜月は店長から聞いた話を反芻していた。死刻の五柱。市長の暗殺。そして、彼らが持つという「能力」。彼らが元いた世界では、超常的な力は存在しなかった。しかし、この異世界では、それは現実の脅威として存在する。彼らがこの街を支配している理由、そして、人々が恐怖に怯える理由が、ようやく理解できた。


「心の崩れ」が、物理的な力と結びつき、この街を地獄に変えている。


亜月は、ポケットの中で、スペスから渡された小さなメダルを握りしめた。このメダルが、彼らの「世界を救う」ための鍵だという。しかし、その鍵を使うためには、まずこの街の支配者である「死刻の五柱」と対峙しなければならないだろう。



ウィーリス荘の古びた扉が見えてきた。その向こうには、何も知らない仲間たちが、温かい夕食を用意して待っているはずだ。亜月は、彼らにこの事実を伝え、今後の計画を練らなければならない。


彼は、歩きながら、死刻の五柱について、さらに思考を巡らせた。


五柱というからには、それぞれが異なる役割と、異なる「能力」を持っているはずだ。今日遭遇した笑嵐 廻は、銃を携帯し、躊躇なく発砲する冷酷さを持っていた。彼の能力が何であれ、その残忍性は、この街の支配の根幹を成しているに違いない。


そして、店長が言っていた「重い過去」。それは、彼らが単なる悪人ではなく、何らかの深い絶望や裏切りを経験した結果、現在の姿になったことを示唆している。彼らが幸せな人々を恨むという感情は、彼ら自身の「心の崩れ」の深さを物語っていた。


亜月は、自分たちがこの世界に来た目的を再確認した。「世界を救う」こと。それは、単に市長を暗殺した五柱を倒すことだけではない。彼らの「心の崩れ」が引き起こした、この街全体の「闇」を晴らすことだ。そのためには、五柱の能力、過去、そして支配の構造を、徹底的に理解する必要がある。



彼は、ウィーリス荘の玄関に立ち、深呼吸をした。扉を開ければ、そこには、この異世界で唯一、彼らが心から安らげる場所がある。そして、その安らぎの場所を守るためにも、彼は、この街の闇に立ち向かう決意を新たにした。


「ぶみ」という小さな命が、彼らの生活に光をもたらしたように、彼ら自身が、この街の住人にとっての「光」となれるのか。その答えは、明日からの彼らの行動にかかっている。


陰平 亜月

(今日の話は、みんなにも伝えてあげよう……。あの死刻の五柱……。俺たちの「世界を救う」という使命は、まず、彼らとの戦いになるのかもしれない。)


亜月は、これからの過酷な戦いと、仲間たちの安全を考えながら、重い足取りで家路を急いだ。

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