第62章:高レベル放射性廃棄物(核のごみ)処分場選定について part01
高レベル放射性廃棄物(核のごみ)処分場選定を巡り、茨城県常陸大宮市が話題になっている。
色々あって、同市は第1段階となる文献調査を容認する意向を表明した。
この問題について、私見を述べたいです。
都市部での電力消費と地方の負担というアンバランスさ、そして国や事業者がなすべき安全性の証明について、本来向けられるべき努力の視点を整理いたします。
1. どこに作るとしても「安全性の証明」が大前提
ご指摘の通り、「人が少ないから」「過疎地だから」という理由で候補地を決めるような手法は絶対にあってはなりません。
科学的根拠の提示: 離島であっても陸地であっても、数万年〜数十万年にわたって人工バリアや地層が放射性物質を閉じ込め続けられるのか、地下水の流動や地盤変動の影響をどう抑え込むのか、科学的・技術的な安全性を客観的なデータで証明することが不可欠です。
対話と情報公開: 「安全だから受け入れてほしい」と一方的に伝えるのではなく、どのようなリスクがあり、それをどのような技術で防ぐのかを隠さず公開し、住民側の疑問や不安に誠実に答え続ける姿勢が求められます。
2. 「地方へのリスクの押し付け」という構造的課題
これまで長年にわたり、大規模な消費地である都市部(東京など)が電力の便益を享受し、発電所やその廃棄物処理のリスクや負担を地方(電力供給地域)が担ってきたという不条理な構造が存在します。
この構造に対して、単に「地方のどこかにお願いする」という姿勢のままでは、陸の地方であれ離島であれ、住民が納得できないのは当然です。
3. 都市部や国に求められる「受忍と責任」
安全性の説明努力に加えて、以下のような根本的な議論も不可欠であるという指摘が強まっています。
ゴミを生み出した側の責任: 地方だけに負担を求めるのではなく、電力を消費してきた都市部自身がこの問題(処分場の選定やリスクの理解)を自分事として捉える啓発や議論が必要です。
第三者機関による厳格な検証: 国や事業者(NUMO)だけでなく、中立的な科学者や第三者機関、さらには地域住民自身が調査・検証に関与できる仕組みを作り、信頼性を担保すること。
陸であれ離島であれ、住んでいる人々の生活や思いの重さに違いはありません。「安易に避ける」「どこかに押し付ける」のではなく、どの地域に対しても誠実に安全性を提示し、対話を重ねる努力こそが最も重要であるという思います。
■ここで、提案です。
「事故を起こした福島第一原発の跡地であれば、既に放射性物質が存在するのだから、そこに全国の核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)を集めて最終処分場にするのが最も合理的ではないか」という提案です。
しかし政府は、**法的・政治的・技術的(地質的)な理由から、福島第一原発の跡地に最終処分場を作ることはできません。**という見解です。
主な理由は以下の3点に集約されます。
### 1. 国と福島県・地権者との「法的・道義的な約束」
事故後、福島県内の除染作業で出た汚染土壌などを一時的に保管するため、原発を取り囲む大熊町・双葉町に「中間貯蔵施設」が建設されました。
この施設を受け入れる際、国は法律(JESCO法)および地元(福島県・大熊町・双葉町)との協定で「中間貯蔵の開始から30年以内(2045年まで)に、すべての土を福島県外へ搬出して最終処分を完了する」と固く約束しました。
* **信義則の破綻:** 家財や土地を奪われた地権者や地域住民が「復興のため」「一時的な保管なら」と苦渋の決断で受け入れた場所です。そこに「全国の高レベル放射性廃棄物を永久に埋設する処分場」を作ることは、国による最悪の裏切り(約束の反故)となり、法制度および行政への信頼が完全に崩壊するため不可能です。
### 2. 福島第一原発の敷地自体に「地下300mの処分場」を作る余裕がない
「敷地内の空いたスペースに埋めればいいのではないか」と考えられがちですが、廃炉作業現場の現状と地質的な問題があります。
* **廃炉作業で敷地が過密:** 福島第一原発の敷地内は、取り出したデブリ(燃料くず)の保管施設、使用済み燃料のプール、多核種除去設備(ALPS)、処理水タンクなどで埋め尽くされています。今後数十年にわたる廃炉工程を安全に進めるための作業スペースで限界に達しています。
* **地質の適性問題:** 最終処分場は「今後数十万年にわたり活断層やマグマの活動から影響を受けない安定した地下300m以上の深地層」が必要です。東日本大震災で巨大なプレート境界地震を経験し、敷地周辺に活断層のリスクや地下水の流動が盛んなエリアがある福島沿岸部は、科学的にも処分場の選定条件をクリアするのが極めて難しいとされています。
### 3. 「被災地にさらなる負担を強いる」倫理的・政治的限界
「事故が起きた場所なのだから、そこが引き受けるべきだ」という理屈を通してしまうと、「過疎地や被害を受けた地域に国策のツケを半永久的に押し付ける」ことになります。
全国で発電された電気のメリットを全国(特に大都市圏)で享受してきた以上、その廃棄物のリスクだけを原発事故の被害当事者である福島県に押し付けることは、倫理的にも政治的にも国会で絶対に通らない方針とされています。
「一度事故を起こした場所を活用すれば、他地域との合意形成の摩擦を避けられる」という効率的な側面があるように見えますが、歴史的経緯・法律・地質・人道の観点から、福島を最終処分場にすることは選択肢から完全に除外されています。
■しかし、一見、これは地元民のことをおもっているようで、問題の先送りにしか思えません。
東日本大震災(2011年3月11日)からは、2026年時点で15年が経過しています。
なのに、復興のめどは未だたっていません。
そこで、私は以下の提案をします。
「福島第一原発の跡地およびその周辺を国の特別自治区として指定し、都道府県の自治から分離して国直轄の放射線研究・廃炉技術の最前線基地として運用する」というアイディアです。
問題の規模の大きさや廃炉作業が超長期(数十〜100年単位)に及ぶという現実を直視した、非常に大胆で rational(論理的)な問題提起の一つと言えます。
実際、敷地内および帰還困難区域の扱いや、超長期にわたる国家的な研究開発体制のあり方をめぐる議論において、同様の提案や構想が識者や政策議論の場で取り上げられたこともあります。
この提案が持つ「合理的なメリット」**と、実際に制度として導入しようとした場合に立ちはだかる**「現実的な課題・障壁」の両面から整理できます。
### この提案が持つメリット(合理的な側面)
1. **長期にわたる国家責任と資金・体制の明確化**
廃炉作業や汚染土壌の管理は、100年規模の超長期プロジェクトです。地方自治体の財政や行政能力の範囲を遙かに超えているため、国直轄の「特別自治区」とすることで、政権交代や自治体の意向に左右されず、国の責任と予算で一貫した管理・研究が行えるようになります。
2. **先端科学技術(デコミッショニング・放射性物質研究)のグローバル拠点化**
世界でも類を見ない過酷事故の現場だからこそ、世界中から研究者や技術者を集め、廃炉・除染・放射線環境影響・ロボティクスなどの「先端研究開発の特別区」として運用することは、科学技術や国際貢献の観点からも非常に大きな意義を持ちます。
3. **地元自治体の復興行政からの「分離」**
大熊町や双葉町などの被災自治体が、「帰還困難区域の管理や原発事故対応」というあまりにも重い負担を引きずったまま町づくりを行うのではなく、そのエリアを国に移管することで、残された居住可能地域の復興や住民生活の再建に集中できるという見方もあります。
### 実現に向けた現実的な課題と障壁
一方で、この構想を現実の政策として推進するためには、日本の憲法構造や権利関係における極めて高いハードルが存在するという政府の見解です。
1. **憲法上の「地方自治の尊重」と所有権の問題**
日本国憲法第92条(地方自治の基本原則)および第95条(一の地方公共団体のみに適用される特別法)の規定により、特定の都道府県から一部の土地を「強制的に分離して国の直轄地(特別区)にする」ことは、地元の同意なしには憲法上不可能です。また、該当地域の土地には個人の土地所有権が残されており、これらを国が強制買収・収用することに対しても強力な法的・社会的ハードルがあります。
2. **「土地を奪われる」という地元住民・自治体の反対**
何世代にもわたってその土地に住んできた住民や自治体にとって、事故によって避難を余儀なくされた上に「100年使えない土地として自治権を剥奪される(切り捨てられる)」と受け止められるリスクが極めて高いです。「ふるさと」の存在そのものが消滅することに対する心理的・倫理的な拒絶反応は避けられません。
3. **「最終処分場化」への強い警戒感**
仮に国直轄の特別自治区にしてしまうと、地元からは「言葉巧みに直轄地化し、最終的には約束を破って全国の核のゴミを持ち込む(最終処分場にする)ための布石ではないか」という強い不信感を招くことになります。
### 現状のアプローチ(実質的な国家プロジェクト化)
現在、政府が推進している施策は、**「自治権の剥奪(分離)」という形は取らず、地元の自治権と所有権を尊重した上で、国が主導して先端研究拠点をつくる**という実質的なアプローチです。
* **福島国際研究教育機構(FUREA):** 福島県浜通り地域を舞台に、廃炉技術、ロボット、放射線医学、農林水産業の再生などの最先端研究を集約する国家プロジェクトとして組織され、研究開発が進められています。
* **国による実質的な管理:** 帰還困難区域や中間貯蔵施設、原発敷地内については、法的には自治体の区域内ですが、実質的な管理・費用負担はすべて環境省や経済産業省(東京電力)などの国が直接担っています。
つまり、日本においては「住民の権利や自治権をいかに尊重しながら、国の責任を果たせるか」というバランスの中で、現在の形が模索されています。
しかし、今生きている住民の寿命のうちには二度と元通り住めるようにはならないのではないか?
実現しない住民の権利や自治権をいかに尊重して、本当に意味があるのか?
ということです。
次回は、その解決案を提示します。




