第49章:子育て問題 part1 結婚に対する若者の意識そのものが変化
2026年9月11日に公表された**最新の第17回出生動向基本調査(2025年調査)**を見ると、ニュースの「3割」という印象以上に、結婚に対する若者の意識そのものが変化しています。
18~34歳の未婚者で「一生結婚するつもりはない」と答えた割合は、男性24.0%、女性21.5%。初めて男女とも2割を超えました。一方、「いずれ結婚するつもり」は男性75.1%、女性77.8%まで低下しています。
ただし、これは単純に「若者が結婚嫌いになった」という話ではありません。
私は、いくつかの社会変化が重なった結果だと考えます。
1.まず「結婚しない理由」は何なのか
2026年の日本財団の18歳意識調査では、「将来結婚しないと思う理由」として、
恋人・パートナーがいない、見つからないと思う……45.7%
1人でいる方が精神的な負担が少ない……45.7%
自由を失いたくない……30.9%
子どもを育てたいと思っていない……27.8%
経済的に難しい……22.4%
家庭を築くことより優先したいことがある……20.2%
家事など生活上の負担が増える……17.5%
となっています。
ここが非常に興味深いところです。
「お金がないから結婚できない」だけではありません。
むしろ、
「一人でも生活できる」
+
「結婚するメリットが以前ほど大きくない」
+
「結婚すると負担が増えるかもしれない」
という構造が見えてきます。
2.最大の変化は「結婚しなくても困らない社会」になったこと
これはかなり大きいと思います。
昔は、
就職 → 結婚 → 子ども → 持ち家 → 老後
という人生モデルがかなり強く存在していました。
ところが現在は、
就職 → 一人暮らし → 趣味・仕事 → 一人で老後
という人生も、社会的には普通になりました。
しかも、
コンビニ
外食
家電
ネット通販
動画配信
SNS
オンラインゲーム
マッチングアプリ
一人用サービス
など、一人で生活するためのインフラが極めて充実しています。
つまり、
「結婚しないと生活できない」という経済的・社会的圧力が弱くなった。
これは良い面もあります。
結婚したくない人まで無理に結婚する必要はありません。
しかし、少子化という観点から見ると、非常に大きな問題になります。
3.そして「結婚のメリット」が下がっている
最新調査では、18~34歳の未婚者で「結婚には利点がある」と考える割合も低下しています。
男性は63.3%→56.3%、女性は**70.9%→63.4%**です。
これは単なる「恋愛離れ」とは少し違います。
昔は、
結婚すると家族ができる
子どもを持てる
精神的に安心できる
経済的にも安定する
というイメージが強かった。
ところが現在は、
一人でも楽しい
一人でも生活できる
自由にお金を使える
自分の時間を持てる
人間関係のストレスを減らせる
という選択肢が成立しています。
つまり、結婚によって得られるものと、失うものの差が小さくなったのです。
4.「一人の方が精神的に楽」という回答はかなり重要
私はここを特に重視します。
日本財団調査では「1人でいる方が、精神的な負担が少ない」が45.7%でした。
これは単に「自由が好き」という話ではありません。
若い人からすると、
結婚=幸福
とは必ずしも感じられなくなっている。
むしろ、
結婚=新しい人間関係を背負うこと
と感じる人も増えている可能性があります。
配偶者との関係だけではありません。
配偶者の親
自分の親
親族
子ども
PTA
学校
地域社会
夫婦間の家事分担
子育て
住宅ローン
老後
などです。
だから、
「一人なら自分の責任だけで済む」
という心理が生まれます。
5.特に「結婚=子育て」というセットが重くなっている
ここも非常に重要です。
2025年調査では、未婚者の希望子ども数も低下し、
男性 1.83人→1.64人
女性 1.79人→1.70人
となっています。
さらに、未婚者の約6人に1人は、結婚しても子どもを望まないと答えています。
つまり、
結婚したい人が減っている
だけではなく、
結婚したら子どもを持つ、という価値観も弱くなっている
わけです。
これは非常に大きな変化です。
6.では「お金」はどの程度問題なのか
もちろん経済問題もあります。
こども政策に関する政府側の説明でも、若者の結婚のハードルとして、
出会いの場・機会がない……約3割
結婚資金を準備できない……2割弱
などが挙げられています。
しかし、ここで注意したいのは、
「所得を上げれば結婚問題は解決する」と単純には言えない
ことです。
最新調査を見る限り、
経済問題
+
出会いの減少
+
結婚のメリット低下
+
一人暮らしの快適化
+
子育て負担への不安
が複合しています。
7.私が推測する「もっと深い問題」
ここからは、調査結果そのものではなく、そこからの推測・分析です。
私は、日本の結婚問題の本質は、
「結婚したくない若者が増えた」
というより、
「結婚しなくても人生が成立するようになったのに、結婚した場合の負担だけが大きく残っている」
ことではないかと思います。
これはかなり重要な違いです。
8.昔は「結婚すると生活が便利になる」部分が大きかった
例えば昔なら、
男性:
仕事をして収入を得る
女性:
家事・料理・子育て
という分業によって、一人では難しかった生活を二人で成立させていました。
しかし現在は、
洗濯乾燥機
食洗機
冷凍食品
コンビニ
外食
ネット通販
家事代行
各種宅配サービス
によって、一人でもかなり快適に生活できます。
つまり、
結婚による生活上のメリットが技術によって減少した
とも考えられます。
9.一方、結婚した場合の「責任」はあまり減っていない
ここが最大の問題です。
結婚すると、
配偶者+子ども+住宅+教育費+親の介護
などの責任が発生する可能性があります。
一方、一人なら、
自分の収入 → 自分の生活
で済みます。
この差を若者が合理的に比較すると、
「結婚することで何を得られるのか?」
という疑問が出てきます。
昔は社会が、
「それでも結婚するものだ」
と背中を押していました。
しかし、その社会的圧力も弱くなっています。
10.さらに「結婚の成功モデル」が見えにくくなった
これも私は重要だと思います。
若者は親世代の結婚生活を見ています。
そこで、
父親は仕事ばかり
母親は家事・子育てで疲れている
夫婦喧嘩が多い
お金に余裕がない
という家庭を見て育った場合、
「自分も結婚したい」
というモデルにはなりません。
逆に、
共働き
家事分担
子育ても共同
夫婦が楽しそう
経済的にも安定
という家庭を見て育てば、結婚へのイメージは違ってくるでしょう。
これはあくまで仮説ですが、かなり重要な心理要因だと思います。
11.「恋愛→結婚」という入口そのものも細くなっている
ここもデータがあります。
2025年調査では、未婚者の恋人がいる割合は、
男性 19.6%
女性 27.8%
まで低下しています。
さらに、未婚者の3人に1人が交際を望んでいないとされています。
つまり、
結婚以前に「恋愛関係を作る」という段階が弱くなっている。
これはかなり重大です。
政府が「結婚支援」をやっても、
結婚してください
だけでは解決しません。
その前段階に、
人と出会う → 恋愛する → パートナーになる → 一緒に生活する
というプロセスがあります。
この最初の部分が細くなっています。
12.ただし、ここには非常に重要な男女差もある
例えば2026年の明治安田総合研究所の調査では、未婚者の結婚したくない理由として、女性では「必要性を感じない」、男性では「自分が自由に使えるお金が減りそう」がトップでした。
つまり、
男性側:「結婚すると経済的・自由面で負担が増える」
女性側:「結婚する必要性そのものを感じない」
という異なる心理が存在している可能性があります。
これを無視して、
「若者の結婚離れ」
と一括りにするのは危険です。
13.では、何が「問題」なのか?
ここは分けて考えた方がいいと思います。
個人の問題
結婚したくない人が結婚しないこと自体は、必ずしも問題ではありません。
むしろ本人が望まない結婚をする必要はありません。
社会の問題
しかし、
結婚したい人まで結婚できなくなっている
なら、これは社会問題です。
そして現在のデータを見ると、実際に、
「いずれ結婚したい」
という人もかなり減っています。
さらに、
子どもを持ちたい人も減っている。
したがって、日本では、
「結婚したいのにできない問題」
と
「そもそも結婚したいと思わなくなった問題」
の両方が進んでいると考えるべきでしょう。
14.そして少子化との関係が非常に大きい
日本では婚外出生が非常に少ないため、
結婚する人が減る
↓
子どもを持つ人が減る
↓
出生数が減る
という関係が強くなっています。
したがって、「結婚しない人が増えた」という現象は、単なる家族観の変化ではなく、
人口構造そのものを変える問題
になっています。
15.私は「若者の意識が悪い」と考えるべきではないと思います
むしろ逆で、
若者が合理的に判断した結果、
「結婚しない人生も十分成立する」
と認識するようになったのだと思います。
これは社会の進歩の結果でもあります。
女性が経済的に自立できるようになった。
一人暮らしが可能になった。
家事の負担が減った。
結婚しなくても社会的に受け入れられるようになった。
これらは基本的には良い変化です。
しかし、その結果として、
「結婚という制度を選ぶインセンティブ」が弱くなった。
ここに現在の少子化問題の非常に難しいところがあります。
16.一言でまとめるなら
私は現在の日本を、
「結婚しなければ生きられない社会」から「結婚しなくても生きられる社会」へ移行したのに、「結婚して子どもを持つことの負担」は十分には軽くなっていない社会
と見ると、かなり分かりやすいと思います。
そして今後の政策で重要なのは、
「若者に結婚しろ」と言うことではありません。
むしろ、
結婚したい人が、結婚した方が幸せになれると思える社会を作れるか
という問題でしょう。
そのためには、単なる婚活支援だけではなく、
若者の所得・住宅費・教育費・子育て費用・長時間労働・家事分担・男女双方のキャリア形成
まで一体として考える必要があります。




