第48章:世帯全体の年間所得と子育て費用
2024年(令和6年)の厚生労働省「国民生活基礎調査」を基に、日本の全世帯の所得階層別分布を一覧にすると、次のようになります。
なお、ここでいう「所得」は、給与収入だけではなく、世帯全体の年間所得です。
公的年金・恩給、事業所得、財産所得なども含みます。2024年の全世帯数は約5,482.5万世帯です。
2024年・日本の全世帯の所得階層別分布
年間世帯所得構成比世帯数(概算)
50万円未満 1.1% 約60万世帯
50~100万円未満 5.6% 約307万世帯
100~150万円未満 7.4% 約406万世帯
150~200万円未満 7.1% 約389万世帯
200~250万円未満 7.4% 約406万世帯
250~300万円未満 7.0% 約384万世帯
300~350万円未満 7.2% 約395万世帯
350~400万円未満 5.9% 約323万世帯
400~450万円未満 5.1% 約280万世帯
450~500万円未満 4.8% 約263万世帯
500~600万円未満 8.5% 約466万世帯
600~700万円未満 7.6% 約417万世帯
700~800万円未満 5.4% 約296万世帯
800~900万円未満 4.4% 約241万世帯
900~1,000万円未満 3.3% 約181万世帯
1,000万円以上 12.3% 約674万世帯
合計 100.0%※ 約5,483万世帯
※公表値を四捨五入しているため、各階級の構成比を単純に足すと100.1%になります。
この構成比は厚生労働省の2024年調査によるものです。
世帯数は、全世帯約5,482.5万世帯に各階級の公表構成比を掛けて算出した概算値です。より細かい50万円刻みの世帯数は、政府統計の「表22 世帯数,世帯人員・所得金額階級別」で確認できます。
これを見ると、かなり興味深いことが分かります
特に重要なのは、「1,000万円以上の世帯が12.3%もある」一方で、500万円未満の世帯もかなり多いことです。
累積すると、
300万円未満:約35.5%
500万円未満:約58.4%
600万円未満:約66.9%
700万円未満:約74.5%
800万円未満:約79.9%
900万円未満:約84.4%
1,000万円未満:約87.7%
1,000万円以上:約12.3%
となっています。
つまり、単純化すると日本の世帯の約6割が世帯所得500万円未満、約7割半が700万円未満、約9割弱が1,000万円未満という分布です。
また、2024年の全世帯の平均所得は536.0万円、中央値は319万円です。平均と中央値にかなり大きな差があるため、「平均的な日本の世帯」を考える場合には中央値も重要です。
日本で子ども1人を0歳から大学卒業・社会人になるまで育てる費用は、進学ルートによってかなり大きく変わります。
ざっくりした目安としては、約2,000万~4,000万円を見ておくとよいです。
代表的なケース
進学コース 22歳頃までの教育・養育費の概算
ほぼ公立・自宅通学 約2,000万~2,500万円
公立中心+大学私立 約2,500万~3,000万円
中学・高校・大学が私立 約3,000万~3,500万円
私立中心+大学一人暮らし 約3,500万~4,000万円超
ここでいう費用には、学校教育費だけでなく、食費、衣服、医療、通信、レジャー、習い事などの養育費も含めて考えるのが適切です。
特に大学については、
授業料・入学金
教科書・教材
通学費
一人暮らしの場合の家賃・生活費
が大きく効いてきます。
例えば、かなり標準的に
0~18歳: 1,500万円前後
+
大学4年間: 500万~1,000万円前後
と考えると、合計2,000万~2,500万円程度が一つの目安になります。
ただし、「子どもを育てる費用」を考える場合には、大学卒業までの総額と、親が実際に毎年負担する金額を分けて考えた方が分かりやすいです。
「少子化の原因として子育て費用がどの程度の負担になっているのか」
先ほどの「子ども1人を18年間育てる費用」を使って、かなり分かりやすく試算できます。
今回は、2024年の調査による0歳~高校3年生までの子育て費用「約2,173万円」(預貯金・保険を除く)を基準にします。この調査は4,166人を対象にしたもので、食費・衣類・生活用品・保育・学校教育・学校外教育・習い事・携帯・レジャーなどを含んでいます。
18年間の平均にすると、
2,172.7万円 ÷ 18年 ≒ 年120.7万円
です。
一方、2026年の年収別手取りを概算すると、次のようになります。
年収別に見た子育て負担
世帯年収年間手取りの目安子育て費用/年※手取りに占める割合
300万円 約240万円 約121万円 約50%
400万円 約317万円 約121万円 約38%
500万円 約390万円 約121万円 約31%
600万円 約462万円 約121万円 約26%
700万円 約531万円 約121万円 約23%
1,000万円 約726万円 約121万円 約17%
※18年間の平均。実際には年齢によって大きく変わります。
年収別:子育て費用が手取りに占める割合
0歳〜高校3年生の18年間の平均子育て費用を年間約120.7万円として試算。手取りは2026年の概算値。
ただし、児童手当を考慮すると少し下がります
現在は所得制限が撤廃され、第1子・第2子なら、3歳未満は月1.5万円、3歳~高校生年代は月1万円です。
単純計算では18年間で約234万円になります。
したがって、
2,173万円 − 約234万円 ≒ 約1,939万円
が、児童手当を差し引いた実質的な負担額の一つの目安になります。
これを18年間で平均すると約107.7万円/年なので、
世帯年収 年間手取り手当差引後の平均子育て費手取りに占める割合
300万円 約240万円 約108万円 約45%
400万円 約317万円 約108万円 約34%
500万円 約390万円 約108万円 約28%
600万円 約462万円 約108万円 約23%
700万円 約531万円 約108万円 約20%
1,000万円 約726万円 約108万円 約15%
ここで重要なのは「平均」ではなく、子どもの年齢です
実際の調査を見ると、子どもが成長するにつれて費用が増えます。
例えば2024年調査では、
0歳:約96万円
小学校1年:約132万円
小学校6年:約121万円
中学1年:約191万円
中学2年:約156万円
中学3年:約158万円
となっています。
つまり、中学生になったあたりで家計への圧迫がかなり大きくなる構造です。
そして、この調査ではさらに重要な点があります。
収入が低い世帯ほど、生活費が収入に占める割合が高い
という結果も報告されています。
したがって、単純に「子育て費用は年間120万円だから、年収300万円なら40%」と考えるだけでは不十分です。
例えば年収300万円の世帯では、手取り約240万円から子どもに平均108万円を使うと、大人の生活に残るお金は年間約132万円、月約11万円です。
一方、年収1,000万円なら、同じ子育て費用を差し引いても、
手取り約726万円 − 約108万円 ≒ 約618万円
が残ります。
この差は非常に大きいです。
なお、ここでは**「世帯年収=主たる稼ぎ手1人の給与収入に近いケース」**として単純化しています。夫婦それぞれに収入がある世帯では、税・社会保険・配偶者側の収入によって手取りが変わります。
また、大学4年間の費用はこの2,173万円には含まれていません。大学まで含めると、子ども1人あたりの総負担はさらに大きくなります。
ここでは、前回使った0歳~高校卒業まで約2,173万円をベースにし、そこへ大学4年間の費用を加えてみます。なお、2,173万円は教育費だけではなく、食費・衣類・生活用品・教育・習い事などを含む「子育て費用」です。
大学については、国立・私立、自宅・一人暮らしで大きく変わるため、3パターンに分けるのが分かりやすいです。文部科学省の調査では、私立大学の初年度納付金だけでも平均約147.7万円です。
① 大学まで含めた総費用
大学進学パターン大学4年間の追加費用の目安 0~22歳の総費用
国立・自宅通学 約250~300万円 約2,450万円
私立・自宅通学 約500~550万円 約2,700万円
私立・一人暮らし 約900~1,100万円 約3,100~3,300万円
※大学の学費・生活費は進学先や居住形態で大きく変わります。文科省の幼稚園~高校の学習費調査では、公立・私立によって教育費にも大きな差があります。
したがって、「普通に大学まで出す」ことを考えるなら、子ども1人あたり約2,500万~3,300万円くらいを一つの現実的なレンジとして考えるのがよいでしょう。
年収別に見るとどうなるか
ここでは中間的なケースとして、
0~22歳の総費用=約2,700万円
と仮定します。
22年間で均等に割ると、
年間約123万円
です。
前回と同じく、年収別の手取りを概算すると、
世帯年収 年間手取りの目安 子育て費用(平均)手取りに占める割合
300万円 約240万円 約123万円 約51%
400万円 約317万円 約123万円 約39%
500万円 約390万円 約123万円 約32%
600万円 約462万円 約123万円 約27%
700万円 約531万円 約123万円 約23%
1,000万円 約726万円 約123万円 約17%
大学卒業までの子育て費用の負担率
0歳から大学卒業までの総費用を約2,700万円、年間平均約123万円として試算した概算値。
ただし、この「年間平均」は実態をかなり薄めています
ここが重要です。
子どもが0~10歳くらいの頃は比較的費用が低くても、高校・大学になると支出が大きくなります。
特に、
高校 → 大学進学
のところで家計負担が跳ね上がります。
例えば年収500万円の世帯なら、手取りを約390万円とすると、年間平均123万円でも、
390万円-123万円=267万円
しか残りません。
ここから、
住宅費
食費
光熱費
自動車
保険
親自身の老後資金
その他の税・社会保険
予想外の支出
を払うことになります。
さらに大学が一人暮らしになると、年間の負担はかなり増えます。
そして「児童手当」を考慮すると
現在の児童手当は、所得制限が撤廃され、第1子・第2子の場合、3歳未満は月1.5万円、3歳以上は月1万円(高校生年代まで)です。
したがって18年間で単純計算すると約234万円になります。
仮に総費用2,700万円からこれを差し引くと、
2,700万円-234万円=約2,466万円
です。
22年間平均なら、
年間約112万円
程度になります。
世帯年収年間手取り手当差引後の子育て費用手取りに占める割合
300万円 約240万円 約112万円 約47%
400万円 約317万円 約112万円 約35%
500万円 約390万円 約112万円 約29%
600万円 約462万円 約112万円 約24%
700万円 約531万円 約112万円 約21%
1,000万円 約726万円 約112万円 約15%
かなり重要なポイント
この数字から見えてくるのは、単純な「子育てに年間○万円かかる」という話以上に、所得が低い世帯ほど子育て費用が可処分所得を圧迫する割合が急激に高くなるということです。
例えば、
年収300万円 → 手取りの約半分
年収400万円 → 約3分の1
年収500万円 → 約3割
年収600万円 → 約4分の1
年収700万円 → 約2割
年収1,000万円 → 約15%
という違いになります。
しかもこれは子ども1人です。
子ども2人なら、単純化すればこの負担がさらに大きくなります。一方で、兄弟で共有できる費用もあるため、完全に2倍にはなりません。
なお、今回の「約2,700万円」はあくまで中間的なケースです。公立中心なのか、私立なのか、大学が自宅通学なのか、一人暮らしなのかで1,000万円近く差が出ても不思議ではありません。文科省の調査でも、小学校だけでも公立と私立の年間学習費には大きな差があります。




