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第97話 黒いローブの襲撃者

 オレリア王女の成功を祝う宴は三日後に開かれる。

 三日あっても王宮はてんやわんやの大忙しだ。

 王都に住まう貴族への招待状の作成、豪華な食事の用意、宴を彩る音楽隊の手配。

 他にも準備が山積みで、三日ですら急すぎるらしい。 


 その間、俺達はお城を見て回ることにした。

 遺跡とかじゃない。本物のお城だ。気分はもう観光だ。

 あちこちにデーモンが潜んでいるのはだいぶマイナスだけどな。

 観光客オーラが出ていたのか、レオナが案内を買って出てくれた。


「忙しいのに悪いね」


「今までのお礼だ。気にするな」


「この城は、ラトア城といってな、この国自慢の建築物なんだ。どこも美しいだろう」


 高い城壁や幾つもある塔は、真っ白な石で組まれていて、屋根は青い瓦でできている。あちこちに彫刻が彫られていて、見た目も綺麗だ。


「確かに綺麗ですね。それだけじゃない。機能もすごい」


 城のあちこちにある塔は、防御結界を張る魔法装置が置かれていたり、魔法の砲台が置かれていた。


「場内にいるデーモンは、全てグレーターデーモン以上ですね」


 俺達はただ観光案内されているわけじゃない。使えそうな設備を教えてもらったり、誰がデーモンに成り代わっているか調査を進めている。むしろこっちが本命だ。

 

 オレリア王女が持ち帰った情報をもとに、王様直属とオレリア王女直属の、鑑定スキル持ちを確保することにした。デーモンを見破るためというより、鑑定スキル持ちの命を守るためだ。

 もう遅いかもしれないが……

 鑑定スキルはもともとレアなスキルらしく、所持している人間が非常に少ない。

 調べた結果、鑑定スキル持ちの中に、最近人が変わったかのような行動を見せる者が何人かいた。

 手遅れだった。

 それでも俺達の鑑定スキルで、潔白な人間が何人か見つかった。謁見の間でデーモンの角を鑑定したジルを含めて三人。いずれも王様とオレリア王女の派閥の人間で、現在は安全な場所に確保している。

「なぁ。王都の冒険者ギルドにも鑑定スキルを持ってる冒険者がいるんじゃない?」


 そういうとレオナの顔が険しくなった。

 

「調べて確保しよう」


 レオナは別のオレリア王女の近衛騎士に、鑑定スキル持ちを探して確保するように頼んだ。

 レオナは今日、俺達とずっと行動してくれるみたいだ。俺達だけで勝手に行動できないし、案内人がいないと行けない場所とかあるしな。


 その後も俺達はレオナと共に行動しながら、王城にいる者に片っ端から鑑定スキルをかけて行った。


「秀ちゃん」


 琴音の顔が引き締まった。


「あぁ。わかってる。レオナさん。ちょっと、あの離れを見てもいいですか?」


「ん? あれか。あれは王族が使う離宮だ。静養に使うためのものだから、今は誰もいないはずだ」


「……なるほど」


 丁度いいな。


 俺達は観光の振りをして、離宮に向かう。

 離宮は王宮から隔離するためなのか、王宮と離宮の間にちょっとした背の低い木が植えられている。と言っても人間の背より高い。だから……奇襲にもってこいだよな!


 黒いフード付きのマントで全身を覆った人影が、俺達に襲いかかってきた。

 その数三。そのうちの一人がアリサさんを狙っていた。


「失礼!」


「え?」


 俺はアリサさんを抱き寄せながら、刀を抜き、襲撃者の斬撃を受け止めた。

 

 昼間だってのに、フードの中が見えない。隠蔽スキルを発動しているのか?

 アリサさんを背後に回し、一歩踏み込んで襲撃者の剣を押しのけた。

 すると襲撃者はすぐさま踏み込んできて、剣を袈裟斬りに叩き込んできた。


 「ライジング・カット!」


 俺はスキルを発動させて、斬撃をはじき返した。

 弾かれて隙ができた襲撃者の元へ、俺は刀を横薙ぎに振るって追撃した。

 

 襲撃者は強引に後ろに下がるがかわしきれず、俺の刀が襲撃者のローブと腹を浅く斬った。

 

 刀の先には赤い血。しかし血から瘴気を少し感じる。

 入れ替わったデーモンか。

 どうしてかデーモン達は正体がバレるのを嫌がる。なにか大きな作戦でも動いているのか。

 こっちとしても、いきなり大暴れして、王宮のあちこちで殺戮が行われるのは避けたい。


 襲撃者は撤退する考えはなく、派手に暴れるのも避けたいようだ。

 じゃあこっちは派手にやるか? 王城を破壊したら、どんな罪になるかわからないな。こっちも魔法は最小限にしないと。


 そう思ったその時、後ろで大きな炸裂音がした。

 別の襲撃者が空に打ち上げられ、下から放たれたマジカルバスターで消滅した。


「掛けまくも畏き八百万の神々の御前に申さく」


 祝詞を唱えた瞬間、デーモンが焦り出し、突っ込んできた。

 焦りは隙を生む。

 俺は祝詞を中断し、襲撃者の斬撃を身を低くして避けつつ、地を這うような斬撃を放った。


「グアッ!」


 襲撃者は両足を切断されて倒れ込んだ。

 

「オン・スーリヤ・パーヴァナ・ナマハ! オン・アーラ・ヴァジュラ・カーンタ・ソワカ! 浄化の光輪により、穢れを焼き、闇を祓う! 妖魔討滅! 浄刃・陽光輪! 急急如律令!」


 浄化の炎に包まれた刀が、襲撃者を縦に斬り裂き、炎で包み込んだ。


「グォォォオッ!」


 襲撃者のローブが燃え、人の体を保つことができなくなったデーモンが姿を現した。ぶちぶちと黒装束が弾け飛び、体が鋼の筋肉に変わっていく。

 それを見て俺は止めを刺した。


 琴音の方を見ると、首がないデーモンの死体があった。


 デーモンの死骸を見下ろしたレオナの顔が強張った。


「この服装は……。第一王子の暗殺部隊の物です」


 物的証拠になるとレオナが近寄った瞬間、どこからか青い炎が飛来し、デーモンの死骸は青い炎に包まれた。


「証拠隠滅か……」


 俺達は襲撃のことをオレリア王女に報告すると、とんでもないことを言われた。


「私が囮になります。お父様の近衛騎士に、襲撃を見てもらいましょう」


 この姫さん、ゴーレムに占拠された国境都市に行ったり、デーモンがうじゃうじゃいるダンジョンに潜ったり、度胸ありすぎじゃないか?

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