第95話 それは寝ぼけか、それとも……
デーモンロードを調伏したことで、ダンジョン内の瘴気がなくなり空気が変わった。だから俺達は、オレリア王女を護衛しながら、ダンジョンから帰還することにした。
まだ探索していない坑道も確認しながら進んだが、デーモンの姿はどこにもない。
デーモンロードがいなくなったせいか、それとも童子達が根こそぎ狩りつくしたせいか、戦闘は一度も起きなかった。
おかげで一日も経たないうちに、入口にたどり着いた。
国境都市まで戻ると、レオナ達がデーモンの死骸から角を切り取り、残りを祝詞で浄化した。
デーモンロードの角も回収済みだ。頭から切り離された状態だったので、塩にならずに済んだみたいだ。
「今後の方針が決まりましたら連絡を入れます」
レオナに告げられ、俺達は拠点にしていた部屋に戻ることにした。
俺は再びエアテントを部屋に設置して、そのまま寝ようとしたら、アリサさんが訪ねてきた。
「どうした?」
「ごめん。テント張る余裕ない……。泊めて?」
「今日は疲れたよな」
「もうだめ。ベッドだけ出すから」
「ええ! この間は男女一緒のテントなんてって言ってたじゃん!」
琴音が納得いかなくて文句を言った。
「ごめん」
「まぁ……いいけど。さすがに今日はもう寝るだけだし……」
「ごめんね。もう無理……」
そういえばエイの妖怪の上でも、うとうとしてたな。
「んじゃおやすみ」
「おやすみ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「きゃああっ!」
モーニングコールはアリサさんの悲鳴だった。
「なななな! なんで早川が同じテントにいるのよ!」
「……アリサさんが泊めてくれって言ったんだろう」
「……そうだった」
「うぅ。秀ちゃん。おはようのチュー」
「お互い口臭いからダメ」
「そうだった……。歯磨いてくる」
琴音がモソモソとアイテムボックスから歯ブラシやペットボトルを取り出した。
「おい! パンツ見えるぞ!」
俺は琴音のズレたパジャマをきちんと直した。
「うぅ……ありがと」
なぜかアリサさんが昨日着たままだったスカートを少しずり下げた。
まだ寝ぼけてるのか? 着替えようとしている?
「俺ちょっと外に出てるから着替えたら教えて」
まぁアイテムボックスから装備を変えたら、着替えられるんだけどな。
やっぱり寝ぼけてただろ……
俺はテントを出て、パジャマからこっちで買った制服に着替えた。
常夏の島にある、コスプレショップみたいな防具屋で、平時に着る用の服を買うのもありだな。
装備品扱いだから、着替えが楽なんだよね。
「ぬああああっ!」
テントの中からアリサさんの悲鳴のような声が聞こえてきた。
「どうした!」
中に入ると、普段着に着替えたアリサさんが、ベッドの上で悶えていた。
「は、早川! さっきのは忘れなさい! 寝ぼけてたのよ!」
「お、おう。俺は何も見てないぞ!」
「ってかやっぱり男女で同じテントはダメ! エッチすぎ!」
「えぇ!?」
「琴音ちゃん。今夜は私のテントに来てよ。女子トークもしたいし」
「うーん。まぁたまには良いけど……」
「女子トーク配信もいいなぁ。狐鈴さんも呼んじゃおうか」
「そうだねぇ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
その日昼過ぎ、俺達はオレリア王女が使用している屋敷に呼ばれた。
王女の部屋にはレオナだけでカイゼルはいなかった。
「明日王都へ戻ります。また護衛をしてください」
「わかりました。カイゼルは?」
「一応連れていきます。カイゼルから報告させた方がよいでしょう。もし裏切るようなら、そこまでです」
「大丈夫ですかね?」
「……レオナが証言しても難癖つけてくるでしょうね。カイゼルでも怪しいですが……」
「相手の王子はその……デーモンですからね」
「えぇ。いざとなったら頼みますよ」
オレリア王女はまだ辛そうだった。
「はい。でもかなり危険です。護衛対象の優先順位を決めてください」
「そうですね。まずはお父様とお母様を優先して守ってください」
「オレリア王女ではなくて?」
「はい。私より優先してください。お父様が殺されたら、この国は瓦解します」
封建社会って脆いな。




