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第92話 デーモンロード

 カイゼルは観念したのか、ひざまずいて少しずつ話し始めた。

 

「俺は……アルベール王子派の人間です。オレリア王女の近衛騎士になったのも、諜報のためです」


「カイゼル! 貴様ぁ!」


 レオナが激怒して、カイゼルに剣を向けた。


「レオナ。まずはカイゼルの話を聞きましょう。カイゼル。全て話してくれますね? そうすれば助命しましょう」


 オレリア王女の言葉に、カイゼルは後悔と安堵が入り混じった複雑な顔になった。


「……はい。アルベール王子は今回の洞窟探査で、オレリア王女を亡き者にしようとしていました。ですが俺は……オレリア王女を亡き者にしようとは思っていません。これは本当です。毒も命にかかわるものではなく、王位継承争いから除外される程度のものです」


「俺の鑑定では、動けなくなり、後遺症も出るってなってるぞ」


「……そうです。そうなればアルベール王子も見逃してくれるでしょう」


「何が見逃してくれるだ!」


 レオナの持つ剣が怒りでカタカタと振るえ始めた。


「こんなこと好きでやってるわけじゃない! 俺だって騎士だ! 伯爵家の長男だ! こんな不名誉なことを好きでするわけないだろう!」


「ならなぜだ!」


「妹が……アルベール王子の侍女になった妹が、人質に取られているんだ……。俺が指示に従わないと妹の命がない」


「カイゼル。頭を上げなさい」


「……オレリア王女」


「あなたの事情はわかりました。あなたの妹は私がなんとかしましょう」


「えっ……」


「その代わり。今日から私のために働きなさい。兄に偽りの報告をして、何を企んでいるのか、調べてきなさい」


 二重スパイになれってことか。


「……許してくれるのですか?」


「いいえ。許しません。罰として働きなさい」


「は、はい。謹んでお受け致します」


「秀一殿。昨日の睡眠魔法。不問にして欲しければ、手伝いなさい」


「えっ! アレは狐鈴が……」


「あなたの仲間でしょう?」


 狐鈴を見ると、目を逸らされた。


「……わかりました」



 俺達は童子達が教えてくれた、強力なデーモンの気配のところにいくことにした。

 そいつを倒せば、デーモン達はこのダンジョンから撤退するかもしれない。

 不穏分子もいるし、早く片付けたい。


 デーモンを倒しつつもう一つ下の階に降りると、瘴気がより濃くなった。


 俺と琴音は階段を下りる前に祝詞で清め、少し奥に進むたびに祝詞を唱えて、瘴気を清めていった。


「こうも瘴気が濃いとはな。対瘴気装備とか護符とかあればいいのにな」


「確かにねー。祝詞がないとここまでこれないよね」


 これには俺も琴音もうんざりした。


「似たような浄化の魔法でもあるのかな?」


「アイテムか魔法がないと、厳しいよな」



 そして行き止まりまでたどり着くと、そこはドーム状の大きな広場になっていた。


 壁のあちこちに横穴が空いていて、まるで大きな採掘場のようだ


「……あ~あぁ。来ちゃったんだ……」


 横穴に目を向けていたら、いきなり声がした。

 誰も気づかなかった。狐鈴やエリスでさえ。


 広場の中央に小柄な女の子のようなデーモンが突然現れた。

 それと同時にすさまじい瘴気が溢れ出し、咄嗟に琴音が浄化の祝詞を唱える。


 銀髪のロングヘアに、黒いゴスロリドレス。肌はなんと人間と同じ色。

 一瞬コスプレ少女に見えたが、ここは異世界だ。そんなはずがない。

 頭の両脇から大きな角が二つ生えている。

 背中には大きなコウモリの翼。そして長い尻尾。

 細い手には、身長と不釣り合いなほど大きな鎌を持っている。

 見た目は幼い少女に見えるが、鑑定スキルを発動すると、『デーモンロード・レベル120』


 デーモンロードはこちらを一瞥すると、ため息をついた。


「……面倒くさい。途中で死んじゃえばよかったのに」


 俺はすぐさま愛用の刀を召喚する呪文を唱えた


「……うわ。なんか強そうな呪文。面倒だなぁ。お前ら出てこい」


 横穴からグレーターデーモンがゾロゾロと出てきた。


 アシリアとエリスがグレーターデーモンに向かって飛んでいき、狐鈴はオレリア王女達に結界を張って防御にまわった。


 俺、琴音、シルヴィア、ジャネット、アリサさんがデーモンロードと対峙すると、次々とグレーターデーモンが降りてきて、デーモンロードの前に立ちふさがった。


「……こいつらを倒したら相手をしてあげる」


 そういってデーモンロードが広場の奥に下がっていった。

 そう言いつつも、遠距離攻撃してきそうだな。

 それだけは注意しておかないと。


 俺は刀を握り締め、グレーターデーモンを睨みつけた。

 その後ろではデーモンロードが、気だるそうに鎌を肩に担いでいた。

 面倒くさそうにしているけど、この圧倒的な威圧感はなんだ……


「あいつ……なんか懐かしい感じがする……」

 ボソッとシルヴィアがつぶやいた。

 



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