第91話 ダンジョン最奥部
カイゼルは観念したのか、ひざまずいて少しずつ話し始めた。
「俺は……アルベール王子派の人間です。オレリア王女の近衛騎士になったのも、諜報のためです」
「カイゼル! 貴様ぁ!」
レオナが激怒して、カイゼルに剣を向けた。
「レオナ。まずはカイゼルの話を聞きましょう。カイゼル。全て話してくれますね? そうすれば助命しましょう」
オレリア王女の言葉に、カイゼルは後悔と安堵が入り混じった複雑な顔になった。
「……はい。アルベール王子は今回の洞窟探査で、オレリア王女を亡き者にしようとしていました。ですが俺は……オレリア王女を亡き者にしようとは思っていません。これは本当です。毒も命にかかわるものではなく、王位継承争いから除外される程度のものです」
「俺の鑑定では、動けなくなり、後遺症も出るってなってるぞ」
「……そうです。そうなればアルベール王子も見逃してくれるでしょう」
「何が見逃してくれるだ!」
レオナの持つ剣が怒りでカタカタと振るえ始めた。
「こんなこと好きでやってるわけじゃない! 俺だって騎士だ! 伯爵家の長男だ! こんな不名誉なことを好きでするわけないだろう!」
「ならなぜだ!」
「妹が……アルベール王子の侍女になった妹が、人質に取られているんだ……。俺が指示に従わないと妹の命がない」
「カイゼル。頭を上げなさい」
「……オレリア王女」
「あなたの事情はわかりました。あなたの妹は私がなんとかしましょう」
「えっ……」
「その代わり。今日から私のために働きなさい。兄に偽りの報告をして、何を企んでいるのか、調べてきなさい」
二重スパイになれってことか。
「……許してくれるのですか?」
「いいえ。許しません。罰として働きなさい」
「は、はい。謹んでお受け致します」
「秀一殿。昨日の睡眠魔法。不問にして欲しければ、手伝いなさい」
「えっ! アレは狐鈴が……」
「あなたの仲間でしょう?」
狐鈴を見ると、目を逸らされた。
「……わかりました」
俺達は童子達が教えてくれた、強力なデーモンの気配のところにいくことにした。
そいつを倒せば、デーモン達はこのダンジョンから撤退するかもしれない。
不穏分子もいるし、早く片付けたい。
デーモンを倒しつつもう一つ下の階に降りると、瘴気がより濃くなった。
俺と琴音は階段を下りる前に祝詞で清め、少し奥に進むたびに祝詞を唱えて、瘴気を清めていった。
「こうも瘴気が濃いとはな。対瘴気装備とか護符とかあればいいのにな」
「確かにねー。祝詞がないとここまでこれないよね」
これには俺も琴音もうんざりした。
「似たような浄化の魔法でもあるのかな?」
「アイテムか魔法がないと、厳しいよな」
そして行き止まりまでたどり着くと、そこはドーム状の大きな広場になっていた。
壁のあちこちに横穴が空いていて、まるで大きな採掘場のようだ
「あ~あ。来ちゃったんだ」
横穴に目を向けていたら、いきなり声がした。
誰も気づかなかった。狐鈴やエリスでさえ。
広場の中央に小柄な女の子のようなデーモンが突然現れた。
それと同時にすさまじい瘴気が溢れ出し、咄嗟に琴音が浄化の祝詞を唱える。
銀髪のロングヘアに、黒いゴスロリドレス。肌はなんと人間と同じ色。
一瞬コスプレ少女に見えたが、ここは異世界だ。そんなはずがない。
頭の両脇から大きな角が二つ生えている。
背中には大きなコウモリの翼。そして長い尻尾。
細い手には、身長と不釣り合いなほど大きな鎌を持っている。
見た目は幼い少女に見えるが、鑑定スキルを発動すると、『デーモンロード・レベル120』
デーモンロードはこちらを一瞥すると、ため息をついた。
「面倒くさい。途中で死んじゃえばよかったのに」
俺はすぐさま愛用の刀を召喚する呪文を唱えた
「うわ。なんか強そうな呪文。面倒だなぁ。お前ら出てこい」
横穴からグレーターデーモンがゾロゾロと出てきた。
アシリアとエリスがグレーターデーモンに向かって飛んでいき、狐鈴はオレリア王女達に結界を張って防御にまわった。
俺、琴音、シルヴィア、ジャネット、アリサさんがデーモンロードと対峙すると、次々とグレーターデーモンが降りてきて、デーモンロードの前に立ちふさがった。
「こいつらを倒したら相手をしてあげる」
そういってデーモンロードが広場の奥に下がっていった。
そう言いつつも、遠距離攻撃してきそうだな。
それだけは注意しておかないと。
俺は刀を握り締め、グレーターデーモンを睨みつけた。
その後ろではデーモンロードが、気だるそうに鎌を肩に担いでいた。
面倒くさそうにしているけど、この圧倒的な威圧感はなんだ……
「あいつ……なんか懐かしい感じがする……」
ボソッとシルヴィアがつぶやいた。




