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第86話 ダンジョン攻略開始

 ダンジョンに入ると、管狐が左右等間隔に並んで、狐火で照らしてくれるので、そこそこ明るい。

 俺達が進むと、通りぎた管狐が、トトトトッと走って、最前列に並びなおしてくれる。

 それがちょっと可愛い。


 ダンジョンに突入する前に、俺達は手分けして防御魔法を重ね掛けした。

 対物理防御障壁、対魔法防御障壁、対毒防御障壁、対冷気障壁等と次々とかける。

 上位の魔法を閃きたいから、こう言ってはなんだけど、オレリア王女や近衛騎士はいい練習代だ。

 

「やはり秀一殿は魔導士でしょう? 我が魔導士団でも秀一殿程の使い手はいません」


「俺よりアリサさんの方が上手いですよ。アリサさん。効果時間どれくらい?」


「大体四十五分くらいかなー」


「四十五分……」


 オレリア王女の顔が引きつった。


「何分くらいが普通なんですか?」

 

「十分持てば一級魔導士を名乗れます」


「じゃあ私達は特級ね!」


 アリサさんがドヤ顔になった。

 

「え、えぇ……そうですね」


 しばらく進むと、シルヴィアが片手を横に広げて止まった。

 

「下級デーモンだよ。こっちに気づいて向かってる」


 ここはまだ横も縦も幅が広くて戦いやすい。

 

「琴音。準備の後ネズミで奇襲」


「了!」


「オレリア王女。どうせ戦闘音で俺達が侵入したことがバレます。ここは戦いやすいのでおびき出します」


「は。はい」


 俺と琴音は小さく呪文を唱え、それぞれ天焔業刀あまのほむらのたち天雷鳴刀あまのいかづちのたちを呼び出し、続いてネズミを呼び出す術を唱えた。

 

「オン・ライテン・シュツライ・ソワカ! 紫電纏しでんまといしねずみよ、我が命に従い敵を穿て! 雷鼠招来らいそしょうらい! 急急如律令!」


 呼び出したネズミは一匹にとどまらない。俺達は更にマントラを紡ぎ、次々とネズミを呼び出していく。

 

「オン・ライテン・オンライ……」

 

 バチバチと帯電したネズミが、生み出されては奥へ走っていき、うっすらと見えてきた下級デーモン達に飛びかかった。

 

「皆の者。耳を塞げよ」


 狐鈴の忠告にみんな耳を塞ぐ。

 

 下級デーモンはネズミなんて気にもしてなかったのだろう。 

 飛びかかってくるネズミ達噛まれたその瞬間、ネズミ達が雷光となって小爆発した。

 それでもダンジョン内に爆発音が連続して響き渡った。

 

「オォォオッ」


 ダンジョンの奥から悍ましい雄叫びが上がった。

 ここがデーモンの巣になっているのなら、奥からゾロゾロと出てくるはずだ。

 

「応援を呼びます。二体」


 そう言って俺は、アシリアとエリスを呼び出した。

 ジャネットは火の術を得意とするからお留守番だ。

 それに見た目悪魔っ子だからな。王女様達が要らない警戒して、ジャネットを傷つけたくない。

 

「……天使様?」


 オレリア王女は、白い翼を生やして浮いている、アシリアとエリスを見て呟いた。

 

「そうよ~。よろしくね」


 エリスが微笑むと、オレリア王女は頬を赤らめた。え?

 

「ご主人様。いっぱい来たよ!」


 シルヴィアの警告通り、ダンジョンの奥から下級デーモンがゾロゾロと沸いて出てきた。

 奥の方には中級デーモンまでいる。

 

「ホーリー・レイ!」


 アシリアが放った聖なる光線によって、戦いの火蓋が切られた。

 

「オン・ビシ・ビシ・ウン・ケン・ソワカ!」


 今度シルヴィアが稲妻を放ち、エリスが無詠唱でレーザーを放つ。

 そして狐鈴が控えめにマジカルショットを撃っていた。あれは強力だからな。

 天焔業刀あまのほむらのたちを召喚したものの、最早接近戦なんて不可能だ。

 俺と琴音は氷の術を連打することに徹した。


「……すごい」


 オレリア王女の呟きは魔法の轟音によってかき消えた。


 中級デーモンすら雑魚同様に撃ち倒され、魔法の嵐が終わると、案内妖精が死体を回収していく。


「え?」


 オレリア王女達には案内妖精が見えないから、突如死体が消えていったように見たのだろう。


「デーモンの死体は回収しました。後で渡しますので安心してください。とりあえず一体どうぞ」


 安心させるように、中級デーモンの死体をひとつ取り出して、ガデスの前に置いた。


「預からせてもらうよ」


 ガデスの顔がなぜか引き攣っていた。


「角だけじゃなくて、死体丸ごとを回収するって、どれだけでかいんだよ……」


 アイテムボックスのことだろうか?

 今まで気にしたことなかったな。


「オレリア王女。俺達はまだ何もしてません。せめて下級デーモンくらい倒しておかないと、また認められないとか言われてしまいます」


「そうですね」


「では次は一体残しますよ」


 カイゼルはまじめすぎるのか、それとも……

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