第84話 王女達と出発
二日後、俺達は国境都市の西門で王女達と合流した。
王女側のメンバーはオレリア王女、近衛騎士のカイゼルとレオナの三名。それと見かけない騎士がもう一人。
俺達はいつものメンバーだ。
「お前達、ポーターが遅れているのか?」
レオナが俺達を見て訝しんだ。
「ポーターって荷物運びの人ですか?」
「そうだ。こちらは一人連れてきている」
もう一人の騎士が荷物運びのポーターなんだろう。
「ガデスと言います。アイテムボックス持ちです」
「あぁ。俺達全員アイテムボックスを持っているので」
「全員だと?」
レオナだけじゃなく、みんな驚いていた。
「容量はどれくらい入る?」
「限界まで入れたことがないのでわかりません」
「荷物を確かめさせてもらってもいいか?」
「……いいですけど。大きい物もあるので、城壁の外でもいいですか?」
「かまわない」
俺達は城壁の外に出て、ダンジョン装備をお披露目をすることになった。
まずは俺達用のエアテントを出した。
琴音と一緒に作った寝泊まり用のやつだ。大人四人が余裕で泊まれるので、それなりに大きい。
中にはベッドが二つ。テーブルやソファーまである。
アイテムボックスに入れたら、内装まで一緒に収納できたのには驚いた。
ダンジョンの詳細を確認したら、通路はそこそこ広く、キャンプできそうな空間もあちこちあるらしい。
昔銀鉱だったからなのかな?
広い場所を確保できなかった時用に、小さなテントも用意してある。
経費で落ちたからな!
「こ……これは!?」
エアテントに王女達が驚いている。
俺は内心ニヤニヤしつつ、顔に出さないようにして、王女達の分のエアテントを出した。
オレリア王女とレオナ用で一つ。カイゼル用で一つ。
泊まるのは二人だから、本当は小さくてもいいと思うけど、難癖付けられると嫌だから、それぞれ俺達と同じ四人用のテントだ。
「ベッドの数が足りないので、ガデスさんはソファーで寝てもらってもいいですか?」
「……それはかまわないが、確認させてもらう」
レオナはそう言ってテントに入ろうとしたが、開け方がわからないようだ。
俺は入口のジッパーを開けて、ポリエステル製の布をくるくると撒いて、入口の上に紐で固定した。
まずはカイゼルが入って、中を確認していく。
「なんだこれは……柱の中に空気が出来ているのか? 大丈夫なのか?」
カイゼルが四方の支柱を見ながら言った。
「見た目より丈夫ですよ」
「まぁいいだろう。王女。お入りください」
カイゼルはテントの中を確認してから、オレリア王女を招いた。
「……ええ。中は広いのですね」
王女は驚きながらもベッドに手を添えた。
「柔らかい。それになんて手触りがいいのでしょう。毛布もふかふか……」
「オレリア様。こちらのソファーもふかふかです」
レオナがソファーに腰掛けた。結構楽しそうだ。
「素材だけなら、普段私達が使っているものより、ずいぶんといい物ですね……」
「秀一だったな。これらを頂けないだろうか? 代金ははらう」
レオナが言うと、王女も頷いた。
「いいですよ。ダンジョン攻略が終わったら不要なので」
「不要って……。これだけのものを用意するのも大変だったでしょう?」
王女は予想外の返事に訝しげな顔をした。
「経費で買ったので、俺達には関係ないんですよ。交渉は師匠……沖田にしてください」
「わかりました」
「それじゃ、他の道具も出していきますね」
俺はエアテントの外に、食料やライト、ロープ、そして場所がなかった時ようの小さなテントと寝袋など出していく。
「わかった。もう大丈夫だ」
レオナが途中で止めてくれた。
「随分と大きなアイテムボックスを持っているのだな」
「そうなんですかね?」
「配下に欲しいくらいだ」
「そうですね。騎士団に来ませんか?」
レオナに続いて、オレリア王女も真剣な顔になってスカウトしてきた。
「辞退させていただきます。俺達、いずれこの国を離れるんですよ」
「え……そうなのですか? 良い待遇を約束しますよ」
「申し訳ないのですが……」
レオナはオレリア王女の誘いを断ったことに不服そうな顔をしていた。
一方カイゼルはどこかホッとしたようだ。
カイゼルは俺達のことを、あまりよく思ってないみたいだな。
「あの。一つ気になることがあります」
王女が近寄ってきて、そっと耳元で囁いた。
「あちらの方、何もない方に向かってしゃべっていますが、心の病気なのでしょうか? 私には理解できない言葉で話していますし……異国の言葉でしょうか?」
オレリア王女はアリサさんを見ていた。
最近気づいたんだけど、案内妖精って俺達プレイヤーにしか見えないらしい。
国境都市で兵士達に変な目で見られていたよ。
「彼女は人には見えないものが見えるんです」
アリサさんは見鬼だからな。嘘は言ってないぞ。
「まぁ。そうですの……」
オレリア王女の表情が同情に曇った。
俺達は気をつけような。
そう思って琴音に視線を向けると、琴音も同じことを考えていたのだろう。無言で琴音がコクコクと頷いた。
一方狐鈴は狐鈴が笑いをこらえていた。




