第81話 国境都市の小競り合い
俺達は国境都市で、大天使エリスを調伏した。
その際、天使軍団とゴーレムも掃討したことで、国境都市を占領していた魔王軍は瓦解した。
指揮を執っていた中級デーモンは師匠達がサクッと倒し、残党は控えていた王女様とその近衛騎士、そしてキャサリンさん達によって掃討された。
国境都市に多少の被害が出たけど、許容範囲だろう。
……たぶん。
後の処理は王女様が陣頭指揮を取って、国境都市を復興するらしい。
俺達は王都から応援が到着するまでの間、国境都市の警備を任された。
そんな中、国境都市の片隅で、金属がぶつかり合う、甲高い音が鳴り響いていた。
琴音の目にも止まらない突きが、俺に襲い掛かる。
俺は横に避けつつ、スッと身を低くした。
間一髪横薙ぎに変化した斬撃を避け、俺はすくい上げるような斬撃を、琴音に向かって返した。
琴音は横薙ぎの体勢から、まるで舞うように回転して、俺の斬撃を避け、お返しとばかりに、遠心力を乗せた斬撃を俺に放った。
「くっ!」
俺は前方に飛び込むように避け、前転して距離を取る。
振り返ると、琴音が刀を横に構え、腰を落としてタイミングを見計っていた。
琴音の刀が発光した。
スキルが来る!
「月環刃!」
俺はとっさに刀を縦に構えて、琴音の刀を受け止めるが、威力が乗った斬撃に、刀が悲鳴を上げる。
俺は刀を斜めに傾けて受け流そうとしたが、それで体勢を崩してくれるわけがない。
琴音は流れるように軌道を変えて、袈裟斬りに変えようとした。
わずかにできた隙。
「昇月!」
俺が斬り上げのスキルを発動させると、琴音は袈裟斬りのスキルで対抗してきた。
「天割断!」
またもや刀と刀がぶつかる。
何合も何合も打ち合い、次々とスキルを閃いていく。
今まで使っていた天焔業刀は、こっちの世界の武器じゃなかったせいか、スキルを習得できなかった。
その反動なのか、スキルを閃くのが楽しくてたまらない。
(ご主人様。都市北西にオーガの集団を発見したよ。数は三十体くらい?)
水を差すように、アシリアから念話の通信が入った。
「琴音。アシリアから通信。オーガの集団を発見だって」
「了!」
俺と琴音は力を抜くとうなずき合い、間合いを取ってから、お互いに礼をした。
(あいつら、性懲りもなく、ゲートの素材を運んできてる。先に破壊しちゃうね)
(わかった。頼んだぞ)
(まーかせて! 北西の雑木林の向こうだから。早く来てね!)
「北西の方角、雑木林の向こうにオーガが三十体くらい。またゲートを作ろうとしてるみたいだ」
「また? いい加減しつこいね」
「だなぁ。王都からの応援っていつくるんだよ」
「ゲートを使えばすぐじゃないの?」
ただ、国境都市にはゲートがないので、隣の街からになる。
「事情は分からないけど、早くして欲しいな」
「そうだよ! またダンジョン行きたい!」
俺はアイテムボックスから角笛を取り出して、思いっきり吹いた。
ブオオオォォっと大きな音がなる。
これでアリサさんと狐鈴もいつもの場所に来てくれるだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆
俺達はシルバーウルフに乗って、北西の雑木林を目指した。
狐鈴は以前と同じく、空を駆けて並走している。
「あれか!」
雑木林が見えると、上空からアシリアが術を連打していた。
シルバーウルフが走る速度を上げた。
こいつも浄土世界にいるからな。アシリアを仲間だと認識してるんだろう。
「紅く輝く火の精霊よ。我に集いて爆ぜよ。焦がせ! 砕け散れ!……」
俺はシルバーウルフの上で呪文を唱える。
オーガがはっきり視認できる距離まで来た。
「バースト・ボルテックス!」
俺が突き出した手の先に、炎が集まり、回転しながら、バランスボールくらいに大きさになり、そして目にも止まらぬ速さで発射された。
琴音達が放った火や稲妻の魔法が、火球の音を追うように続き、オーガの群れに次々と着弾し、そして大爆発が起こった。
轟音と共に爆炎がオーガ達を焼き殺していく。
俺達はオーガ達に突っ込まず、一定の距離を保ちつつ再び呪文を唱える。
「あまたに漂う風の精霊よ。汝我に一条の雷光を授けよ。されば轟く雷鳴を響かせん! ライトニング・イプシロン!」
稲妻が宙を走り、オーガに着弾した瞬間、稲妻が球状に枝分かれしてオーガを包み込んだ。
またしても火と稲妻が乱舞してオーガ達を殲滅していく。
多少生き残りがいたけど、アシリアが上空から術を放って殲滅してくれた。
「ご主人様! 褒めて褒めて!」
アシリアが上空から降りてきた。
「アシリア、よくやった!」
「頭を撫でて欲しいな~」
俺は琴音をチラっと見ると、頷いてくれた。
「よしよし」
「んんんっ!」
「またゲートを作ろうとしてたんだって?」
「うん。あっちにストーンサークルの素材があるよ」
アシリアが指した先に、石材の破片が散乱していた。
「これで何度目だよ」
「そんなに国境都市を落としたいのかしら?」
アリサさんが首を傾げた。
「一応魔族領との境目だからなぁ」
「これがいわゆる小競り合いって奴?」
「……戦争なんて経験したことないけど、そうなのかもな」
この時俺達は、まだ知らなかった。
既に次のグランドクエストが始まっていたことに。




