第79話 祝勝会
翌日の夜、俺達は常夏の島で祝勝会を開いた。
祝勝会の会場はホテルの一階にある大きなパーティー会場だ。
参加者は国境都市で戦ったメンバーだけだから広すぎるな。
師匠達が出費が大きすぎるって断ったら、アリサさん達がじゃあ私達が出すって押し切ったらしい。
よっぽどライブコンサートをやりたかったんだろう。
彼女達の本業はアイドルだからな。
それにクエスト報酬でまとまったお金が手に入ったのも大きいみたいだ。
乾杯の前に、コンサートが始まった。
飲み食いした後だと歌えないらしい。特にお酒は喉を焼くからNGみたいだ。
ここだと確認できないけど、コメントを見ると視聴者の画面では、ちゃんとテクスチャが反映されて、ステージがアイドルコンサート風になっているみたいだ。
後でアーカイブを見るのが楽しみだな。
まずはアリサさん、まどかさん、凛さんのトリオで歌い、その後にアリサさん、琴音、狐鈴で歌った。
練習する時間があまりなかったけど、歌までスキルがあったおかげで、そこそこ歌えたと思う。
振り付けもちょっとぎこちなかったけど、頑張ったと思う。
琴音達の出番が終わったら、アリサさん、まどかさん、凛さんでソロ曲を順番で歌っていった。
その頃になると、師匠達は歌を肴に宴会を始めていた。
もったいない!
琴音が緊張するからって、みんなには内緒にしてたんだけど、どこから聞きつけたのか、パーティー会場に人が集まり始め、気づけば後ろにたくさんの人が立っていた。
それに気づいたアリサさん達が、再びトリオで歌い出し、最後は大盛り上がりになった。
俺は一人でライブコンサートを実況配信をしていた。
PV数も同時視聴者数も、今までにない勢いで伸びていった。
きっとアリサさん達のチャンネルは、すごいPV数になっているんだろうな。
「琴音。お疲れ!」
「お腹減ったー!」
汗だくになった琴音がステージ裏から戻ってきた。
「PV数がすごいぞ。こんな数字見たことない!」
「本当!? うーでも超恥ずかしかったよ! みんな見にきてるし! 次はもっと練習してからチャレンジしたい!」
「俺もびっくりしたよ」
アリサさん達はみんなに囲まれて、ファンサをしていた。
「やっぱ、アリサさん達はまぶしいな」
「だねぇ。あれが本来の姿なんだよね。きっと」
「早く帰りたいだろうな」
「そうだね。本来戦う人じゃないよ。きっといつだって無理してる」
「だけどさ。アリサさんってすごい才能あるよな。妖術だってあんなに早く使えるようになるなんて、ありえないよな」
琴音がちょっと複雑な顔になった。納得したような、でも嬉しいような。そして少し怖くなったような……
「ねぇ。私、アリサさんの本名聞いちゃった」
「え? 教えてくれたんだ」
「うん。秀ちゃんにも教えていいって言われたから言うね」
「うん」
「土御門愛理沙だって」
「……は? え? まじで……土御門?」
土御門って安倍晴明の公家だよな。
そして安倍晴明って、あの安倍晴明だよな? 無茶苦茶有名な陰陽師の……
「そう。あの土御門家だよ。安倍晴明の血筋」
「いやいやいや! え? だって陰陽術なんて全然知らなかったよな!」
「うん。直系じゃなくて、だいぶ遠縁らしいけど、先祖に安倍晴明がいるんだって」
「だから見鬼の才があっても、素人だったのか」
「陰陽局はアリサさんを逃がさないよ。いくら遠縁で血が薄くなっても安倍晴明の血筋で見鬼だよ」
「才能がなければ見逃されていた?」
「そうかもね。見逃されてたっていうよりも、見つけられなかったとか?」
「遠縁の人までチェックしないか」
「でも狐鈴の弟子になって、ものすごい力をつけたせいで見つかっちゃった。このまま妖術使いにしておけないって動き出すよ」
「もうアイドルには戻れない?」
「戻っても兼業になるのかなぁ」
「俺達がしてやれることってさ。こっちの世界にいる限り。アイドルでいられるように協力してあげることかな?」
「そうだね。私、歌もダンスも頑張ってみるよ」
「俺も音響とか勉強してみようかな」
「私もアイドルにしてくれる?」
「もちろんだ!」
パーティー終了後、タイミングを合わせたかのように、ランキング報酬が付与された。
そうか。もうそんな時期だったのか。
俺達のチャンネルは、国境都市の戦闘で、同時視聴者数が跳ね上がり、滑り込みでランキング二十位以内に入ることができた。
これでカタログギフトで刀をもらうことができる。
しかしチャンネルに一つなので、刀は一つしかもらえない。琴音と交互に使って、スキルを取得するかな。
そう思っていたら、アリサさんがやってきて、 琴音にカタログギフトのチケットを差し出した。
「これあげるわ」
「え?」
琴音がチケットを前に固まっていた。
「受け取れないよ」
「いいのよ。いつもあんた達から、これ以上のものをもらってるんだから。恩返しよ」
「でも……」
「受け取って。刀のスキルを取ってもらった方が、パーティーの戦力増加になるでしょう。そうなったら私も助かるし。ね!」
「うん。ありがとう……」
俺はちょっと涙ぐんでしまった。
アリサさんのアイドル活動を応援したい。
そう思ってしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
アリサさんのチャンネルで、祝勝会のアーカイブを見て、俺は知ってしまった。
アリサさんがカタログギフトを渡すタイミングで、コメント欄がウルチャで真っ赤に染まっていた。
『カタログ代です』
『アリサちゃん太っ腹!』
『これを埋め合わせの足しにして!』
そして朝食時にアリサさんは、ご機嫌でこう言った。
「昨日のウルチャ、四百万いったわよ! ステージ代に使えるわね!」
どうしよう。
昨日アリサさんのアイドル活動を応援しようって思ったけど、なんか素直に喜べなくなってしまった。




