第64話 中二病装備
早速俺達は常夏の島に移動して、買い物をすることになった。
案内妖精に紹介された店は――洋服店というより、コスプレショップだった。
様々な職業の服から、アニメやゲームに出てきそうな鎧や武器まで、ぎっしり並んでいた。
「今日はまどか達に対抗して、私達もコスプレで戦うわ! こっち学生服よ! なんたって本物のJKがいるんだからね!」
アリサさんが案内妖精向かって可愛いポーズを取った。
夜の宣伝も兼ねてゲリラ配信をすることになったんだ。
「秀ちゃんこれ似合う?」
琴音が選んだのは、黒いブレザーに赤いリボン、赤いプリーツスカート。リボンもスカートも単色ではなく、チェック柄で揃えてあった。
「すっげぇ似合う! 俺も黒のブレザーで合わせようかな」
「私も一緒に選ぶ!」
「頼むぜ」
「早川。私はどうよ?」
試着室のカーテンが開き、アリサさんが姿を見せた。
白いブレザーに、薄い茶色のセーター。青いリボンに青いプリーツスカート――こちらもチェック柄でまとめている。
「アリサさんはコスプレ感が……ぐあっ!」
言い切る前に、アリサさんに顔を掴まれた。指が頬にめり込み、視界がぐにゃりと歪む。
「ちょっ! 痛い! 首がっ! 持ち上げないで!」
「プリーズ・アフタ・ミー」
「は、はい!」
「アリサさん。可愛い。琴音と同級生みたい」
「ア、アリサさん、可愛い……こ、琴音と同級生みたい」
「よろしい」
やっと解放された。首がもげるかと思ったぞ。
コメント欄を見ると、やっぱり炎上していた。
「言葉使いには気をつけるのね」
「はい……」
「今のは秀ちゃんが悪いよ」
「はい。みんな! 早川達のチャンネルで暴れないでね! 代わりに私のファッションショーを見せてあげるから! こっちに集合よ!」
アリサさんによってすぐに沈下した。頭が上がらない。
「戯けが」
続いて狐鈴も試着室から出てきた。その姿はもっとコスプレっぽかった
学生服というより、魔法学校の制服だ。白いブラウスの上にあずき色の短いマント。後で教えてもらったけど、ケープっていうらしい。下はあずき色のボックススカート。そして首元には大きなリボンが揺れていた。
「狐鈴も可愛いです」
「我に世辞は要らんぞ」
一体何が正解なんだ!
「早川は琴音ちゃんに甘やかされてるから、女心がわからないのよ」
何も言えなかった。本来なら琴音を特別扱いして、アリサさんには普通とか言えばいいのだろうか? それはそれでやっぱりアイアンクローを食らう。
いや、実際アリサさんは普通に可愛いんだよ。俺には琴音がいるから塩対応っぽくなるだけなんだ。琴音は特別扱いしたいし、いったいどう気を使えばいいんだ!
アリサさんが色々な制服に着替えて、案内妖精に見せている間、俺は琴音とペアルックになるように、黒のブレザーとグレーのズボン、そして赤いネクタイで試着した。
「琴音どう?」
「かっこいい! 制服デートしたい!」
「午後からいこうな」
「うん! 楽しみ!」
「琴音」
俺はちょっと近づいて、声を小さくした。
「うん?」
「やっぱり琴音が一番可愛い」
「もう! 後でアリサさんがアーカイブ見たらどうするのよ?」
「おっとまずい! あーこの服。案内妖精が言ってたとおり、シールド補正が凄いな!」
「防御力は低いけどね!」
二人して誤魔化そうとしたけど、コメント欄はやっぱり燃えていた。
この世界はシールドがなくなると、肉体にダメージが入って、場合によっては死んでしまう。
ゲーム的に言えばヒットポイントだな。ここで売ってる服は、防御力が低い代わりにヒットポイントが凄く上がるってイメージだ。
ダメージを受けたら、シールドがゴリゴリ減っていきそうだな。そこだけ注意だ。
夜に行くダンジョンは、シールドがなくなると、即転移でダンジョン外に退場させられるから、防御力よりもシールドが多いほうが有利かもしれない。
「武器はやっぱり巨大な奴が映えるわよね!」
アリサさんが目を輝かせていた。
「学園バトルと言えば巨大な武器だな!」
もちろん俺もノリノリだ!
俺達は試着したまま武器のコーナーに向かった。
「どれも見栄え重視って感じねぇ」
アリサさんが大きな杖を手に取った。
先端に大きな球体がはめ込まれ、太陽を模した装飾が放射状に広がっていた。
「重心がおかしい。かっこいいけど使いづらい」
「こっちの剣もゴテゴテしすぎだよ。かっこいいんだけどね」
「確かに。無駄に重いし、振り回した時にどこかに引っ掛かりそう」
「こ、これはっ!」
狐鈴が魔法少女っぽい杖を手に取って震えていた。
黄金の杖の先に、大きな赤い水晶がはめられていて、両脇に金属でできた、可愛い翼がついていた。
「やるな……享楽之神よ……」
俺達は無駄に大きくて、やたら派手な武器をいくつか購入した。
名前も攻めすぎだ。
俺が選んだ剣の内の一つに、漆黒のファントム・ブレードという剣がある。アクションスキル付きで、ファントム・フレイムと叫ぶと黒い炎が噴き上がる。
「中二病過ぎる……」
琴音が手にした武器は、真っ白な剣。ガードの部分――剣の根元が翼になっている。名前は祝福のホーリー・フェザー。剣を掲げてホーリーヒールと叫ぶと、羽が舞ってシールドが回復するらしい。
「私もちょっと恥ずかしいなぁ」
「何言ってるの?」
アリサさんがキョトンとしていた。
「滅茶苦茶かっこいいじゃない!」
アリサさんの純粋な笑顔を見て、覚悟を決めるしかないと思った。




