第206話 魔王の妖術
白夜が浄化の光を放ち、炎華が炎の太刀を振るい、翡翠が洪水で妖怪達を飲み込んだ。
陽炎が、叢雲が、鈴蘭が戦場を飛び回り、手に持った獲物で、妖怪達を斬り裂いていく。
そして煌姫が六本のレーザーを放ち、妖怪達を駆逐していった。
紅蓮童子と轟雷童子も負けていない。
黒い雲を操って空を駆け、手に持った巨大な刀で、妖怪達を次々と斬り飛ばしていく。
「みんな!」
俺は十二姫将や童子達が戦う姿を見て、ちょっと泣きそうになった。
「くししし。まずは目ん玉おばけの結界を壊さないとね!」
「ざこ結界なんてちょちょいのちょいだね!」
夜宵と夢月が赤い月の方へ飛んで行き、ババっと派手な身振り手振りで印を結び、呪文を唱えると、周りの風景にヒビが入った。
そしてガラスが割れるような音がして、結界が崩れていく。
「まずはシールドの回復を!」
月華の回復の術が俺達を包み込んだ。
「助かったよ」
「どういたしまして。あぁ……そのホッとした顔がたまらん!」
月華は隠さなくなったな……
「ギャハハハハッ! 結界が消えたぞ!」
遠くからチャラいおっさんの声がした。
いつもは嫌な予感しかしない声だけど、今は頼もしくて涙が出そうだ。
師匠が百鬼夜行の方へ飛んでいくと、次々と大爆発が起こり、十二姫将達がたまらず距離を取った。
師匠は軍隊でも壊滅できそうだな!
そして機動式神が六機、赤い月に向かって飛んで行った。
まるで戦争映画のように榴弾や弾丸が発射され、ドローンが群れをなして飛んでいく。
赤い月のように見えたそれは、巨大な球体状の妖怪だ。やつの名前を鑑定する前に、赤い月は銃弾を一斉に受けて、破裂するように砕け散った。
しかしそこで機動式神の動きが止まり、全機真っ逆さまに墜落していく。
あれは魔王によって、憑依を解除されたんだ。
今度は式神達の周りに、再び黒い襖が現れた。
「ばかね! 同じ手はくわないわよ!」
煌姫が手印を結んだ。
黒い手が十二姫将達に触れようとした瞬間、金の札が現れ、札に触れた手が塩になって崩れ落ち、そのまま襖も炎に包まれて焼け落ちていった。
「妖怪達は私達に任せて、ご主人様は今度こそ魔王を倒して!」
「あぁ! もちろんだ! いくぞ! みんな!」
回復できない結界が消えたおかげで、俺達は回復アイテムでシールドや魔力、呪力を回復した後、魔王の元へ向かった。
魔王は静かに宙に浮いていた。
頭は牛の頭蓋骨だから、表情から感情が読み取れないが、静かな怒りがその気配から感じ取れた。
「おのれ貴様ら。我が創作物を……。いくら琴姫だろうと許さんぞ」
「あんたなんて知らないんだけど!?」
「あぁ……琴姫よぉ。生まれ変わっても美しい。さぁ! 殺して我のものにしてくれようぞ!」
「意味わかんない! 私は秀ちゃんの彼女だし!」
「くっくっく……その秀之介の前で痛ぶってやろうぞ!」
「変態! オン・カルナ・ラグバ・シャンティ・ソワカ! 明の光、穢を掃う。掃穢清光! 急急如律令!」
琴音が放った浄化の炎によって、魔王は白い浄化の炎に包まれたが、奴が柏をパンッと打つと、炎が吹き飛ばされた。
「マジカルバスター!」
今度は狐鈴が放った光の奔流が魔王を飲み込んだ。
しかし氾濫した川のようなエネルギーが止むと、そこには無傷の魔王が手印を結んでいた。
魔王の前に光の線が走り、五芒星の魔法陣が展開すると、あちらこちらの空間が避け、四体のがしゃどくろが上半身だけ覗かせて、その手に持った巨大な刀を俺達に向かって叩きつけてきた。
「くっ!」
その刀は瘴気の炎が宿っていて、大きく避けたはずなのに、シールドがジリジリと削られていく。
がしゃどくろは刀を一閃するとスゥッと消えた。
「オン・ラカ・シューラ・カン・ソワカ。祖、安倍晴明の名と血の元に命ずる。天を駆ける蒼の龍よ! ここに来たれ! 青龍! 急急如律令!」
アリサが呪文を唱えると、頭上に暗雲が漂い、空から巨大な東洋の龍が現れた。
青龍はそのまま魔王の元へ飛んでいき、いく筋もの雷を落とした。
しかし魔王は雷が当たる直前に消えては近くに現れ、雷を避けていく。
そしていきなり琴音の目の前に現れた。しかもいつのまに握っていたのか、大きな鎌を振りかぶって。
「オン・ラグナ・リンマ・ソワカ! 雷よ、刀より爆ぜよ! 雷爆! 急急如律令!」
魔王が大鎌を振り切るのを待つ琴音ではない。
魔王が現れた瞬間、迷いなく刀を突き出し、稲妻の術を叩き込んだ。
正に訓練の賜物だ。
しかし魔王は稲妻を全身にくらいながらも止まらず、大鎌を振り切った。
あれは避けきれない!
「琴音ぇえ!」




