第204話 玉藻の前と魔法少女戦隊との戦い
力が足りない! 玉藻前の体毛が固すぎて、マジカルソードでは傷一つつかない。
吹っ飛ばされた俺の代わりに、琴音が前に出た。
玉藻前と着かず離れずの距離で戦い、動きを封じるように、その周囲をぐるりと円を描くように攻撃を繰り出していく。
琴音の牽制が効果を上げたのか、アリサの強力なマジカルショットが次々と着弾するようになった。
しかしまるで手応えがない。
「やるっきゃないでしょ!」
アリサはそれでも攻撃を続けた。
「あぁ! そうだな!」
俺も琴音と同じく中距離で戦い、狐鈴とアリサが後方から絶え間なく攻撃を叩き込んだ。
「何たる脆弱! 一尾の狐や陰陽師など恐れるに足りん!」
玉藻前の口元がいやらしく歪んだ。
こっちの攻撃が効かないことを悟ったのだろう。玉藻前の攻撃が大胆になった。
もはや防御など考えていない。俺達の攻撃を食らうことを躊躇わず、真正面から突っ込んできた。
大気を切り裂きながら爪が迫ってくる。
その圧力だけで身の毛がよだつ。
紙一重で避けるとか考えられない。大きく避けなければ、風圧だけでシールドが削られそうだ。
そして今度は大きく開いた顎が、食い殺そうと迫ってくる。
あれに噛まれたら、シールドごとかみ砕かれそうだ。
さらに九つの尻尾が、それぞれ意思を持ったかのように光り出した。
赤い光に包まれた尻尾から、巨大な火球が放たれ、青い光に包まれた尻尾からは、氷柱が吹雪となってばら撒かれた。
炎と氷が同時に戦場を蹂躙していく。
そこへ別の尻尾が黄色く光ると、稲妻が幾つも天地を繋いだ。
まるで天変地異だ。
回避に専念するも、気づけばシールドゲージは十八本と二十パーセントだ。
このままではシールドを全て削られる。
アリサも浄土世界で修行したおかげで、シールドゲージが十二枚になっていて、今は残り六枚。後衛とはいえアリサの方が心配だ。
そんな時、視界の右下にあるコメント欄が、青、緑、黄色、赤と虹色に流れ始めた。
みんなの応援によって、力が沸き上がってくる。
一瞬見えたのは師匠のチャンネルから来たというメッセージ!
きっと師匠やみんなが、俺達のチャンネルにリスナーを誘導してくれたのだろう!
「コメントチャージ!」
そう叫ぶと、さらにコメントが加速した。
力がみなぎってくる!
俺は玉藻前の激しい攻撃を避けながら、次々とバフ魔法をかけていった。
「コメントチャージ! みんな! サンキューな!」
俺は玉藻前を噛みつき攻撃をかわし、すれ違いざまにエネルギーソードを横に構える。
「サークル・リーパー!」
マジカルソードは玉藻前の尻尾を、今度こそ一つ根元から切断した。
「ギィィアアッ! 貴様ぁあ! なぜだぁあああっ!」
怒り狂った玉藻前が、俺に集中すると、その背後に琴音の姿が見えた。
琴音がもつ魔法のステッキも、マジカルソードによる光の刃が伸びていたのだが、今やそれは両手剣をはるかに超える大きさになっていた。
「ヘビー・フィニッシャー」
琴音が放った斬撃スキルによって、玉藻前の尻尾がまた一本斬り飛ばされた。
「グァアアッ!」
さらに琴音は下がって間合いを取りつつ、マジカルソードを腰だめに構えた。
「シャイニング・ジャッジメント!」
その瞬間、辺りが真っ白な光に包まれ、目が痛くなるような、強烈な光の刃が放たれた。
琴音の方に振り向いた玉藻前の前足に、光の刃が食い込み、一瞬の停滞の後、前足を斬り飛ばした。
「グギャッ! おのれ! おのれぇ! おのれぇええ!」
「コメントチャージ!」
俺がかざしたマジカルソードに、みんなの応援が集まってくる。
その凄まじいエネルギーに、玉藻前が振り向くが、これはフェイント。
俺はすぐさま距離を取った。
「マジカルバスター!」
玉藻前の真上から、狐鈴がコメントチャージを貯めに貯めたマジカルバスターを放った。
まるでそれは巨大な光の柱だった。
「グギャアァァア!」
光の柱は玉藻前を飲み込み地面に叩き落とした。
「みんな避けて! マジカル……バスタァァァアア!」
そこへアリサも、狐鈴と同じくコメントチャージで長く貯めたマジカルバスターを放った。
集めたコメントの数が桁違いなのだろう。
狐鈴が放った光の柱とは一回りも二回りも大きかった。
爆炎と粉塵が収まると、地面にぽっかりと、大きくそして深い穴が空いていた。
妖気を探ってみても、玉藻前の気配がしない。
「狐鈴」
「うむ。消滅しておる。やはりアリサのコメントチャージは桁違いよの。良いところを持っていかれたわい」
そういって狐鈴はカカカと笑った。
「えぇ! みんなのおかげね! ありがと!」
アリサが妖精に向かってポーズを取って、ファンサをしていた。
「狐鈴。ならもう変身を解いていいよな?」
「むぅ。流石に魔王と戦うのにその恰好はないか……」
「あたりまえだ!! それ以前に恥ずかしい!」
「マジカル☆キャンセル!」
狐鈴がきゃるんとポーズをきめながらステッキを振るうと、俺達の衣装が元に戻った。
もちろん俺の性別もな!
ウェルカムバック! マイサン!
狐鈴も空気を読んだのか、巫女服に戻っていた。
さて魔王は……
魔王の周りに幾重にも重なった和風魔法陣が展開していた。
まさか! こっちが手一杯になった隙に、大規模な呪術を展開していたのかっ!?
和風魔法陣がゆっくりと点滅し、そして光が弾けた。
「揺れてる!?」
俺達は空中にいるから、地震を感じ取れないけど、大地が揺れて見える。
「何かが起きる!? みんな防御結界!」
「ならば我に集まれ!」
狐鈴が全力で詠唱している間に、俺達は狐鈴の元へ集まった。
「……白狐守護陣! 急急如律令!」
そして大地が薄っすらと怪しい霧に包まれると、地面から建物や壁が次々と生えてきた。
白い漆喰の壁、黒い瓦屋根。どれも平屋の家で、碁盤の目のように綺麗に並んでいた。
そして奥には広い敷地を持つ、大きな屋敷が姿を現した。
霧が晴れるとそこには……
「これって……教科書で見たことあるよ」
琴音の言葉に俺も共感した。
「あぁ……これって平安時代の京都じゃないか……」




