第203話 玉藻の前と妖狐の戦い
「遊びは終いだ」
玉藻前が人から大きな狐へと変わっていく。
狐鈴は自分ではないが、きっと連想されるのを嫌って、獣の姿に変わっていく玉藻前を隠すために、大量の鬼火を放った。
着弾した鬼火が次々と爆炎と黒煙を上げ、それを斬り裂くように、一軒家くらいある狐が姿を現した。
「グォォオオオオ!」
咆哮一つで大気が震え、衝撃波がここまで襲ってきた。
そして玉藻前は空へと駆け上がると、上空から狐鈴めがけて、濁流のような炎を吐いた。
「オン・サナマヤ・パー・ソワカ! 神狐よ、白狐の気よ、地を巡り、結界を成せ! 白狐守護陣! 急急如律令!」
狐鈴は人型のまま、結界を張って炎を防いだ。
俺の消耗を気にしているのか!?
結界が軋み、ほころびが見えた。ミシミシとここまで音が聞こえてきそうだ。
長いようで短いような火炎放射が終わった。あと一瞬でも、玉藻前が炎を吐き続けていたら、防ぎきれなかったかもしれない。
防御に回っては不利だ。狐鈴もそう思ったのだろう。空を駆けるように飛び上がった。
すると玉藻前は口を大きく開いた。
やばい! くるぞ!
青白い光が収束し、次の瞬間、青白い炎が無数の銃弾のように発射された。
狐鈴はその弾幕の中を突き進み、玉藻前との間合いを詰めた。
「狐は惑わすものじゃよ」
狐鈴の体が揺らいだと思ったら、残像を残して消え、そして狐鈴の姿をした幻影が、戦場のあちこちに幾つも現れた。
「小賢しい!」
玉藻前が吠えると、衝撃波が周囲の空間に響き渡り、全ての残像が吹き飛んだ。
そして残った本物の狐鈴目がけて青白い炎を吐いた。
衝撃波によって動きを封じられた狐鈴は、その炎をまともに喰らってしまった。
結界は一瞬で砕け散り、その下にシールドが何枚も削られた。
「狐鈴!」
俺はマジックポーションを掲げた。魔力を呪力に変えるスキルがある。呪力が足りなくて、本来の姿になれないのなら、供給するしかない。
「お腹ちゃぷちゃぷになるまで飲み続ける!」
「私も秀ちゃんに魔力供給するよ!」
「私もよ!」
戦闘に勝利した琴音とアリサもマジックポーションを取り出した。
「カカカッ! いらぬ! それよりも手を貸してもらおう! 我の加護を受けよ!」
狐鈴は大きく下がった後、魔法のステッキを頭上に掲げた。
「マジカル☆ギフトじゃ!」
え!? 狐鈴が意味不明なスキルを発動させると、俺の体がピンクの光に包まれた。
体が熱い! うおおおっ!
頭が重くなったかと思ったら、髪が引っ張られるような感じがした。
視界に揺れるのは長い髪!?
俺の髪が伸びた!? 頭を触ったら、髪がリボンでまとめられてる!?
なんかロングツインテールになってるんだけど!?
さらに俺の装備が水色のフリフリドレスに変わった!
それだけじゃない。む、胸が膨らんでないか!?
これは……俺は恐る恐る股間を触ると……ない!
◥◣自◥◣主◥◣規◥◣制◥◣がない!
ばかなー!
女の子になってる!
「しゅ、秀ちゃんが魔法少女になってる!?」
琴音が目を丸くして俺を見ている……
そんな琴音も白いフリフリドレスに魔法のステッキを持っていた。
「琴音だって!」
俺の声に違和感が! 声まで変わってる!?
「秀一君、超可愛い! TSとかたまらん! ふんすー!」
アリサも黒いフリフリドレスにロングスタッフを持っていた。
なんか鼻息が荒いんだけど……目つきも怖いし……
「ふはははっ! 魔法少女戦隊じゃ!」
「おい! 狐鈴! 元に戻るんだろうな!」
「安心せい。変身が解ければ戻るじゃろう! それよりギフトは届いておるか?」
「そっちはばっちりだ!」
狐鈴が使うマジカルマジックがどんどん閃いていく。
これがマジカルギフトなのか? こんなスキル規格外過ぎる。もしかして浄土世界で修行した時、自力で編み出したのだろうか?
こうして助かっているけど、修行する方向性が理解できない。
「それじゃあ! みんな! いっくよー!」
狐鈴はそういって可愛く手招きした。
「しょうがないわね! 魔法少女☆マジカルアリサ! 行くわよ! マジカルフライ!」
アリサはちょっとヤケクソ気味に叫ぶと、マジカルマジックを使って空に舞い上がった。
無詠唱で飛べる代わりに、ブーツに小さな翼が生えて、星のエフェクトがキラキラと光っている。目立つ事この上ない。
「くっそ! やるしかない! マジカルフライ! とうっ!」
俺もマジカルマジックの飛行魔法を使ってアリサに続いた。
「秀ちゃん! それだと変身ヒーローだよ! マジカルフライ! えっと……いっくよっ!」
振り向くと、琴音が顔を赤くしつつも追いかけてきた。
「おのれ! 馬鹿にしているのかっ!」
玉藻前は激おこだった。
まぁ……確かにそれはそう。この局面でまだ魔法少女を貫く狐鈴には脱帽しかない。
怒り狂った玉藻前から、無数の狐火が飛んできた。
魔力を込めると網膜にロックオンカーソルのようなものが映り、迫りくる無数の狐火が、次々とロックオンされた。
これがマジカルマジックか! 便利すぎるだろ!
「マジックショット!」
突き出した魔法のステッキから、星型のエネルギー弾が無数に発射され、狐火を次々と迎撃していく。
爆炎の隙間から見えていた玉藻前が、ふっと消えたかと思ったら、コマ落としのように目の前に現れた。
早い! とっさに後ろに下がろうと思ったが、巨大な前足に殴られて吹っ飛ばされた。
二十四本分あったシールドゲージが三本分削られた。ってことはシールドがなかったら即死だった!?
空中から地面に叩きつけられる前に、何とかマジカルフライを制御して復帰すると、琴音も玉藻前の爪によって吹っ飛ばされていた。
玉藻前の動きは速い。術はフル詠唱しないと玉藻前にダメージを与えられないだろう。
遠距離攻撃なら、高火力なマジカルマジックが最適なのかもしれない。
狐鈴はそこまで考えていたのだろう。
アリサがハート型の大きな魔力弾を、何度もタメ撃ちしているが、なかなか当てられていない。
まずは玉藻前の動きを止めよう。
「マジカルソード!」
魔法のステッキにピンクの光が集まり、巨大な剣の形になった。
ブォンブォンと唸るそれは、ビームソードとかエネルギーソードとかそんな呼び名が似合いそうだ。
「コメントチャージ!」
俺はコメント欄に呼びかけながら、玉藻前の動きを予測しながら飛びかかった。
玉藻前はアリサの攻撃に気を取られて……いなかった!
九つある尻尾の一つが俺の方に向き、光ったと思ったら、狐火を連続発射してきた。
俺は狐火を避けながらさらに接近する。
「チャージ・スラッシャー!」
エネルギーソードがさらに巨大に膨らみ、発射された狐火ごと玉藻前に叩きつけた。
しかしかえってくるのは硬い手応えだった。
「何かしたか?」
迫りくる巨大な尻尾に視界が埋め尽くされ、俺は再び吹っ飛ばされた。




