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第193話 憑依型機動式神の新型量産機

 上空を見上げると、烏天狗達の隙間から、遠くに何かが見えた。

 戦闘中だから、チラ見しかできないが、あれは……憑依型機動式神! しかも複数体!

 まさか、師匠が言っていた『結城ちゃんの策』ってこれのことか!


 ……いや、待て。遠目でよくわからないが、なんだかやけにゴテゴテしている気がする。

 あれは本当に機動式神なのか?


「全員、防御結界を張れ!」


 師匠の号令に、俺は琴音を抱き寄せ、慌てて結界を展開した。

 その直後、機動式神から放たれた榴弾砲ががしゃどくろを粉砕し、重機関銃の弾丸が鵺《ぬえ》を蜂の巣にした。


 爆風が吹き荒れ、骨の破片が飛び散り、防御結界に襲い掛かった。

 こっちを信用してのことだと思うが、一言あってもいいと思うぞ!


 爆撃の範囲外にいた烏天狗達が、反撃に転じて機動式神との間で激しいドッグファイトが始まった。しかし機動式神から放たれたドローンによって、烏天狗達は次々と撃ち落とされていった。


「助かったな……」


「まだみたいだよ……」


 琴音に言われて後ろを振り向くと、地面が唸りを上げて揺れた後、まるで噴火したかのように土が吹き上がり、巨大な百足《ムカデ》が飛び出した。


 しかも五匹。凝視すると『大百足《オオムカデ》・レベル910』と表示された。


「きんもー!」


 アリサの叫びが機動式神の飛行音と銃撃の音にかき消された。


 まるで雨のような銃弾が大百足《オオムカデ》を襲い掛かったが、鎧のような甲殻が硬すぎて弾き返された。

 榴弾砲でやっと押し戻したが、苦戦しそうだ。


 その様子を見ていたら、機動式神の一体が俺達の方へ降りてきた。

 ズンっと地面を鳴らして降りると、足にあるハッチが空き、機動式神がそこを指さした。


 俺は機動式神に近づいてハッチを覗き込むと、そこには大きな式札と和風魔法陣が書かれた大きな紙が四枚ずつ束になって入っていた。


 俺はピンときてすぐさま取り出すと、機動式神はハッチを閉めて飛び立った。


「琴音、御影さん、真田さん! 俺達も機動式神を使えます! 狐鈴、アリサ、師匠、レンは回復をお願いします!」


 俺は式札と紙を琴音達に渡すと、アイテムボックスからレジャーシートを取り出して地面に敷き、その上に和風魔法が描かれた紙を重ねた。

 湿った地面の上に敷いたら、梵字が滲んでしまう恐れがあるからな。


 俺は梵字がビッシリと書かれた陣の上で胡座《あぐら》をかき、印を結ぶ。


「オン・ブール・セー・ジャラ・ヴィマーナ・ソワカ! 魂無き形代よ。呪縛の傀儡なり! 来たれ! 黒鉄の物の具! 急急如律令!」


 稲妻と共に現れた憑依型機動式神は、いつもと違っていた。

 前回のアルベール戦で、憑依を解いて落下させたから、修理が間に合わなかったのだろう。援護にやってきた機動式神と同じ機体だ。


 以前俺が使っていた機体と違って、無駄な装飾があるというか、デザイン全然違う。

 自衛隊で使っていそうな無骨なデザインから、派手な鎧を着た騎士っぽい物になっている。

 これはひょっとして享楽之神が納得しそうなデザインに変えたのか?


 まぁ……こっちの方が配信映えするからいいけどな!


「秀ちゃん! なにこれ! かっこいい!」


 琴音が目を光らせていた。


「いいな! いいなぁ! 私も使いたい!」


 アリサもその場でピョンピョンと跳ねて、機動式神に憧れるような視線を送っていた。


「……ダサい」


 一方御影さんはドン引きしていた。


「俺はいいと思うけどな」


 真田さんがそういうと、御影さんが信じられないばかりに真田さんを振り返った。


「まったく男って……」


「アレを見ろよ」


 御影さんは真田さんに言われて、興奮している琴音とアリサを見ると、ため息をついた。


「……私の負け。謝るわ」


「素直な御影も可愛いよ」


「うるさいっ! 人前でそういうこと言うのはやめて!」


「善処するよ」


 あの二人、ダムゼルを攻略したあたりから仲がいいよな。


「それより気をつけて。機動式神は呪いの藁人形なんだから。あの桃饅頭が効くのか怪しいわ」


 確かにそうだ。煌姫が作った桃饅頭は、死にそうになると食べた場所に戻される浄土世界産のアイテムだが、それは生身の話だ。機動式神が壊されたフィードバックは、桃饅頭で回避できないだろう。


「お前も気をつけろよ。傷ついて欲しくない」


「それはお互い様よ。でも……ありがとう」


 仲睦まじい二人を見ていると、アリサが近寄って来た。


「アリサ。御影さん達、見せつけてるよな」


「それ、あんたが言う?」


 アリサが眉をひそめた。


「ええ!?」


「はぁ……とっとと行きなさい! 回復は任せなさい!」


「おう!」


 アリサに促され、俺は憑依の呪文を唱え始めた。

 

「オン・ジャラ・クシャ・カジャ・ソワカ! 魂鎖の意交、魂の渡り、呪装の連結! 急急如律令!」


 新しい機動式神に憑依すると、やっぱり違和感があった。


「ようこそ、マスター。私は人工式神、Vessel《ヴェッセル》 Conduit《コンジット》 Anima《アニマ》 System《システム》。ヴィーカスとお呼びください」


 頭の中に声が響いた!?


「この機動式神は魔力を呪力に変換して動きます」


 なるほど。だから援軍に来てくれたプレイヤー達が動かせたのか。


「また、アシストシステムにより、距離と相手によって武装が自動で切り換わり、適切な攻撃を行います。登場者は標的に集中してください」


 えええ……なんだこれは……


「アシストシステムをオフにすることはできるか?」


「はい。半オート操作からマニュアル操作に切り替えますか?」


 網膜に『YES/NO』の文字が小さく現れた。


「イエス!」


「マニュアルに切り替えます。なおオートには……」


「全手順スキップ!」


「了解。システム起動します」


 なんだこれは! 起動ってなんだ!?


 俺の網膜に戦闘機のゲームに出てくるような、緑色に光る線が現れ、高度など様々な数字が表示された。

 少し邪魔だなと思いつつも、榴弾砲を両手と肩に召喚すると、弾数も表示された。

 なるほどこれは便利だ。


 俺は魔力を込めて地面を蹴ると、上空に飛び立った。

 既に御影さんと真田さんの機動式神が上空で待っていて、琴音の機動式神が追って来た。


 真田さんの機動式神が重機関銃を振ると、俺は訓練を思い出しつつ、編隊を組んで大百足に向かった。

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