第188話 元デーモンの三人娘
デーモン達やモンスター達は今までギリギリの生活を送ってきたのだろう。
祭りの開催が宣言されると、歓喜の声を上げて準備に取り掛かった。
準備といっても殆どない。都市の中央に屋台を並べると、俺達が出した肉を焼き始め、即興で歌ったり踊ったりと、なかなかカオスなものだった。
リオネール王国での祝勝会なんて、開催まで三日もかかったけど……いや、あれと比べてはだめだな。
一応俺と琴音、御影さんが顔を出したが、食べ物は俺達が用意した肉以外は、正直食べられそうになかったので、何も口にしなかった。
記憶が戻った陽炎、叢雲、鈴蘭も同じみたいで、俺の顔を見るなり駆け寄ってきた。
「ご主人様!」
「ご主人様!」
「主様!」
「どうした?」
「ただ焼いただけの肉とか生肉とか……その……口に合わなくて……」
陽炎はお腹が減り過ぎて辛そうだ。
「私もお腹減った……。昨日から何も食べてないよ……。虫とか爬虫類とか無理過ぎ! 角と尻尾を具現化してるから、魔力も消費するし……」
叢雲も顔が青ざめていた。
「私もです……」
鈴蘭は……なんとフルプレートメイルを着ていた。
ビキニアーマーを期待したリスナー達が、がっかりするようなスタンプが連打されているが、俺はホッとした。
「鈴蘭、もうビキニアーマーは卒業したのか?」
「え? はい。見たかったらいつでも見せますよ?」
まずい! 琴音から怒気が膨れ上がった。
「いや、見せなくていい! そのままでいてくれ!」
「は、はい。それが良いみたいですね!」
鈴蘭は琴音に睨まれたのだろう、一歩後ずさって陽炎の陰に隠れた。
「さて、俺達はゲートを使っていったん戻る。お前達も来い。美味い物を食わせてやる」
「やった!」
「さすがはご主人様!」
「そうと決まれば早く行きましょう!」
ゲートに向かおうとしたところ、三人のデーモンが近寄って来た。
たしか……竜の牙とかの盟主達だな。
「やはりお前達は知り合いだったのだな?」
「リュゼリア。一体全体どういうことだ?」
「ラムリス。お前もだ。昨日から人が変わったみたいだ」
俺は陽炎、いや、カルミラ達のことをどう説明したらいいか迷っていたら、陽炎が口を開いた。
「私の耳と尻尾を見て欲しい。元々私はデーモンではなかったのだ」
「昨日の昼までは、ちゃんとデーモンだったはずだが……」
竜の牙の盟主が俺に視線を送ってきた。
「カルミラの本当の名は陽炎。享楽之神によって無理矢理デーモンに転生させられた俺の仲間だ。だから俺が術を使って元の姿に戻した」
三人の盟主達はお互い顔を見合わせた。
愉悦之神を知っているのなら、享楽之神も知っているはず。
「享楽之神……愉悦之神から聞いている。我々をこのような境遇にした神だな」
「お前の目的はリュゼリアだったのだな?」
別の盟主が割って入ってきた。
「本来の目的はアストラルゲートを使用してゴルドーラに行くこと。リュゼリア達を見つけたのは偶然だ。偽りの記憶を植え付けられた彼女達を見つけたので、救いたいと思った」
「……そうか。では仕方あるまい。デーモンでない者をここに置いておくわけにはいかない。連れて行くがいい」
「ラムリス。お前もデーモンではなかったのだな?」
三人目の盟主も鈴蘭に向き合った。
「はい」
鈴蘭の角と尻尾がスゥっと消えた。
「私は式神の鈴蘭。どちらかというとあなた達の敵です」
鈴蘭は神聖な呪力を少しだけ発した。
それはデーモンにとって相容れない毒のようなものだ。
「私もなんだよね」
叢雲の角と尻尾も同じくスゥっと消えた。
「十二姫将が一人。叢雲。ご主人様の式神であり、浄土世界に身を置く者よ」
そう言って叢雲も神聖な呪力を発した。
「……わかった。それを出さないでくれ」
「それでは三人を連れていくぞ」
デーモンの盟主達は引き留めることも反対することもなく、引き下がっていった。
ゲートに向かう途中に陽炎達に聞いたんだけど、この都市にいるデーモン達は、敗走した魔王軍にいたもの、地方で飢えそうになっていたものなど、様々な場所から合流している。
彼女達は後から合流したので、古くからいるわけでもないし家族もいない。紅羽と同様に気づいたらこの地で暮らしていて、何かに導かれるようにゼルガードに来たそうだ。
だから陽炎達の過去を知っているものもいないし、特に絆みたいなものもなかったそうだ。
ただ強い個体だから優遇していた。それだけだったみたいだ。
紅羽の時はダンジョンで待機させられていたから、それに比べればまだマシな方だろう。




