第187話 ゲート解放。裏で何やら動いていた?
決闘が終わると、俺達は静まり返ったコロシアムを後にした。
あまり長居する雰囲気でもないし、ヒーローインタビューがあるわけでもないからな。
都市から離れたテント群に戻ると、みんなが出迎えてくれた。
俺達の戦いを撮影していた案内妖精が、そのまま帰り道もついてきていたからだろう。
「やっぱお前強いな!」
「ってかシールド硬すぎでしょ。どうやってあそこまで上げたんだよ!?」
「近藤さん、かっこよかったよ!」
「御影様。お姉様と呼んでいいですか?」
みんな興奮冷めやらずって感じだ。
騒いでいたら、俺達が帰ってきたのに気づいたのか、師匠と真田さんもテントから出てきた。
「戻っていたんですね」
「あぁ。ついさっきな。当然勝ったよな?」
師匠は片眉を上げ、俺の顔をじろりと見た。
「はい。もちろん」
「わがままを通したんだ。できて当たり前だ」
ん? 師匠の目が少しだけ優しい気がする。
口では当たり前って言われたけど、少しだけ褒められた気がするんだけど、気のせいだろうか?
「はい! 式神も調伏済みです。彼女らの記憶も戻りました」
「十二体全部揃ったか」
「はい。もう思い残すことはありません」
いつの間にか、十二姫将全員を救い出すことは、グランドクエストをクリアするのと同じくらい、俺にとって大事なものになっていた。
「こっちも種の買い出しついでに、結城ちゃんと今後の作戦について詰めてきた。えらいことになってるぞ」
そういえば結城さんって、招待限定の配信で防衛省と色々やり取りしているらしい。
最終決戦に向けて、アストラルゲートを守っていたプレイヤー達も活躍できるように、調整しているみたいだ。
「えらいこと……ですか?」
「実現できるかどうかわからん。期待持たせておいて、できませんでした―じゃ士気が落ちるだろ。だからまだ詳しいことは言えねぇ」
「わかりました。今後の予定ですが、師匠と真田さんが戻ったのなら、今日中に準備を整えて、明日にでも物資を渡しにいきます」
「連絡はいっているのか?」
「カルミラ……陽炎達に念話で話せるので、後で伝えて調整します」
「オーケー。おう。お前ら。聞いていたと思うが、食えそうなモンスターが余ってたら秀一に渡しておけ」
俺は師匠から食物の種を、みんなからはモンスターの死骸を受け取った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日、俺達は再びゼルガードに訪れたのだが、肉を渡そうにも、受け入れの準備ができていなかった。
デーモン達はアイテムボックスを持っていないので、大量の肉を保管することができないというのだ。
そういえば会議の時に、アイテムボックスのことを不思議なスキルと言っていたな……
アイテムボックスが当たり前になり過ぎて、認識が甘かった。
今は肉を保管するための施設を、都市の外に建築しているところだそうだ。
しかし建物を建てる技術が乏しいので、穴を掘って氷の魔法で冷やすようなものらしい。
氷室みたいなものか。
この都市をよく見ると、あちこち修繕したあとを見かけが、新築の建物がない。
グランドクエストのために用意されたモンスターを解放しても、積み上げてきた歴史や技術がないと、いびつなまま……
俺達が渡した食物の種を、上手く育てられなかったら、結末は……
やっぱり俺がしたことって、間違っていたのか? ただの自己満足でしかなかったのか?
いや、今は先に進むこと考えよう。
肉の譲渡はいったん棚上げになり、ゲート解放の話に移った。
ゼルガードにあるアストラルゲートは停止状態になっていたので、まずは登録型で起動してもらった。
それによってアストラルゲートから常夏の島へ戻ることができるようになった。
これまでアストラルゲートを繋いで、ここまで来たけど、ゼルガードと常夏の島がつながることにより、補給や退路の問題が解決した。
常夏の島は王国軍には伏せてあるので、詳しい説明はできないけど、各ゲートの守りを解いて大丈夫だろう。
ただ、ゼルガードのデーモン達を完全に信用することはできない。
攻略中にアストラルゲートを閉じられたら退路を失ってしまう。
そうならないために、こちらからもアストラルゲートの守りを出すことにした。
最終的に守るべきゲートは二箇所。ゴルドーラとゼルガードの二つだ。その両方に戦力を割く必要がある。
魔王を倒せば元の世界に戻れるのかもしれないが、倒せず撤退する可能性も捨てきれない。
その時、退路がなければ全滅するだけだ。
ゲートを守るのは、企業VTuberとして活動を始め、危険を冒してまで取れ高を取ることに消極的なパーティー達だ。
対して、『俺達が魔王を倒す!』と息巻くパーティーは、俺達と一緒にゴルドーラへ攻め込み、魔王城を目指すことになった。
交渉の末、ゼルガードのデーモン達から、俺達の仲間がゲート付近に常駐する許可を得た。
これで面倒な話し合いはひと段落だな。少し肩の荷が下りたよ。
双方諸々の問題が解決したので、肉の一部を使って祭りが開催されることになった。
俺達の要求がすんなり通ったのは、デーモン達が肉のお預けに耐えられなくなったとか……そんなんじゃないよな?




