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第185話 ビキニアーマーは目の置き所に困る

 ラムリスはナイスバディでビキニアーマーだ。だから目の置き所に困る。

 配信的にギリギリなのでは?

 御影さんが早期決着をつけた理由が痛いほどわかる。

 早く決着をつけないと、LunaTubeから黄色い警告メッセージが来てしまいそうだ。


 そんな焦りを感じつつも、コメント欄を見ると、ハートマークで埋まっていた。

 ちょっとしたお祭り騒ぎだな……


 今は対戦相手に集中しないと!

 

 ラムリスは既に抜き身の長剣を持っていた。

 動きやすさを重視するためか、鞘はぶら下げていない。

 きっと控えの席に置いてきたのだろう。


「おい。お前。あいつらに何をした?」


 ラムリスは長剣をビシっと向けてきた。

 長い剣を片手で軽々しく振るえるのは、さすがデーモンといったところか。


「何って?」


「カルミラの角と尻尾がおかしい。鑑定してもレベルが出なくなった。リュゼリアもだ!」


「俺に勝ったら教えてやるよ」


「そうさせてもらう」


「ところで鈴蘭という名に覚えはあるか?」


「……もう一度言ってみろ」


 ラムリスの表情がわずかに動いた。


「鈴蘭」


「もう一度だ!」


 ラムリスも尻尾をビッタンビッタンと床に打ち続けていた。


「……もういいだろ?」


「何かを思い出せそうなのだ。探し求めていた記憶……銀と紫の世界……そして……」


「おい。ラムリス」


 審判のデーモンが怪訝な顔で仲介に入った。


「……すまない。勝って全てを吐かせてやる! そもそも私達と戦いたいというのが怪しいのだ! 何が目的だ!?」


「それも俺に勝ったらわかるさ!」


「そうさせてもらう!」


 そう言ってラムリスは剣を正眼に構えた。


 対して俺は剣を抜いて、鞘をアイテムボックスにしまい、腰を少し落として、居合いの構えになった。

 この剣には反りがなく、鞘から抜きながら戦うのは不向きなので、こうするしかない。

 居合といえば、刀をギリギリまで鞘に納めているイメージがあるけど、そこに鞘があると思っていれば、鞘はなくてもいいんだ。

 ただ最大の利点が使えない。


 居合と言えば俺も最初は誤解していたことがあった。

 鞘に納めていたら、抜くときに摩擦で遅くなるんじゃないか? そう思っていた。


 しかしそれ以上に鯉口を親指で押さえ、刀が抜けないようにすることで、溜まったエネルギーを一気に解放して、弾けるように刀を出す方が強く、運動エネルギー的に早くなる。簡単に例えるとデコピンと同じ原理だ。貯めて指を弾いた方が勢いがいい。


 今回の目的は速さではなくもう一つの利点だ。すなわち相手に手元を隠して、剣筋の起点を見せないこと。


 こっちの世界ではスキル名を言葉として発する。それは相手にこれからどんな攻撃をしかけるかを教えるのと同じだ。かなり正々堂々とした戦い方だな。

 配信的に都合の良い文化だけど、そこへ付け込む隙がある。

 スキルの使用は極力避け、剣筋すら隠すんだ。


「始め!」


 合図と同時にラムリスが間合いを詰めてきた。


「チャージ・スラッシャー!」


 ラムリスの剣が白く光り、真っすぐ唐竹割りに振り下ろしてきた。


 俺はスキル名を知っていたので、ラムリスのスキルが発動した瞬間に動き、剣で斬撃スキルを受け流した。


 普通の人間なら体勢を崩すところだけど、デーモンの肉体は無理が効く。

 ラムリスは無理矢理踏ん張り、受け流された剣の威力をそのまま回転力に変えた。

 

「サークル・リーパー!」


 俺は受け流した方向と逆方向に後退しながら、横薙ぎの斬撃を剣で叩き落とした。


「ライジング・スラッシャー!」


 ラムリスは怒涛の如くスキルを連発してくる。


 俺はラムリスの斬撃を避けながら距離を取り、また居合の構えに戻った。


「どうした? 受け身だけでは勝て……」


 俺は小さくクイック・ステップとつぶやき、瞬時に間合いを詰めつつ、横薙ぎに剣を一閃させた。


「貴様っ!」


 ラムリスはとっさに剣を縦に構えた。

 俺はラムリスの剣に斬撃を叩き込むと、弾かれた反動を使ってその場で一回転した。


「クレセント・カット」


 回転途中で静かにスキル名を唱えて、斬撃速度を上げる。


「くっ!」


 ラムリスは瞬時に剣で受け止めるのを諦め、距離を取って横薙ぎの斬撃をかわした。


 お返しとばかりに、ラムリスは一歩踏み込み、長剣をグッと握り締めた。

 ため技が来る!


「ヘビー・スマッシャー!」


 ラムリスの長剣が金色に光り、袈裟斬りの斬撃が襲い掛かってきた。


「ライジング・カッター」


 重い一撃を弾くため、俺もスキルを使って対抗した。


 ギィィンと耳障りな音が響き、ラムリスの腕が上がり、胴体ががら空きになった。


 俺は一歩踏み込みつつ、横薙ぎの斬撃を放った。


 しかしラムリスは後ろに倒れ込むように上体を逸らし、俺の斬撃が通り過ぎた後、後ろに転がりながら後退し、勢いよく立ち上がった。

 ビキニアーマーだからこそ、そこまで動けるのか?

 いやいや、ビキニアーマーで転がったら普通痛いだろう。って相手はデーモンの体か……厄介だな。


 俺もラムリスも、お互いシールドゲージを削れていない。


 スキルに頼り切った戦いでは、俺に一撃与えるのは難しい。

 ラムリスの強靭な肉体と、それを使いこなす身体能力によって、こっちも手詰まりだ。


 俺はまた居合の構えになって、相手の出方を探る。

 体力的にこっちが不利だ。決闘時間が十分だとしても、戦いが長引けば体力や筋力の消費に差が出てくる。

 ここは琴音や御影さんが作ってくれた、思い込みによる隙を作るか。

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