第180話 双剣使いのデーモンに琴音が挑む
武舞台の上で琴音とリュゼリアが決闘システムを発動させると、コロシアムの上空に大きなスクリーンが映し出された。
格闘ゲームのように、右上に琴音のシールドゲージが、左上にデーモンのシールドゲージが名前とともに表示された。
デーモンの名前はリュゼリアか。
銀髪のショートヘアで、背の高さは琴音と同じくらい。
リュゼリアは腕を組み、紫の瞳で対戦相手の琴音を、上から下へくまなく見ていた。
武器は二本の剣だ。豪華な装飾がされた鞘に収まっていて、長さは長剣とショートソードの間くらいだな。
服装もカルミラと似ていて、騎士階級の貴族っぽい服だ。
青い上着に白いスカート。こういうのは配信映えするように享楽之神の陣営が作ったかもしれない。
「あんた、強いわね」
少しトーンが高いけど、意外と可愛い声だな。
ただ、ふてぶてしい態度や少し釣り目なところから、俺の中で勝手にツンデレキャラのイメージが出来上がった。
「あなたもね。全然隙がないよ」
「それはお互い様よ。それに度胸もある。ここから生きて帰れると思っているの?」
「それは大丈夫よ」
もしものために、煌姫の桃饅頭を食べているからな。最悪ここにいるデーモン達が、一斉に襲いかかって来ても大丈夫だ。
それに武舞台の周りを見ると、案内妖精が飛び交っている。
案内妖精は異世界の住人には見えないらしいからできることだな。
案内妖精の報告によって、外で待機している仲間達が、撤退の援護をしてくれる手はずだ。
「その余裕。すぐに打ち砕いてあげるわ!」
審判のデーモンが武舞台上がり、腕を上げた。
「双方、抜剣せよ」
琴音とリュゼリアがゆっくりと剣を抜いた。
「始め!」
「行くわよ! クイック・ステップ」
リュゼリアが前傾姿勢になったと思ったら、一瞬にして琴音も間合いに入った。
そしてリュゼリアの双剣が、時間差をつけて琴音を左右から襲いかかった。
琴音は右の剣を柄頭で弾き、左の剣を刃で受け流し、絡み取るように巻き上げた。
リュゼリアの体がガラ空きになり、そこへ琴音が袈裟斬りの一撃を浴びせた。
「はっ!」
ガクンとリュゼリアのシールドゲージが減った。
「くっ!」
そして琴音は深追いせず、下がって剣を正眼に構えた。
決闘システムには制限時間がある。十分経っても双方のシールドが七割減っていなかったら、シールドの残り残量が多い方が勝つ。
まるで対戦ゲームだな。
ただ……決闘システムには落とし穴があるのだが、それは言わない方がいいだろう。
とにかく時間制限があると言うのは、最初にゲージを減らした方が精神的に有利だ。
「はあっ!」
リュゼリアが舞うように双剣を振るい、時間差をつけて琴音に斬撃を浴びせた。
対して琴音は待ちの体勢だ。
琴音はリュゼリアの右の剣を避け、左の剣を弾いた。
「くっ!」
「ふっ!」
そして琴音は隙が出来たところに踏み込み剣を振るうが、それは既に一度見せている。
「甘いっ!」
リュゼリアは右の剣で琴音の斬撃を受け止めた。
琴音は両手で振るっているのに、リュゼリアは片手だ。デーモンの圧倒的なフィジカルの強さか。
リュゼリアは右の剣で受け止めながら、体勢を立て直し、左手の剣を上段に掲げた。
「スラッシュ!」
「クイックステップ」
琴音の体が掻き消えるように、後ろに下がった。
そして再び正眼に構える。
「くっ! 仕切り直……」
「クイックステップ!」
リュゼリアがぼやいた瞬間、琴音が動いた。
「はっ!」
「ぅっ!」
琴音の気合いの乗った掛け声は、フェイントだった。
一拍ずらすことでリュゼリアの防御が先に動き、強引に後の先を取り、相手の剣の隙間を突くようにシールドを削った
そして琴音は再び間合いをとって、正眼の構えになった。
静まりかえるコロシアム。
全員が琴音の技量に圧倒されていた。
いくらリュゼリアが強かろうと、前世から受け継がれた技量があろうと、浄土世界で修行した琴音に届かない。
もう残り時間は半分。
リュゼリアのシールドゲージも半分。
対して琴音のシールドゲージは満タンだ。
「ふぅぅ……」
琴音が息を吐く。
そして琴音が一歩踏み出した瞬間、リュゼリアが動いた。
「ツヴァイ・カッター!」
二つの剣が銀色に光って弧を描いた。
段差をつけた二つの斬撃が弧を描き、目にも止まらない速さで琴音に迫る。
琴音は上半身を反らして避けつつ、剣を横薙ぎに振るった。
またもやリュゼリアのシールドが削れる。
だが、リュゼリアはシールドを削られつつも、強引に双剣を振り上げ、体勢が悪い琴音に向かって剣を振り下ろした。
「ツヴァイ・ストライク!」
双剣が銀色に光り、高速で撃ち下ろされる。
琴音は横に身を投げ出すようにかわしつつ、回転しながら、受け身を取り、勢いのまま立ち上がった。
そこへリュゼリアの突きが襲いかかった。
「はぁぁっ! ニードル・スラスト!」
突きは一発だけじゃなかった。
両手で交互に突きを繰り出すが、琴音はことごとくよけ、ふっと身を屈めると、そこから必要最小限の動きで剣を斬り上げた。
「バーティカル・スラッシュ! スウィープ・ブレード!」
リュゼリアは振り下ろしと横薙ぎのスキルを、間髪入れず無理矢理放った。
振り落としの斬撃が途中で横薙ぎに変わる。
通常なら有りえない。構えや体勢、何より腕の角度がおかしい。そんな使い方をしたら腕が壊れるぞ。
俺だって連続でスキルを繋げる時は、こんな無理なことはしない。
デーモンの強靭な肉体を持っているからこそできるんだ。
まさに電光石火の二連斬撃。
普通なら避けれないだろう。
しかし琴音の動きはそもそもフェイクだった。
斬り上げの動作を途中で止め、身をかがめたままリュゼリアの動きを見極めていた。
横薙ぎの斬撃が、交差する瞬間、琴音の剣がリュゼリアの双剣を上に弾いた
リュゼリアの体勢が崩れたところに琴音の剣が振り下ろされた。
「スラッシュ!」
リュゼリアはなすすべもなく、琴音の斬撃をくらい、シールドが一気に九割まで減ってた。
「ま、まいった……」
対して琴音のシールドは十割。完封だった。
「ふぅ。約束は知ってる?」
「あぁ。後で秀一とやらともう一戦するのだな」
「うん」
「わかった。敗者は勝者の言うこと聞くのみ」




