第178話 ラブコメ編 告白
昨日見学に来たクラスメイト達が少しよそよそしかった。
「なぁ、早川」
そんな空気の中、安西君がいつもと変わらない様子で話しかけてきた。
「どうした?」
「いや、お前らいつもあんな稽古をしてるのか?」
「昨日はちょっと特別だよ。御影先輩が来ていたし、見学者もいたからな。いつもより気合が入ってたんだよ」
「そうなんだ。体、大丈夫か? 近藤さんも」
「なんとかな」
そう言って俺は左手を上げた。
回復の呪符によってもう治っているけど、偽装のために包帯を巻いている。
「そうか。それにしてもお前、強いんだな」
「昨日ボコボコにされたのを見ただろ」
「あれは剣道と違うんだよな?」
「剣道だったら反則のオンパレードだよ」
「おはよう」
そこへ井町さんがクラスに入って来た。
「……不潔」
井町さんはそれだけ言って、横を素通りして行った。
「あちゃぁ。お前、琴音ちゃんにいつもあぁやって、手当てしてもらってるのか?」
「普段はあんなに怪我しないよ。うーん、昨日は結構丁寧だったな。いつもはもっと適当なんだけど」
「やっぱりいつもじゃねぇか! なんて羨ましい」
「いやいや。めちゃくちゃ痛いんだぞ」
今度は小竹君がクラスに入って来た。
「おはよう……くっ!」
俺を見るなり思いっきり睨まれた。
「まぁ、急にカラオケ誘ったり悪かったな。また遊びに行こうぜ」
「あぁ! 俺達も水曜日は休みになったんだ」
「お! いいじゃん!」
「なんか、学校に合わせてくれたみたい? もっと青春しろってさ」
それだけではない。なぜかまたお小遣いがアップして、スマホまで買ってもらえた!
連絡も入れずにサボっていたからな。心配かけてしまった。
そして琴音と夜遅くまで話し込んだり、一緒に協力ゲームをやりすぎて、母さんにスマホを没収されそうになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
放課後、陰陽局から連絡が来たので、スマホで確認していたら、琴音の姿が見当たらない。
「琴音を見なかったか?」
部活に向かおうとしていた安西君に聞いてみた。
「近藤さんなら、さっき教室を出て行ったよ」
「どこに行ったかわかる?」
「さぁ……俺が知るわけないだろ」
「屋上よ」
井町さんが横から声をかけてきた。
その顔は何か言いたげだったけど、すぐに目を外された。
「え?」
「だから屋上よ。少し前に、小竹君が告白するって言ってた」
胸の奥がざわついた。
嫌な予感がする。
もし琴音が告白を受けてしまったらどうしよう。
俺がグズグズしていたから! 勇気がなかったから!
「早く行けば? 行ってどうなるわけでもないけど……」
「ありがとう!」
俺は屋上に急いだ。
でも行ってどうする?
告白の邪魔をするのか?
それとも割り込んで告白するのか?
色々な考えや思いがまとまらないまま、俺は屋上へ続く階段を上がった。
すると屋上に出るドアが少しだけ開いていた。
「近藤さん。俺、あなたが好きです! 付き合って下さい!」
小竹君の声だ。俺は慌ててドアの内側に張り付いた。
「ごめんなさい。好きな人がいるんです」
それを聞いて、俺の心臓が跳ね上がった。もし俺じゃなかったら……
「そ、そうか……」
「じゃあ、私はこれで……」
「なぁ! やっぱり俺じゃ駄目か?」
「ごめんなさい」
「っ! 迷惑かけてごめん!」
足音が近づいてくる。
隠行の術……間に合わない!
俺はドアからとっさに離れた。
「……早川! ……お前、男を見せろよ」
俺に気づいた小竹君は、それだけ言って階段を駆け下りていった。
男を見せろか……
息が荒くなる。息ってどうやってするんだっけ……
苦しい。心臓が爆発しそうだ。
それでも俺は一歩前に踏み出し、ドアを開けて屋上に出た。
「……え!? 秀ちゃん!? い、今の……聞いてた……?」
琴音が目を見開いて驚いていた。
琴音は誰が好きなのか、俺にはわからない。
俺じゃないかもしれない。でも……勇気を出すんだ!
俺と琴音は、幼稚園の頃から今日まで一緒に過ごしてきた。
時には喧嘩もしたし、口を聞いてくれない時もあった。
でも最後は仲直りできた。
琴音なら大丈夫。そんな根拠のない考えがどこかにあった。
幼馴染だから、ずっと側にいたから……当たり前すぎて気づかなかったんだ。
俺はずっと琴音のことが……
「琴音。俺……」
「うん」
「俺、琴音のことが好きだ! 幼馴染でずっとそばにいたから、最近まで気づけなかった!」
「秀ちゃん……」
「でも、やっと気づいたんだ! 俺は近藤琴音が好きです! 付き合ってください!」
「はい……喜んで! 私も秀ちゃんが……早川秀一が好きです!」
俺と琴音は一歩ずつ歩み寄って抱き合った。
「遅れてごめん」
「うん。いいよ。でももう少し遅れたら私……」
いったいどうなってたんだ? 我慢の限界って……
「我慢できなくて、私から告白してたよ。でもやっぱり秀ちゃんから告白されたかったの!」
「我慢ってそれのことだったのか……」
肩の力がドッ抜けた。
「なんだと思ったの? あ~でももう一つ、もう我慢できないのがあるよ」
「え? なん……」
俺は琴音にキスされた。
唇と唇が重なるくらいの軽いキスだったけど、心臓が飛び出そうになった。
「次は秀ちゃんからして欲しい。もっと雰囲気あるところで……」
「い、今のも十分青春っぽいけど……」
「そ、そうかも。でも私はわがままだからね!」




