第177話 ラブコメ編 破廉恥な手当
「秀ちゃんの仇は私が打つ!」
少しキレ気味の琴音が御影さんに挑んだけど、俺と同じくボコボコにされた。
「感情的になり過ぎ」
御影さんにそう言われた琴音は、悔しそうに道場の端にいる俺の元へやって来た。
脇腹を押さえている。早く回復の呪符を貼らないと。
「お前ら二人はまだまだだな」
父さんが湿布に偽装した回復の呪符と、包帯を持ってきてくれた。
「御影。しばらくこっちにいられるか?」
「いいえ。出たい授業があるので戻ります。ゴールデンウィークなら来れますよ」
「ではゴールデンウィークに頼む。あ、彼氏と予定あった?」
「セクハラです! 彼氏いませんが何か?」
「おっとすまんすまん。ゴールデンウィークにこいつらの稽古つけてくれ。今度いい奴紹介するから。なかなかイケメンな奴が一人仕上がってきている」
「絶対ですよ?」
「それじゃあ、ウォーミングアップはここまでだ。続けてやれるな」
「はい」
父さんと御影さんの話を聞きながら、俺と琴音はお互いに手当を開始した。
「琴音。どこから貼る?」
「まずは秀ちゃんからだよ。傷むでしょ」
実は痩せ我慢していたので、琴音に押されてしまった。
「じゃあお腹から」
「ん。脱いで」
俺は胡坐をかいたまま稽古着をめくると、琴音が回復の呪符を俺のお腹に貼り、抱きつくように背中に手を回して包帯で固定してくれた。
「スンスン。なんかクラクラするよぉ。次はぁ?」
「おい。大丈夫か? やっぱり琴音から……」
「ううん。大丈夫。次は?」
「左手の甲」
琴音は俺の左手に呪符を張って、同じく包帯で固定してくれた。
なぜか琴音の息が荒い。なんか獲物を見るような目で俺を見てるんだけど……
「今度は琴音の番だな」
「私は右脇腹だよ。ここだと恥ずかしいから手を入れて」
「お、おう」
俺は呪符を張り付けようと、琴音の帯を緩めて、稽古着の中に手を……
「おいっ! お前ら! 人目も憚らず何をやってるんだ!」
俺の頭に父さんのげんこつが落ちてきた。
「ぐえっ」
「破廉恥過ぎ」
一戦終えた御影さんから、まるでゴミを見るような目を向けられた。
「さっさと保健室に行け! そっちで手当をしろ。気をつけろ、馬鹿野郎が!」
御影さんの視線におびえていたら、父さんに一喝された。
「は、はいっ!」
「あわわっ! ごめんなさい!」
琴音も慌てて稽古着を直して立ち上がった。
「いっ……っ!」
「琴音!」
「秀ちゃん……背負って……」
琴音が上目遣いに見上げてきた。
「お、おう」
俺は琴音を背負いながら、ふとクラスメイト達がいた場所を見ると、もう誰もいなかった。
御影さんからまた冷たい目線を感じた。
「お友達は帰ったみたいよ。二人ほど死んだ目をしてたけど、あなた達、酷すぎない?」
「……どういうこと?」
「自分の胸に聞いてみるのね」
御影さん、それだけ言うと踵を返して戻っていった。
やっぱり小竹君は琴音を狙っていたのか。
「秀ちゃん。私、御影さんより、その……あると思うよ?」
「な、なにが?」
「んーぎゅう……いったっ!」
「お前馬鹿だろ……」
「うー。後でわからせてやる!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
保健室に入るなり、琴音は帯を外して稽古着をはだけた。
「秀ちゃん。呪符だけじゃなくて、回復の術が欲しいな」
琴音の脇腹が少し青あざになっていた。
それよりも……琴音のおへそが……。袴がずれてちょっとだけ見えるのは……
「不潔!」
ガララっと扉が開くと、御影さんが入ってきて、俺の頭に木刀を落とした。
「んがっ!」
二度目だぞ! 俺の頭にも呪符が欲しい。
「心配になって来てみれば! 変態は出ていけ!」
「いや、だって手当が……」
「私がする! 先生も先生よ! いくら仲が良くたって、もう中学生でしょうに! 二人共、もう気を付ける年齢なのよ!」
「う、確かに……」
「私は別に……」
「近藤さん!」
「ひぃ! 気をつけます」
「わかったら、あんたはとっとと出て行きなさい!」




