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第173話 ラブコメ編 幼馴染と放課後デート

 ファーストフードに着いた俺と琴音ちゃんは、一緒にジュースとポテトを頼んで席に着いた。

 窓際の席だったので、外を見ると俺達と同じように部活に入っていない生徒が下校していた。


「ねぇ。秀一君」


「ん?」


「二人っきりになるのって久しぶりだね」


「あーそうかもな」


 小学校の頃は友達とみんなで遊ぶことが多かった。

 中学に上がってみんな部活に入り、集まって遊ぶこともなくなってしまった。

 それが少し寂しくもあるけど、俺には琴音がいるから一人ではない。

 いつもそばにいる幼馴染……のはずだったんだけどな。

 今の俺は平気を装っているが、ドキドキしっぱなしだ。


「今さらだけど……さっ。秀一君の制服……似合ってるよ」


 琴音ちゃんが視線をテーブルに落としたまま、いきなりとんでもないことを言いだした。

 顔を真っ赤にしたまま泳いでいた視線が、上目遣いになって俺ををチラっと見た。

 目が合った瞬間、心臓が大きく跳ねた。

 

「こ、琴音ちゃんも似合ってる。なんか……可愛い……」


「ええっ! それは不意打ちすぎだよ! 秀一君も……その……かっこいいと思う……よ」


「そ、そうか?」


「うん。……今日の私達、なんか変……だね……」


「そうだな……」


 どっちも喋らなくなってしまった。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 ジュースの紙コップを両手で持ってみたり、ストローをぐりぐりといじってみたり、とにかく落ち着かない。

 さっきまで聞こえてきた、店内のしゃべり声が全く聞こえなくなっていた。

 

 琴音ちゃんも俺と同じで、俺のことを異性として見ているのだろうか?


「ねぇ。秀一君」


 琴音ちゃんの声がやけに大きく聞こえた。

 もうびっくりしすぎて心臓が飛び出そうだった。


「ん?」


 それでも俺は強がって、平気なふりをした。


「みんな部活に入ってさ、楽しそうだなぁって思った」


 琴音ちゃんがポツリと呟いた。

 落ち着こうとして、話題を変えたのかもしれない。


「そうだな。俺達には無理だなぁ」


「青春と言えば部活! ってイメージもあるんだよね」


 琴音ちゃんはポテトを摘まんで、ピコピコと動かしたあと、ポリポリと小刻みに食べていった。

 なんかリスみたいで可愛い。


「青春か……今もそうじゃないか? 俺と琴音ちゃんで青春を作っていこう!」


「くっさっ! 秀一君のそのセリフくさすぎだよ」


 琴音ちゃんがケラケラと笑い出した。

 さっきまでの気まずさが、その笑いと共に、どこかへ飛んでいった。

 いつもの俺達だ。


「でもいいね。最高だよ」


「そうだな!」


 俺も琴音ちゃんも、何がそんなに面白いのかわからないけど、しばらく笑っていた。

 笑いながら、なんか泣きそうになった。

 それでお互い緊張が解けたのか、その後はいつも通りに話すことができた。


 気づいたら外がオレンジ色になっていた。

 もうこんな時間か。


「さて……そろそろ帰るか」


「そうだね。ちょっと怖いけど……」


「絶対怒られるよな」


「うぅ。その時は庇って?」


「琴音ちゃんから誘ったのに?」


「うっ!」


「冗談だよ」


「ぶーぶー!」


 琴音ちゃんが口を尖らせて立ち上がると、俺は琴音ちゃんのトレイを引き寄せて、俺のトレイにまとめた。


「ありがと」


 琴音ちゃんが先にドアに向かうと、俺はトレイを返しながら琴音ちゃんの後ろ姿を見た。

 スカートに包まれた可愛いお尻を思わず見てしまい、なんとも言えないドキドキと罪悪感を感じてしまった。


 店を出ると、部活の見学に行っていたクラスメイト達とばったり出くわしてしまった。


「お前ら習いごとがあったんじゃないのか?」


「今日はサボりだよ」


「うー。これから憂鬱《ゆううつ》だよ」


「何とかなる! 俺が謝る!」


「私も謝る! 二人して謝ろう!」


 俺達はポカンとしているクラスメイト達を後にして、どうしたら穏便に済むかについて話しながら帰った。

 琴音と一緒なら、なんでも乗り越えられると思った。

 サボりは良くないけど……

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