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第164話 魔族視点 都市ゼルガードの現状

「敵襲! 敵襲だ! 人間が攻めてきたぞ!」


 カーンカーンカーンと鐘楼《しょうろう》の鐘《かね》が鳴り響き、伝令係のデーモンが空を飛びながら、何度も叫んでいた。


 俺の名はカイバーン。アークデーモンだ。この都市ゼルガードの南側の防衛を任されている。

 俺は詰所から部下を連れだって、南門へ急いだ。

 

「カルミラ様は!?」


 部下の一人が不安そうな顔で聞いてきた。

 

「知らん! どうせまだ寝ているんじゃないか!?」


 この都市には三つの勢力がある。

 そのうちの一つ、『竜の牙』で一番強いデーモンがカルミラだ。

 しかし寝てばかりいる怠け者でもある。

 起きている時も、『何か忘れているから思い出したい』とか言って、遠くを見ているか、ひたすら剣の稽古をしている。

 なんの面白味もない女だが、魔力も剣術も桁外れの化物だ。

 

「こういう時にこそ、先陣に立って欲しいものだな!」


 俺達が南門へ急ぐと、避難を開始した女子供達とたくさんすれ違った。

 彼女達が向かうのは大聖堂。そこはかつて人間達が神を崇めていた場所だ。

 

 俺達デーモンにとって居心地がいい場所ではなかったが、今は俺達を助けてくれた、愉悦之神を崇《あが》める場所になっている。

 デーモンが神を崇める。おかしい話だが、愉悦之神は俺達デーモンや亜人のモンスターを救い、導いてくれた。

 だから俺達は愉悦之神を崇めることにした。


 南門へ急ぐにつれて、仲間達が次々と駆けつけてきて、門を出る頃には総勢百人を超えた。

 

 遠くに馬に乗った人間が……四十人くらいか?

 空を飛ぶ化物に乗った人間が……こっちは十一人か。

 今出張ってきた数の半分。

 しかし相手はここまで来た人間だ。

 俺は享楽之神に授かった鑑定スキルを発動させた。

 

「むぅう」


 全員レベル四百以上の化け物だらけじゃないか。 

 奴らはこの都市を滅ぼすつもりで攻めてきたに違いない。

 

 俺達の平均レベルは三百程度。

 これでも愉悦之神の恩恵により、急激に強くなったが、それでも厳しい。

 奴ら人間は、レベル差があっても数の差があっても、俺達をいつだって圧倒してくる。

 あいつらは俺達にとって処刑人の集まりだ。

 俺達は何度も痛い目にあってそれを学んだ。

 だから俺達は魔王に離反して、この都市に集まり、そして愉悦之神に保護された。

 

 そしたらどうだ?

 

 俺達デーモンや亜人に、今までとは別の感情が生まれ始めた。

 今まで本能のまま人間を敵視して、殺戮の限りを尽くしてきた俺達は、感情を知り、人間への敵意がなくなった。

 そして俺達は敵視してきた人間のような暮らしをするようになった。

 それでわかったんだ。俺達にも守るべきものがあると。

 

「おい。マーガス。カルミラの馬鹿を叩き起こしてこい!」


「了解!」


「その後、盟主とついでに『竜の爪』と『竜の角』に伝令だ。女子供を連れて逃げろ。俺達が時間を稼いでいる間に北側から脱出しろと」


「そっちも了解です!」


「お前もそのまま逃げろ」


「何を言っているんです? 俺は戻りますよ」


「……お前が戻ってくる前に、全滅しているかもしれんぞ」


「そんな事態になる前に撤退してください。一緒に逃げますんで」


 マーガスを行かせた後、俺はゾクっと寒気がして、人間達の方へ振り返った。

 なんという凄まじい魔力だ。あれは人間が出していい魔力なのか?

 俺達デーモンですら遠く及ばない。

 レベルが俺達より上だとか、そういう理由では到底説明できない。

 

「ゲイル、ゴードン、武器を置いて一緒に来い!」


 俺は返事を待たずに武器を外して飛び立った。

 決死の交渉。それしかない。

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