第162話 しろプロ始動! 式神達、VTuberデビュー
陰陽局のVTuber事務所の名前は「しろたまプロダクション」。略してしろプロだ。
しろプロが稼働し始めて、最初に話題になったのは俺の式神達だ。
みんな美少女だからな!
と言っても、俺達の配信で初登場してた時から、アバターでしか見られていないから、素顔は見られていないけど。
その時のアバターに似せて、しろプロで新しく2Dと3Dのアバターが作られた。
だいぶお金をかけたみたいで、2Dアバターでも稼働箇所が多く、ぬるぬるとなめらかに動く。
式神達は浄土世界から地球に降りて、陰陽局の配信ブースで活動している。
それなら俺達も地球に戻れるのではと思ったんだけど、『グランドクエストをクリアしたら地球に戻れる』という、享楽之神による一方的な契約が邪魔をして無理だった。
これは妙光如来様でも介入できない、人と神との契約なんだそうだ。
式神のVTuberデビューだが、誰かと主従関係にある者が人気が出るのだろうか?
そこが問題だった。
十二姫将は俺達同じく、天部見習い。むしろ浄土世界に先に長くいる分、俺達より先輩だし深い部分にいる。
推しを応援するエネルギーを得て、パワーアップしたいところだ。
ただしリスナーを騙したり、嘘をつくのはだめだ。
妙光如来様が許さないし、最悪浄土世界から追放されるだろう。
俺達が配信しているのは、現実で起こっていることだけど、享楽之神による強制力で、視聴者にはオンラインゲーム『ミセリオン』のゲーム配信に見えている。
つまり式神は、『ゲーム内でてくる陰陽師クラスが召喚する妖怪』に見えているということ。
実際のプレイヤーではなくNPCと判断されているのではないか?
実際に防衛省の職員にアンケートを取ったところ、NPCだと思っていたと結果が出た。
ならば誤解させたままにしておけばいい。
そこで陰陽局が隠れ蓑にしているマスメディア系の会社で、『デビューした白夜は、宣伝のためにミセリオンとコラボしていた』と噂を流した。
公式コラボではなく、視聴者の間で口コミで広がるように仕込まれたなど、適当にでっち上げたのだ。
式神達が直接嘘を言っているわけではない。いわゆる抜け道を使った裏技だ。
まぁ元々陰陽師が表舞台に出ないように、情報を操作する会社でもあったので、そこら辺は得意分野だろう。
そんなわけで、しろプロからデビューした式神達は、俺とは関係ない存在として認識された。
異世界で俺が召喚しても、視聴者からは高度AIでしゃべるNPCに見えるわけだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
式神達の配信を見てたら、白夜は配信でもポンコツだった。歩いたら転ぶだけじゃなくて、マイクを倒すわ、翼でも後ろの物を引っかけるわでドタバタしている。
翼は消すこともできると言うと、リスナーから初めから外しておけと突っ込まれていた。
リスナーには見えないところでも翼をつけている、ちょっとおかしなコスプレイヤーだと思われているのだろうか……
蒼蓮は意外にも、お仕置きされたいとか言わなかった。お仕置きされたいのは俺だけらしい。
ただ、ちょっとおバカな一面があるので、愛嬌があって可愛いと褒められていたな。
炎華は人間を見下しているからな……
そもそも配信でリスナーを楽しませようとしていない。
そんなわけで自分のチャンネルを持っているが、主にコラボ企画のMCを担当したり、しろプロのニュースやイベント情報を配信している。
一応クールなお姉さんとして、人気はあるみたいだ。
対して煌姫は優しいお姉さんなので、癒されたい人に大人気だ。
トークも上手くて、癒し系ASMRもやってる。
ASMRといえば、夜宵と夢月だ。
二人は常にコンビで配信していて、生意気なクソガキASMRで、一部の層に人気が出ていた。
ASMR以外でも、クソガキコンビの途切れないマシンガントークの掛け合いが面白かった。
そいてやっぱり月華は謎だ。フォロワーに著名人が多いし、ゲストに有名なインフルエンサーが来たりして、とんでもないことになっていた。
陰陽局の偉い人だけあって、コネクションとかもすごいんだな。
紅羽はほとんどしゃべらない。ゲーム実況しても、ぼそぼそと短い言葉が多い。
リスナーはダウナー系ロりキャラだと認識されて、人気はそこそこあるみたいだ。
最後に問題児なのが翡翠だ。
一見可憐で清楚に見えるんだけど、言葉の節々にさりげなくエロを入れてくる。
深夜配信のアーカイブはピー音だらけだ。
いつかアカウント削除されるんじゃないかな?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「緊急対策会議よ!」
いつものように、ギルドの食堂で琴音と朝食をとっていると、アリサがやってきて、トレイをテーブルにガチャンと乱暴に置いた。
「秀一君の式神達! 人気ですぎよ!」
「それはそれでいいんじゃないか? 同じ事務所だし、プロデュースしたのはアリサだろ?」
「そうなんだけど! 大成功なんだけど! その分後から再デビューする私がおまけみたいじゃない!」
アリサは浄土世界の時の流れが違う場所で修行をした。
その時式神達と一緒に暮らしていたから、式神達と仲がいいし、彼女達のことをある程度知る機会があった。
それがプロデュースに役に立ったのだろう。
「意外とみんな喋れたな」
「喋れたなどころじゃない! みんな上手すぎ!」
「説法の練習もしてたらしいぞ」
「くう。油断したわ! 双子のざぁこASMRとか、白夜の癒し系ASMRとか! あれはもうプロレベルよ!」
「確かに白夜のは癒されるな」
「秀ちゃん?」
「秀一君?」
二人とも無表情でこっち見るな!
まじで怖いから。アニメだと目のハイライトがないシーンだな。
「普通に上手いぞって話だよ。だけどさ。アリサの方が何十倍も上手いと思うぞ」
「……そう? 本当に?」
「俺はそう思ってるよ」
「ふぅん。そうなんだ?」
「それに式神達はまだ登録者数少ないだろ」
「それでも初日で五万人超えてるわよ」
「アリサなら、リスナーを引き連れて初日で、百万人超えるだろ?」
「ふふん。まぁね!」
「なら問題ない。俺が保証する」
「またかっこいいこと言っちゃって。それだから諦めきれないのよ」
琴音に思いっきりつねられた。




