第155話 アリサ視点 誤魔化せない気持ち
私はアリサ。百合営業中のアリサよ。
まどかとスキンシップを取ってみたけど、やっぱり微妙。リスナーにはウケがいいけど、やっぱり私は男の子じゃないとダメみたい。
神殿に来るまで、気づけば秀一君を目で追っていた。
琴音ちゃんと手を繋ぐ度に、胸が締め付けられた。
二人の強い繋がりを見て、一度は心が折れた。
そこで二人から離れることができたら、きっと失恋できた。
でもこのパーティーにいる限り、それは無理だと気づいたの。
それでも忘れようと努力をしたよ。まどかの提案にも乗ってみた。
でもだめだった。
私はまだ引きずっている。まだ秀一君のことが好きなんだ。
こんなに近くにいるんだから、忘れることなんてできないよ。
それに秀一君も悪い。私にも優しくするから。戦いで私を助けるから。私を守ってくれるから。
さっきだってそうだ。
転んだ私をすぐに助けてくれた。
抱きかかえられた。
戦闘中なのに触られて熱くなった。
近くで息遣いを感じて鼓動が速くなった。
忘れたいのに忘れられない。
離れたいのに離れられない。
そして絶対届かない。
辛いよ……苦しいよ……
やっぱり秀一君を好きになるんじゃなかった。
でも……どうしようもないじゃない……
ええい! これからボス戦よ! 一旦気持ちを切り替えないと!
神殿の奥に行くと、大きな丸いホールがあった。壁には小さな石像がずらりと並んでいてちょっと怖い。
まるで小さいドーム球場の観客席に、石像が並んでいるみたいね。
その中央には大きなモンスターが鎮座して目をつむっていた。
大きいわね。身長五メートルくらいあるんじゃないかしら?
上半身は女性、下半身は蛇。背中から何匹もの蛇が生えていて、腕が六本もある。
上半身はちゃんと服を着ているわよ。インドの踊り子が着てそうな衣装ね。
それにしてもこの森のモンスターって、腕が何本も生えているのが多いわね。流行っているのかしら?
鑑定スキルを発動すると、『ナーガ・レベル666』不吉な数字ね。
ホールの奥側の壁にへこみがあって、そこに聖杯っぽいコップが飾られているわ。
ナーガはまるで聖杯の守護者ね。
私達はあの聖杯を手に入れて、聖水を作らないといけない。
ここは石像達に囲まれている。逃げようにも、 あの数の石像にビームを撃たれたら、蜂の巣にされちゃう。秀一達はちょっとは持つと思うけど、私のシールドなんて一瞬でなくなっちゃうわ。
聖杯でこの神殿や森を浄化すれば、きっと石像達は撤退していなくなるはず。きっとそれが、このクエストのクリア条件なんだわ。
まぁ結界の内部から石像達に攻撃できれば楽だけど、試したらそれはダメだった。
結界に阻まれちゃったのよね。
琴音ちゃんって毎回過激でずるいこと考えるわ……。
それが戦いのセンスなのかも知れないけど。
「アリサよ。気をつけよ。何なら下がっていても良いぞ」
「なに言ってるのよ。私だってここまで来た冒険者よ」
「そうだったな。ただここでは回復の術はおろか、桃饅頭も効果がないのじゃぞ。きっと身代わりの呪符も効かぬじゃろう。気を引き締めるのじゃ」
「わ、わかっているわ!」
「琴音。命優先でいくぞ」
「うん」
「「シールド・オン!」」
秀一君と琴音ちゃんのシールドが、久しぶりに表示された。
バーがグングンと伸びていき、私のゲージを追い抜いた。
……え? ゲージの右に×2って表示されたんだけど! ええ! ×3……×10……数字がどんどん増えていって24になった所で止まった。
な、なんなの……
私の24倍もシールドゲージがあるってこと!?
シールドは物理攻撃と魔法攻撃の両方を防いでくれる。
物理系のステータスだけじゃなくて、魔法系のステータスが高いと、それだけシールド値も上がるのよ。
秀一君と琴音ちゃんの魔力と呪力が桁外れなんだ。
浄土世界でどんな修行をしてきたのか知らないけど、あの時からなんか、人とは思えない気配というか、存在感がするのよね。
「「呪力解放!」」
秀一君と琴音ちゃんって、デーモン襲撃の時、常に式神を出しっぱなしにして、呪力の底上げをしていた。
膨大な呪力を常に制御するのは疲れるから、式神を出していない時は、セーブするために呪力を封印していたのよ。
あ、狐鈴さんは常に出してるから例外みたいね。
それにしても。なんて呪力なの。
私もかなり呪力が増えたけど、桁が違う。
それになんだろう。この透き通るような綺麗な呪力……いや、超自然エネルギーは……
気になったので鑑定スキルをかけてみる。
……測定不能。なにこれ?




