第156話 激闘ナーガ
「オン・アグニ・カドガ・カンダ・ソワカ」
俺は刀に炎を付与すると、まるで真っ赤なビームソードのようになった。
有り余る呪力を込め過ぎたか……
外との繋がりが断たれているから、天焔業刀を召喚できないから、今はこれで戦うしかない。
隣にいる琴音の刀も、プラズマが帯びて真っ白だ。
俺と琴音の呪力に反応したのか、ホールの中央に鎮座していたナーガが、目をゆっくりと開いた。
この森のモンスターは獣人の幽霊ばっかりだったけど、こいつは違う。
顔が人間の女性だ。どこかの神話に出てくるやつに似ている。
きっと邪神側のモンスターなのだろう。
「シャアアッ! 我を目覚めさせるとは……貴様ら盗人だな」
その声は聞いているだけで不安になる。
まるで声自体が呪詛のようだ。
「逃しはせぬ……皆殺しだ!」
ナーガのだらりと下がっていた腕がピンっと伸びた。
その六本の手には紫色に光る曲刀が握られていた。
あれに切られたら呪われそうだ。
ズリズリズリっと地面の這う音が聞こえたかと思ったら、もう目の前にいる!
速い!
左から襲ってきた三つの曲刀を避けると、すぐさま右から三つの曲刀が襲ってくる。
合計六本の曲刀を全て捌ききるのは厳しい。
何本か受けてしまい、シールドがゴリゴリと削られた。
琴音がカバーに入ろうとしたが、背中から生えた蛇――コブラが琴音に向かって毒を吐いた。
「むっ!」
琴音は飛びかかってきた毒によって、近寄れない。
ナーガは俺に追撃しようとしたが、狐鈴とアリサさんの攻撃魔法によって押し戻された。ナイス援護だ!
しかしナーガは炎や光弾をくらったはずなのに、ピンピンしている。
左右の曲刀が煙を上げている。曲刀で弾いたのか!
「やあっ!」
琴音がナーガの背後から、再び斬りかかった。
ナーガはコブラの毒で牽制するが、琴音は何も考えずに突っ込んだりしない。
「クイック・ステップ!」
移動スキルを発動すると、残像を残して加速した。
「ダブル・ジャンプ!」
さらに小刻みに二回ジャンプして、コブラの目の前にまでくる。
「月環刃!」
琴音の方が弧を描き、一匹のコブラを斬り飛ばした。
「円月斬!」
さらに返す刀でもう一匹を斬り飛ばした。
「エア・スキャフォールド!」
コブラが反撃しようとした瞬間、琴音は足場を作るスキルを使って、とんぼ返りに後方に下がった。
怒り狂ったコブラが、琴音の着地を狙って毒を吐いた。
「ストーン・ウォール!」
しかし琴音は魔法で石の壁を作って、飛びかかってくる毒を防いだ。
その間俺も黙って見ていたわけじゃない。
「オン・ヒマ・シタ・ソワカ!」
俺はマントラだけで、氷の槍を作ってナーガ目がけて放った。
ナーガはまたしても曲刀で弾き、空いてる曲刀で斬りかかってきた。
俺は刀で曲刀を弾きながら、別の曲刀を避けるが、攻撃に回る余裕はない。
だがそれでいい。俺はいわゆるタンク役に徹することにした。
チラっと琴音に目配せするとうなずいてくれた。
俺と琴音は近距離で戦いつつも目配せして、共に距離を置く。
その瞬間、狐鈴とアリサさんが強力な術や魔法を叩き込んだ。
いつもは俺と琴音のコンビネーションだけど、それを見ていた狐鈴とアリサさんが合わせてくれた。
俺と琴音は付かず離れずヘイトを稼ぎ、狐鈴とアリサさんの攻撃を繰り返していると、ナーガがブチ切れた。
「おのぇええっ!」
それはこっちのセリフだ!
俺も琴音もシールドがなかったらヤバかった。
シールドゲージが×24だったのが、今では×16まで減ってる。
本来近距離で戦う相手じゃないけど、後衛にヘイトを向かせるわけにはいかない。
「デルタ・ファイア!」
アリサさんが放った三つの火球が、ナーガの頭に直撃し、その後ろに生えていたコブラさえも吹っ飛ばし、ナーガの上半身が大きく仰け反った。
こいつはクリティカルヒットってやつだが、それによってヘイトがアリサさんに向くかもしれない。まずい……
「ジャアアアッ!」
ナーガが一回転して、俺と琴音に尻尾を叩きつけてきた。
「うおっ!」
「ちょっ!」
俺と琴音が下がってかわした瞬間、ナーガは身を縮め、ばねのようにアリサさんの元へ飛び跳ねた。
「しまっ!」
「えっ……」
だめだ……それはだめだ……
シールドなんて一瞬も持たなかった。
アリサさんのお腹にナーガの曲刀が刺さっていた……
「アリサアアアァァアア!」
俺の声がホール一面に鳴り響いた。




