第149話 不死の森へ
俺達は桃饅頭を食べながら休憩入れ、再び作戦会議に戻った。
「僕達は西側から」
「私達は東ね!」
「俺等は外周を探すよ」
「俺様は……適当に強い気配を探して喧嘩売ってくるわ」
各パーティーの侵攻ルートが次々決まっていった。
俺達は中央。というか中央が残されていた。一番辛そうなんだけど……
これって早いもん勝ちなのか? 適当すぎないか? 特に師匠。適当に強い気配を探してくるって……
ゲートってさ、今までの都市だと、だいたい端っこに設置されていたんだよね。
中央ルートが一番外れな気がしてならない。
「今回の俺達の目的は二つだ。一つはゲートを見つけること。もう一つはこの都市が使えるかどうか調査することだ。ゲートを見つけても安全が確保できなきゃ使えねぇ。最悪ムリターヴァナをすっ飛ばして、もう一つ先に進むことになる。ゲートが繋げられる距離がどれくいらか知らねぇけどよ」
確かに森は危険だ。どんなモンスターが潜んでいるかもわからない。
最悪森を焼き払って都市を丸裸にする必要があるかもな。
自然破壊は炎上しそうだけど。
「それと、ムリターヴァナは今まで以上に危険な場所だと、俺様の勘がそう告げている。ゲートが見つかったとしても合図はするなよ。ここに戻ってきてから情報を共有するんだ。どうせゲートを見つけても、俺達だけじゃどうにもならんだろ? もし見つからなかったとしても、三日後にはここに戻れ。再度対策を練る。でいいよね。結城ちゃん?」
「はい。それでお願いします」
え!? 今までみたいに、結城ちゃんはやめてくださいって言わない!?
そのことにみんな驚愕していた。
もう作戦のことなんて頭から吹っ飛ぶくらいの驚きなんだけど!
結城さんは本来とは別の意味で注目を浴びて、ちょっと狼狽えた。
「結城ちゃんはやめてください……」
そしてか細い声で言うと、顔を真っ赤にしてうつむいた。
「ごめんごめん。早苗ちゃん」
「それはもっとやめてください!」
結城さんが耳まで顔を赤くして声を上げた。
誰かがヒューっと口笛を吹いた。
それをきっかけにみんなワーッと盛り上がった。
なぜか師匠が両手を上げて勝利宣言している。
あ、結城さんが凄い顔して睨んでるんだけど……
「沖田さん。後で話があります」
「あ、はい」
師匠のやっちまった感が溢れる絶望的な顔を見て、吹き出しそうになった。
あんな顔をした師匠は初めて見たぞ。
顔に出たら絶対後でぶっ飛ばされるので、笑いを我慢してたら、アリサさんに微妙な顔をされた。
俺、そんな変な顔してたかな?
◇◆◇◆◇◆◇◆
俺達はテントを出して一泊し、次の日の早朝から出発した。
体力温存のため、エイを召喚して、地面すれすれの超低空飛行だ。
かなり神経を使うので、みんなには話しかけないでとお願いしてある。
「ねぇ。不死の森ってアンデットがいるかな?」
アリサさんが琴音に聞いた。
「ん~私が機動式神で見た範囲だといなかったよ。石像が動いてたかな」
「そう。良かったわ。敵は石像か……」
「絶対にいないとは言えないよ?」
「不死の森ねぇ……名前からしてアンデッドなのよねぇ」
「吸血鬼が根城にしてたのって、確か……死者の森だったっけ? 名前のバリエーションが微妙だね」
「死者の森がアンデットなら、不死の森はなんだろ?」
「不死になるアイテムがあるとか? そんな神話なかったっけ?」
「神酒じゃろうな」
今まで静観してた狐鈴が口を開いた。
「神々の聖なる飲み物じゃ。飲んだ者へ不死や活力を与えると言われておる。昨日食べた桃饅頭も同じように神の食べ物じゃな」
「すごいじゃない。じゃあ……」
「不死のなりそこないくらいはいそうじゃな」
「ぎゃあああっ! やっぱりいるじゃない!」
「お主もそろそろ慣れんか?」
「無理無理!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
エイから降りて森の中に入ると、今までとは少し違う雰囲気を感じ取った。
アマゾンの熱帯雨林が一番近いかもしれない。動画でしか見たことがないけど。
湿った土と苔の匂いがするし、うっすら霧も漂っている。全体的にじめじめしていて、気温も高い。
あちこちに川も流れていて、いきなり亜熱帯地方に紛れ込んだ気分だ。
しばらく進むと都市の入り口まで来たのか、樹木に埋もれた石像を見つけた。
インド神話に出てきそうな石像だな。
人の顔もあればジャガーや象の顔もあり、腕が四本や六本ある像、全身像から胸像まで様々だ。
「ねぇ……あれ……」
琴音が指差す方を見ると、小さな社があった。石でできた社で、巨木の根で飲み込まれそうになっていた。
「ひっ!」
アリサさんが小さな悲鳴を上げた。
社の中を見ると、小さな石板を抱えた白骨死体があった。




