第147話 森に飲まれた都市
都市ダムゼルのアストラルゲートは、後から到着した王国軍によって修復された。
ゲートの守りは、拓哉さんを初めとする復活したプレイヤー達が守ってくれるそうだ。
ここでしか存在できない状況だから、当然と言えば当然なのだろう。
ただ、早くして死亡したプレイヤーのレベルは低い。
そこで拓哉さんの元パーティーメンバーが残って守護することになった。
徐々に先に進むプレイヤーが減っていくのは不安になるな。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ダムゼルを出発して二日目、俺達はうっすらと残る街道の跡をたどって北上して行った。
これまでと同様に、移動手段は俺と師匠が召喚したエイと馬だ。
遠くに森が見え始めたころで、強い視線を感じた。
上空にいたら目立ちすぎる。狙い撃ちしてくれと言ってるようなものだ。
俺はエイの高度を下げて低空飛行にすると、馬に乗っているプレイヤー達から怪訝な顔をされた。
「どうした?」
元自衛官の斎藤さんが、代表するように声をかけてきた。
「嫌な視線を感じました。誰かがこっちを見ているかもしれない」
「視線を? 勘違い……じゃないな。早川が言うなら、そうなんだろうな」
「きっとアレのせいじゃないかな?」
琴音が前を指さした。
遠くの森……いや、あれは……
「……都市が森に埋まってる?」
遠くに見えた森は、最初は丘だと思った。巨木とまではいかないけど、それなりに大きな木々が生えている。
そして所々とびぬけて大きな木が生えているなぁと思ったけれど違った。あれは木じゃなくて塔だ。崩れかけた石造りの塔が、蔦に絡めとられていた。そして塔に寄りそうにように生えた木々に侵食されていたんだ。
塔だけじゃない。よく見ると大小様々な建物が蔦や苔によって覆われ、木々によって隠されていた。
そして薄い霧が木々の間を漂っていた。
都市全体が森に飲み込まれ、巨大な遺跡になっていたんだ。
「なんか嫌な感じがするよ」
琴音が腕で自分を抱きしめた。
俺も嫌な予感しかしない。
「そうだな」
「おう、おめぇら。一時停止だ! 休憩すっぞ」
隣で低空飛行しているエイの上から師匠が言うと、全員停止して休憩を始めた。
その間に俺と琴音、そして師匠が索敵用の機動式神を召喚して、森に向かって放った。
俺の視界が機動式神と同調して、上空からのものになった。
以前は梟型の機動式神を使ったけど、今回は距離があるので、新調した鷹型だ。
さすがは鷹型だけあって速い。どんどん森が近づいてくる。
木々の間に見える建造物。あれは巨大な仏像か? いや仏像に似た別のものだ。
思い出した。出発前に聞いた情報によると、リオネール王国とは別の宗教が信仰されていたみたいだ。
「あっ!」
いきなり撃ち落とされた。
「くっそっ!」
師匠もやられたのか、悪態をついていた。
いったい何があった。
最後に見たのは光だった。
琴音は!?
「私は大丈夫だよ。低空飛行してたからかな?」
やはり上空がまずいのか。
「……何あれ? とりあえず引き返すね。これ高いし」
そう。偵察用の機動式神は高い!
支給されてた物じゃないから、自腹なんだよ!
「琴音。地上からの接近は大丈夫そう?」
「うん。なんか大きな動く石像がいてね。槍みたいなのを持ってたよ。それが光るとレーザーみたいのを発射してた」
琴音は座りながら、左右に体を揺らしていた。
レースゲームで体が動いちゃうみたいな感じだな。
今琴音の視界はまだ式神と共有しているはず。
ほっぺをつついて、いたずらしようと思ったら、伸ばした手をはたかれた。見えてないはずなのに!
「秀ちゃん! イチャイチャは後で! 今集中してるんだから!」
狙われても大丈夫なように、回避行動をとりながら撤退しているのか。
「ごめんなさい」
師匠にすっごく呆れた顔をされた。
「年中発情期かよ。若いっていいねぇ」
師匠だって最近結城さんとイチャイチャしてるくせに!
「それよりまずいな。上空から接近するのはなしだな」
あのままエイに乗って接近していたらと思うとゾッとした。




