第144話 アリサの失恋。曇りかける
私はアリサ。アイドルVtuberのアリサよ。
それ以前に一人の乙女、土御門愛理沙なの。
月華さんの優しい説得によって、秀一君のことを諦める努力をしていた。
でも心のどこかで、もしかしたらワンチャンあるかと思っていた。
でも……もう無理。完全に心が折れちゃった。
諦めが付いちゃった。
秀一君と琴音ちゃんが消えたかと思ったら、数分もしない内に戻ってきた。
ホッとしたのもつかの間、私は二人の呪力を見て言葉を失った。
以前二人の呪力は、式神や沖田師匠と比べると小さかった。
でも今は違う。あの数分で何があったのかわからないけど、狐鈴さんに匹敵するほどの呪力になっていた。
しかも以前の呪力と質が違った。
以前は神聖な気が六割、妖気が四割だった呪力が、今は神聖な気が九割、妖気が一割になっている。
呪力の色というか質は、個性があって指紋のように一人一人違うと私は思っている。
でも二人の呪力はほぼ同じになっていて、絡み合っていた。
離れても細くなって繋がっている。
あれはもう切れない。私が入り込む隙なんて一ミリもなくなったんだ。
バババッと金の襖が次々と現れたと思ったら、秀一君の式神達が現れ、調伏された双子と共に、秀一君と琴音ちゃんにまで片膝をついていた。
何が起こるんだろうと見ていたら、沖田師匠が真田さんと御影さんを連れてやってきた。
あの呪力を感じたら、様子を見にくるのは当然よね。
「なんだありゃぁ……」
「沖田さん、秀一達の呪力ってあんなに大きかったでしたっけ……」
真田さんの声が少し震えていた。
「それに……あれって……まさか……」
御影さんも……というかみんな気づいているよね。
「あぁ。あれは神気だ。あいつらいったいどうしちまったんだ?」
「皆もアレにつられてきたのじゃな」
狐鈴さんがいつの間にかいた。気を取られすぎていたかな?
まぁ唐突に現れても人知を超えた存在だから、今さら驚かない。
「妙光如来様の扉を開いた気配がしたと思ったのじゃが……」
狐鈴さんが私に説明を求める視線を送ってきた。
「秀一君が呪文を唱えたら、秀一君と琴音ちゃん、それと双子の夢魔が一緒に消えて、戻ってきたら呪力が変わっていました」
「なるほどな。浄土世界で修行でもしてきたのじゃろう。あちらとは時間の流れが違うのかもしれぬな」
「浄土世界で修行だと……。悟りでも開いちまったか?」
「わからぬ。むぅ。まだまだじゃが、このままでは我の立場がないというもの……。アリサよ」
「はい」
「もうよいのか?」
きっと私の秀一君への想いのことだろう。
「えぇ。あれを見て完全に吹っ切れたわ」
「そうか。なら気晴らしに我を手伝わぬか?」
「いいわ。何をするの?」
「内容を聞いてから返事をした方がよいぞ」
「狐鈴さんの頼みだもの。なんでも聞くわよ」
「可愛いことを言うのじゃな。偶像崇拝企画を本格的に行おうと思うのじゃ。我も信仰心を集めるぞ」
「歌配信ね! 踊って歌っちゃう?」
「うむ。お主の気持ちが落ち着いてからでよい」
「なら。明日からで。次の出発まで頑張っちゃおうか!」
「よろしく頼むぞ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「秀一君のばかぁああっ!」
私はピンク色のお酒が入ったグラスを、カウンターに叩きつけるように置いた。
レベルが上がりすぎて、手加減しないと粉砕しちゃうのよね。
それが分かるくらいは理性が残っている。
吹っ切れたからといって、文句がないわけじゃない!
八つ当たりするくらいいいよね?
私はまどかと凛を誘って、おしゃれなバーに来ている。
ここなら秀一君と琴音ちゃんは来ないはずだから。
「アリサ。今日は飲もう! 飲んで飲んで飲みまくろう!」
まどかはそう言って、カクテルを追加注文してくれた。
「そろそろ諦めるには丁度良かったんじゃない?」
「どういうことよ?」
「昼間のレンきゅんの企画でさ、結構興奮して秀一君の札上げてたじゃない」
「ちらほら噂も流れてるしね。まぁアリサが諦めたなら、私が挑戦してみようかな」
「凛? なに言ってるの?」
「彼は魂の共鳴者かもしれない」
「……は?」
「あの中二病のポーズにセリフ。彼は逸材よ。私のパートナーにふさわしい」
「無理だって。あの二人は魂で繋がっているのよ」
「そこんところ詳しく」
「ちょっと凛? 本気なの?」
「ぶははは。凛、あんたアリサより中二病好きなの?」
「だってかっこいいじゃない!」
私はこの後、凛に二人のことを説明して、更にみじめになった。
止めを刺された気分だ。
そのおかげなのか、凛を思いとどめることができた。
あんまり考えたことなかったけど、彼氏欲しいなぁ。
真田さんは外も内もイケメンなんだけど、最近御影さんといい感じなのよね。
陰陽師は嫌だと言いつつも、ダムゼルの都市で心に秘めてた思いを出しちゃったのかな?
あの夢魔はプレイヤーをあの都市に、縛り付けるのが目的だったのかもしれない。
でも結果的にプレイヤー達の絆を深めることになったのよね。
愉悦之神は失敗したーとか思ってたりして?




