第139話 イケメン対決 2
「審査員をやればいいのね」
アリサさんの目が上下に動いた。きっとコメント欄を確認しているな。
リスナーが騒ぎ始めているのが見えたのか、口元がほころんだ。
「うちの事務所にもイケメンいっぱいいるからね。判定は厳しいわよ」
まどかさんは余裕の表情で、自分の案内妖精に目線を送ってポーズをとった。
さすがアイドルVtuberだなぁ。
「炎上しないように、公平に判定するわよ」
もうコメント欄が荒れているのか、凛さんが釘を刺した。
「じゃあ最初は、早川君にも美容院でお化粧してもらおうかな! まずはイケてる顔メン勝負さ!」
「え? 時間かかるんじゃ?」
アリサさんが首を傾げた。確かに段取りが悪い。突然の企画だし、それは仕方ないよな。
「場をつなげってことかしら?」
まどかさんはすでにリスナーへのトークを始める気満々の顔をしていた。
「段取りが甘い」
凛さんが一言で切り捨てると、正論すぎてレンが青い顔をしていた。
「ごめんよ! ゲリラ企画だからさ! 今の僕もだけど、ナチュラルメイクだから、そんなにかからないはずさ!」
レンさんが必死になって言い訳をしていた。
謎の声によっていきなりステージを作られたからな。
ちょっとかわいそうだ。
というか、突然都市の往来にステージができたことに、疑問に思わない方もどうにかしていると思うぞ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
俺は美容院で洗顔から、ナチュラルメイクまで施してもらった。
ちょっとかっこよくなったかも知れない!
美容院から出て、ステージに立つとアリサさん達から歓声が上がった。
「か、かっこいいじゃない! 秀一君で!」
アリサさんが思わず立ち上がりかけて、慌てて座り直した。
嬉しいけど、炎上が怖いよ。
「んー確かにいつもよりかっこいいけど、これはレンきゅんでしょう!」
まどかさんはあごに手を当てて、真剣な顔で俺とレンを見比べた。
自分で言うのもなんだけど、レンには勝てないと思うぞ。
「私は早川君かな」
意外にも凛さんも俺を推してくれた。
「なっ!? なんでぇ!?」
するとレンが素っ頓狂な声を上げた。
「私ちゃんと男の子が好きだから、メンズの方を選んだわ」
「私は両方いけるのよね」
「私もノーマルなので」
「そ、そんな……戦う前から勝敗は決まっていただと……」
レンはかなりオーバーに動揺していた。リアクション芸人でもやっていけそうだぞ。
「まだだ! 次はイケてるポーズ勝負だ! 小道具はありだよ!」
レンは薔薇を取り出して一度後ろを向くと、振り向きざまに流し目を審査員席に送り、右手で持った薔薇で口元を隠し、左手を回答席に向けて差し出した。
よくわからないけど、あれがイケメンポーズなのだろうか。
イケメンポーズ……普段考えたことがないから、サッパリわからん!
とにかくかっこいいポーズだ!
俺は左手に包帯を巻くと、頭のところまで上げると、顔を抱くように手首を曲げ、指も軽く曲げた。
俺は左手に包帯を巻き、ゆっくりと顔の高さまで持ち上げた。そして顔を抱くように手首を曲げ、指も軽く曲げた。最後に右手は肘を曲げて、バッと体の逆側に流した。
「左手が疼く……運命の人が現れたと言うのか」
「これは秀一君でしょ! かっこいい! ふぅー! ふぅー!」
やばい。アリサさんが腰を浮かして、前のめりになっている。
鼻息がすごいんだけど! アイドルだよね!? 俺の認識間違ってないよね!?
「アリサは厨二病キャラが好きだからねぇ。落ち着きなさい」
まどかさんがすかさずフォローを入れてくれた。
「まぁ、よく見る中二病のポーズだけど、刺さらない人には刺さらないので、これはレンきゅんね」
フォローだけだった。
「私も左手が疼く! こんなところに共鳴者がいたの?」
なんか凛さんの目が怖いんだけど!
俺と同じようなポーズをして、プルプル震えている。
「ば、ばかなっ! 僕の方はかっこいいんだ!」
レンはすっかり動揺して、声のトーンが上がっていた。
どちらかと言うと、お笑い芸人に見えてしまうのは、気のせいだろうか……
「次はシチュエーション勝負だ! お題は告白だよ!」
そう言ってレンは左手を胸に当て、右手を斜め上に掲げた。
「僕は君を! 愛してるよーーー!」
……え?
みんなポカーンとなって、誰も声を発しない。
「どうだい? 僕にこれを言われて、落ちない女の子はいなかった!」
「は?」
「え?」
「むり」
「えええっ!?」
レンは信じられないとばかりに、アリサさん達を見て呆然とした。
俺も信じられない。ネタだよね? そうだよね?
「そんなバカな……」
どうやら本気みたい。
ここは正統派でいこう。というかこれしか思いつかない。
イケメンのセリフかと言われると自信なんてないけど……
「好きです。付き合ってください」
俺は真面目な顔をして、順番に見つめていった。
「……はい。秀一君で」
「直球が一番よね。秀一君で」
「厨二病成分がたりないわ。期待させておいて、これはない。レンさんで」
凛さんは何を期待していたんだよ!
「……ええと。俺の魂を捧げよう! さぁ我と永遠の契約を結べ!」
「合格! 即興でそれが出るなんて! あなた才能の塊よ! 今から厨二病大喜利企画を立てないと!」
「琴音もすごいので一緒にいいですか?」
やばい! 悪いけど琴音も巻き込もう。
「秀ちゃん!?」
後ろから琴音の焦った声が聞こえてきたけど、地獄企画に付き合ってもらおう。
「あなたがすごいというなら採用!」
「ばかなー!! そんな……この僕が全敗だと……」
レンはガックリとうなだれて膝をついた。
「くっ。イケメンに二言はない。それに施術してもらっていたら、美容スキルを覚えたからね! もうこことはおさらばさ!」
「それを早く言えええ!」
「えええっ!?」
俺の突っ込みに、レンが心外だと言わんばかりに驚いていた。
そっちの方が心外だ!




