第137話 切れてる! 切れてる! 仕上がってるよ!
式神達はみんなを助けるために、四方に散っていった。
一方俺と琴音は、何か不測の事態があるといけないので、一緒に行動することにした。
まず俺達が向かう先はトレーニングジムだ。
「ふぅんんう!」
ジムに入ると、キャサリンさんが今日も自分の筋肉を鍛えていた。
集中しているのか、俺が側に来ても気づかない。
「キャサリンさん。そろそろ先に進みませんか?」
「ふんぬう。もう少しで……ふんっ! この肉体美が完成するのよ! ふぅんっ! もうちょっとだけ!」
「それ、毎日言ってますよね?」
「いいじゃない。 ふぅっ!」
キャサリンさんは一通り終わったのか、機器から身を離した。
「どうせ貴方達だけでも進めるでしょう。私、筋肉配信だけでも享楽を集めてみせるわ」
「この先何があるかわからない。だからキャサリンさんの力がきっと必要になるんです」
「なら、私を納得させなさい」
キャサリンさんに鑑定スキルを使うと、バッドステータスの『魅了』が付いていた。
解除方法は魂を揺さぶる刺激が必要なのか。
「勝負内容は?」
「決闘でシステムはどうかしら? でも式神を使ったら私は納得しないわよ」
決闘か。琴音との訓練は、勝つ必要がないから、今まで使ったことがなかったな。
「はーい。リスナー用に説明するわね」
案内妖精のセレナが出てきて、勝手に説明を始めた。
「決闘システムは、視覚に相手のシールドゲージが表示されるの。シールドゲージが七割減った方が負けよ。それじゃあ、決闘システムを使うわね」
すると視界の右上にキャサリンの名前と緑色のバーが表示された
なんか俺のバーより三倍くらいあるんだけど……。
ステータスを物理と体力に振りまくっているな。
刀も式神だから、こっちの刀を使うか。
俺はアイテムボックスから、こっちで取得した方の刀を取り出した。
「いくわよ! 早……秀一!」
「受けてたつ! キャサリン!」
「うおおおおおお!」
気合いと共に、キャサリンの筋肉が膨張した。
「はぁっ!」
闘気なんだろうか? キャサリンの体を黄金のオーラが包み込んだ。
「だらっしゃ!」
キャサリンの体がブレたかと思うと、目の前に拳があった。
俺はとっさに避けるが、今度は竜巻のような蹴りが飛んできた。
俺は蹴りを交わしつつ、刀でキャサリンの足を切りつけた。
ギャリギャリとシールドを削る音がしたが……かてぇ! シールドゲージが全然減らない!
「ぶるあぁ!」
今度は回転するようなあびせ蹴りから、カポエラのような曲芸蹴りに派生した。
スキルで色々な武術を習得しているのか!?
一旦離れると、キャサリンは横向きになり、手首をもう片方の手でつかみ、体を正面に向けた。
ゾクッとして、反射的に札を放った。
「サイドチェスト!」
そう言ってニカっと笑うと、キャサリンの体と同じ大きさのエネルギー波が放たれた!
意味がわからん!
「オン・カラマ・ヴァルダ・ナラカ! 符よ、結界を描け! 展符結界! 急急如律令!」
間一髪、防御障壁によってエネルギー波が飛び散った。
「ダブルバイセップス!」
キャサリンは両腕を頭の高さまで上げて力こぶを作ると、その格好のまま飛び上がった。
「アブドミナルアンドサイ!」
そして頭の後ろで腕を組むと、キャサリンの体が発光し、四方八方にビームを放ちながら突撃してきた。
ありえねぇ! なんだありゃ!
俺はビームをかわしながらキャサリンのシールドを削っていくが、こっちのシールドも削られる。接近戦は絶対に不利だ。
「クイックステップ!」
俺はスキルを使って距離を取る。
「サイドチェスト! ラットスプレッド!」
キャサリンがマッスルポーズをとるたびに、わけのわからんビームが飛んでくる。
「そろそろこっちも行くぞ」
「オン・アグニ・フーム・ソワカ! 札よ、火宿りて、翼とならん。散れ! 炎鳥! 焔爆焔鳥! 急急如律令!」
札を複数飛ばすと、炎の弾となってキャサリンに襲いかかった。
「フロントラットスプレッド!」
キャサリンが両腹に手を当て、逆三角形の体型を作ると、薄い透明な障壁が展開し、炎の鳥達を弾き飛ばした。
「オン・ヒマ・シタ・ソワカ! 水の理、寒威の気よ! 氷霜招来! 急急如律令!」
今度は氷の槍がキャサリンに向かって降り注いだ。
「むん!」
キャサリンは氷の槍を素手で掴むと、俺に投げ返してきた。
無茶苦茶だ!
「はあああっ! ダブルバイセップス!」
キャサリンが再び舞い上がると、今度は空中で身体を前に倒しながら、前で腕を組んだ。
「モストマスキュラー!」
キャサリンがニカっと笑うと、次の瞬間目の前に現れた。
「ぶるぁあ!」
「もってくれよ!」
「オン・チャットヴァーリ・ソワカ!」
俺は予め術を封じ込めた呪符を複数枚放つと、防御障壁が展開し、キャサリンが放った至近距離からのビームを防いだ。
「オン・エーカム・ソワカ!」
さらに俺は別の呪符を三枚展開し、至近距離からキャサリンに向かって光弾を三十発打ち込んだ。
キャサリンのシールドゲージがすごい速さで削られていき、キャサリンはギョッとして距離を取ったが、そこへ俺の呪術が追撃した。
「オン・ドゥヴァーダシャ・ソワカ!」
キャサリンの真下から炎が上がり、キャサリンをシールドごと包み込んだ。
キャサリンはとっさに炎から抜け出して、回避しようとするが次々と炎が上がり飲み込まれていく。
炎の中でキャサリンがポーズを決める
「うおおお! フロントリラックス!」
キャサリンの闘気が爆発し、炎が吹き飛んだ!
ありえん!
「モスト……」
最初は圧倒されたが、対人戦は慣れてないせいなのか、攻撃パターンが少ないな。
モンスター相手にはそれでいいかもしれないけど、対人戦ではそれは通用しない。
「マスキュラー!」
戦いの中、俺は呪符をこっそり巻いて、地雷原を作っていた。
そして俺は立ち位置を調整して、キャサリンを地雷原に突っ込むように誘導した。。
「ぐおおおお」
キャサリンは次々と呪符を踏み抜き、爆炎が上がり稲妻が弾け、とうとうシールドの残量が三割になりそうだ。
炎と黒煙の合間にキャサリンがたたずみ、ニカっと迫力ある笑みを浮かべてた。
「さすがね。私の負けよ」
「いいのか?」
一応まで七割削っていない。
「どうせこのままやっても無駄。秀一、ナイスマッスルね!」
「これでも鍛えているからな」
「そう。たまにでいいから、私のチャンネルでマッスルトレーニングしない?」
「あぁ! コラボしようぜ!」
キャサリンを鑑定すると、バッドステータスが解けていた。




