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第133話 次の都市へ

 マドールの町は魔族領侵攻の拠点にするべく、連日復旧作業が行われていた。

 復旧工事はリオネール王国の指揮の元進められているのだが、指揮を執っているのは、なんとカイゼルだった。

 お目付け役としてレオナさんもいたので、彼女に接触してみたところ、カイゼルはオレリア王女の信用を得るために、魔族領侵攻に参加を願い出た。するとオレリア王女はカイゼルを指揮官の一人に任命したそうだ。

 もちろん総指揮官は別にいて、カイゼルは主に復旧工事のみ指揮を任されていた。


「私はオレリア様を側でお守りする近衛騎士だぞ。なぜこのようなところに派遣されねばならんのだ」


「信用されているからじゃないですか?」


「……そうであって欲しいな」


「それにカイゼルは元スパイですし、オレリア王女はレオナさんの目で判断して欲しかったと思いますよ」

 

 カイゼルは元々アルベール王子のスパイだった。

 アルベール王子も既に故人で、人質に取られていた妹も救出済みだ。

 カイゼルがオレリア王女を裏切る理由はもうないが、王女の部下になる人物となると慎重にもなる。


 俺はしばらくレオナさんの愚痴を聞かされた後、町の復旧を見ながら戻ることにした。


 大きなゴーレムがアストラルゲートの周りで複数体稼働していた。

 復旧工事で大活躍したのが空太さんのユニークスキル、ゴーレム生成だ。

 単純に重機のように扱えるし、壁型のゴーレムを作って、解除すれば家の壁になる。

 土木建築に最適化されたスキルだな。

 

 そして桃瀬さんの地下水脈が分かるスキルも同様に大活躍していた。


「よう。秀一。丁度いいや。少し付き合え」


「師匠。どうしました?」

 

 俺は師匠に誘われて、半壊した空き家にあった椅子に座った。

 これ崩れないよな?


「昨日の翡翠を召喚しただろ」


「……はい」


「琴音が愚痴ってたぞ。今度の式神は秀一のこと好きすぎだとか、エロ過ぎだとか。そろそろ何とかしねぇと、やべぇんじゃねのか?」


「……そうですね」


「俺なんか。オレリア王女に目をつけられちまったからさ。結城ちゃんの機嫌がやべぇくらいに悪い」


「まぁ……なんというか……」


「俺のことはまぁいいや。何とかするさ。それよりお互い相手にされている内になんとかしようや。これ俺様からのありがたい助言な」


 師匠はそう言って去って行った。

 ……琴音の元に戻る足が重くなった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日俺達は次の町へ向けて出発になった。

 空太さんのパーティーと桃瀬さんのパーティーが、マドールの町を守る役目も買って出てくれたおかげで、残りのパーティーは引き続き攻略に向かえる。


 俺はエイを召喚すると、当然のように隣にいる琴音を見た。


「ん? どしたの?」


「いや、今日も琴音は可愛いなと」


「なになに? 朝からご機嫌取り?」


 琴音のニヤニヤ顔も可愛い。


「なんか後ろめたいことでもあるのかな?」


「ちょっと口に出ただけだよ! さっさと乗ってくれ!」


「ええ~ なに照れちゃってるの? ……というか、なんか不安なことでもある?」


「琴音には敵わないな。少し整理したら話すよ」


「うん。待ってる」


 エイに乗り込むと、既にアリサさんが中央に陣取って、リスナーのコメントに返事をしていた。

 気を紛らせているのかな?

 狐鈴は配信に映らないように側にいて、子供の成長を見守るような顔をしていた。

 何かあったら、教えてくれるだろう。

 俺にできることは、いつもより低空で飛ぶことだな。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 しばらく進んでいると、琴音が話しかけてきた。


「ねぇ。秀ちゃん」


「ん?」


「モンスターが全然いないね」


「そうだな」


 エイから下を見ると、プレイヤーを乗せた馬くらいしか見えない。


 遠くの方にモンスターの陰が見えた時があったけど、襲ってくる気配もなかった。

 こっちの方が数が多いからだろうか?


「この辺りは翡翠にやられたのかもな」


「あーなるほどね」


 俺達が先行して次の都市を攻略する理由は、道中のモンスターをなるべく倒し、後からくる王国軍の侵攻を安全なものするためだ。

 彼らのレベルは低いからな。それでもアストラルゲートを復旧するために頑張ってくれている。


「次の都市ってさ。ゲートを繋ぐだけの中継地点になるんだよね?」


「アストラルゲートを復旧させたら、ゲートを守る砦を作って終わりのはずだ」


「じゃあ次は、多少大暴れしてもいいよね? 面倒だし、遠距離から攻撃バンバンしちゃおうよ」


 ストレスかな。師匠の言葉が頭をよぎる。


「アストラルゲートを見つけてからな」


「そうだね。ゲートを壊したら怒られちゃう……」


「む。お主ら、おしゃべりはそこまでじゃ」


 狐鈴に促されて前方を見ると、巨大な蛇が空を飛んでいた。

 遠目で見ると、東洋の龍に見えたけど全然違った。

 鳥の羽根が生えた蛇だ。それも四匹。

 凝視して鑑定スキルを発動させると、『ヴァーダ・クェツァル・レベル320』


 地上にも小さな地竜というより、蛇に四つの足が生えたようなモンスターが群れをなしていた。

 そっちは地上組に任せよう。


「みんな頼む!」


 俺はエイを操作して、ヴァーダ・クェツァル達の、左側に回り込んだ。


「アンチ・フィジカル・ディフェンス・シールド!」


 琴音は精霊魔法で防御障壁を張った。

 陰陽術だと札が飛ばされそうだからな。


「マジカル・バスター」


 そして狐鈴が先制攻撃を放った。


 図太いレーザーがヴァーダ・クェツァルに当たる瞬間、虹色のエフェクトと共にレーザーが弾かれ、明後日の方向に捻じ曲げられた。


「む」


「ブルー・ライトニング・レーザー」


 今度はアリサさんが青いレーザーを放つが、結果は狐鈴と同じでヴァーダ・クェツァルの防御障壁に阻まれた。


 お返しとばかりに、ヴァーダ・クェツァルがどす黒い炎の弾を連続して口から放ってきた。


 俺はエイを操作して回避を行うが、元々飛行速度が速い式神でもないので、数発当たってしまう。

 それでも琴音の障壁が守ってくれた。

 俺もエイの操作の合間に、耐火障壁等を重ね掛けしてく。

 無詠唱のスキルを覚えたけど、集中はいるし、途中の詠唱がなくなるだけで、ラストスペルは唱える必要があるしな。


「スターライト・シュート! いっぱい!」


 狐鈴が理不尽な唱え方すると、星型の光が時間差をつけて、次々と放たれた。

 まるでガンシップを操ってる気分だ。


 琴音とアリサさんも真似して、無詠唱で炎や光の弾を連打していった。


 これにはヴァーダ・クェツァルの防御障壁は耐えられず、バリンと砕け散り、次々とその体に攻撃魔法をくらい、蜂の巣になって墜落していった。


 他のヴァーダ・クェツァルを見ると、まどかさんの極大魔法によって、体を抉られ真っ二つになって落ちていく個体、空を駆け縦横無尽に飛び周る御影さんに切り刻まれる個体、師匠の理不尽な呪術によって頭をふっとばされた個体がいた。


 下を見ると地上組が地竜を殲滅し、勝利の雄たけびを上げていた。

 きっと配信上でも盛り上がっているな。

 次の都市までまだ遠い。色々と温存しておかないとな。

 


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