第127話 魔族領侵攻
俺達は今、大きなエイの式神に乗って、魔族領の上空にいる。
「魔族領って言っても、変わんないねぇ。もっとおどろおどろしいところかと思った」
琴音が流れる風景を見ながら言った。
「元は人間の国だからなぁ」
「そうなんだけどさ。瘴気の影響で環境が変化してたりって思ったんだよ」
「瘴気を振り撒いてるのってデーモンくらいだろ。ここら辺にいないんじゃないか?」
「そっか。もっと奥に行ったら変わってくるかも?」
「たぶんな。対瘴気障壁を張りっぱなしになるのかもな」
「そんなところ長居したくないよ!」
「浄化しながら進軍とかも嫌だぞ」
「むぅ……そこまで酷くないことを祈るしかないねぇ」
享楽之神はそこまで意地悪な設定にしないだろう。でも愉悦之神が邪魔しているなら、最悪ありえる。
すぐ近くに、エイの式神が二体飛んでいる。
キャサリンさんが召喚したエイと真田さんが召喚したエイだ。
真田さんの方には師匠と結城さんが一緒に乗っている。
こっちは瘴気があっても上空に逃げればいい。問題は地上で移動している他のパーティーだ。
地上を見下ろすと、馬に乗ったプレイヤー達が三パーティー分走っていた。
その後ろに少し遅れて、王国軍が出した馬車が続いていた。
今回はプレイヤー全員で、マドールという町を奪還する。
そのバックアップやアストラルゲートの建築に、王国軍が付いてきているんだ。
プレイヤーだけならまだしも、王国軍まで瘴気対策するとなると大変だ。
一応瘴気を浄化する結界石を運んでいるみたいだけど、どこまで持つかわからないし、破壊されたら目も当てられない。
「まずは出たとこ勝負だな。何かあったら師匠や結城さんが考えてくれるさ」
「うん。この先どうなってるかわかんないもんね」
「とりあえず最初の町を攻略だな!」
マドールは小さいながらも、自然と調和が取れた綺麗な町だったらしいが、今はモンスターが住み着いてどうなっているかわからない。
「最初の拠点になるのかな?」
「たぶんな。最初の町からアストラルゲートをつなぐとか言ってたよな」
「うん。大丈夫かな?」
「オレリア王女達と色々話し合った結果だし。信じるしかないと思うぞ」
師匠の説明によると、マドールは魔族領攻略の足がかりにするらしい。
リオネール王国と直接アストラルゲートを繋ぐのは危険すぎるので、マドールまではゲートを使わず王国軍を進軍させる。
そしてマドールで拠点を築き、規模が大きくなってきたら、大きな都市に拠点を移す予定らしい。
「そうだねぇ。作戦とか戦略とかさっぱりだし!」
「俺達は戦闘専門だしな。って見えてきたぞ!」
草原に突如現れた石造りの建物群。
遠目で見ても廃墟だ。高い建物は倒壊していて、瓦礫の山にも見えなくもない。
町を観察していたら、空に信号魔法が上がった。ここらで陣営を築くんだな。
俺がエイを操作して着陸すると、アリサさんがフラフラながらも真っ先に降りて、ホッとしていた。
狐鈴は空からの風景を肴に一杯やっていたけど、全然酔っている風に見えない。しっかりした足取りだ。
それ程飲んでなかったのか、妖術で酔いを消したのかな?
狐鈴にアリサさんを見てもらっている間に、俺はテントを取り出し設置した。
いざっって時に固まっていた方が良いと言われて、俺と琴音のエアテントに、狐鈴とアリサさんも入ることになった。元々四人用だから丁度いいな。
ソファーとかローテーブルはしまっておくか。
今日はここで体を休めて、明日の朝から攻略開始だ。
他のみんなも次々とテントを設置して、ちょっとしたキャンプ場みたいになった。
夕食を取った後、俺は一人でテントから抜け出した。
夜の配信まで少し時間があるんだ。
アリサさんは少し仮眠取ると言って横になっていた。
琴音と狐鈴は夕食後のまったりモードだ。
外は真っ暗だけど、あちこち篝火が焚かれていて、王国軍の騎士や魔道士が不寝番をしていた。
「休まなくていいの?」
不意に後ろから声がかかった。
「ちょっとな。琴音こそいいのか?」
「今寝ちゃうと起きれそうにないしね」
「俺もだよ。というか、ちょっとあそこにいるのが気まずい」
「あはは。アリサちゃん。寝相悪いもんね」
「布団蹴飛ばして、おなか出して、おけつをボリボリかいてたよな」
「秀ちゃんのエッチ!」
「目のやり場に困ったから、こうやって出てきたんだろ」
「……そっか」
「秀一よ」
狐鈴がテントから出てきた。
「狐鈴も涼みに?」
「それも良いが……感じぬか?」
「え?」
「あの町の方から、式のような気配がする」
「十二姫将かな?」
「まぁそうであろうな。ここまで気配が届く存在じゃぞ? 気を引き締めておくがよい」
「そうだな……」




