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第122話 王女の決断――あなたにします

 デーモン襲撃から数日後、王家主催の祝勝会が行われることになった。

 いつも通り、師匠と結城さんが代表で参加するのかと思っていたら、なんとプレイヤー全員が招待された。

 更に次のグランドクエストは、この祝勝会から始まると告知があり、みんな胸が高鳴った。

 王家絡みのイベントは面倒だし、何より強敵が出てきて危険だ。そんな理由でみんな積極的ではなかったけど、レベルがすごく上がって余裕ができたのか、参加意欲も高く、テンションも高めだ。

 

 ただ、こういった王家や貴族が絡むパーティは、ただのパーティではないらしい。

 今後どうするか、王家と俺達で手を組めるのか、そしてあわよくば俺達を取り込めるのか、そういった思惑が渦巻いているらしい。

 師匠と結城さんにそう説明され、覚悟をもって参加して欲しいと言われた。


「みんな気合入っているな」


「でもなんか複雑感じ?」


 王族や貴族が出席する祝勝会なだけあって、服装に関してはオレリア王女から指定があった。

 貴族より目立つのは困るが、平民のようなものはだめとか、結構難易度が高い。

 みんな困ったけど、案内妖精がアドバイスしてくれたおかげで、下級貴族に見えそうな服装に落ち着いた。

 特に男の服装にはチェックが激しく、人によっては王家から衣装を貸し出されて着替えさせられた。

 

 なにせオレリア王女の婿候補を選ぶ場でもあるみたいなんだ。

 プレイヤーを王家に取り込んで、知識や通販で買える食料の輸入など、個別で交渉しようとしている。

 

 結城さんとしては、頭が痛いことになってそう。結城さんっていつの間にか責任者っぽい位置になっているんだよね。

 みんな冒険者ギルドに入っているけど、勝手に転移させられてギルドに放り込まれただけだ。

 ギルドの一員という認識が薄いし、ギルドに対して責任も思い入れもない。

 

 しかし結城さんは違う。自衛官として俺達を保護する立場として、後から転移している。

 現に配信を通じて、俺達の安否や脱落者の報告を行なっている。そろそろ補充要員が来ないと潰れそうだよ。

 一緒に来た師匠がフォローしているけど、いつもチャラいからなぁ。


「秀ちゃんはその点緊張しないでしょ。変態だし」


 俺は以前、オレリア王女に変態だって言われて、婿候補から外されている。


「俺は変態じゃない!」


「コメント欄にちゅーもく!」


 コメント欄には変態という文字や、赤い怒りの顔文字が連打されていた。


「くっそぅ。何度誤解だと言えば……」


「へーんたい♡」


 いきなり耳元でアリサさんに囁かれた。


「うひゃう!」


 コメント欄が更に荒れ始めた。勘弁してくれ!


「生ASMRよ。感謝しなさい」


「私もする!」


 琴音に反対側の耳元で、


「変態♡」


 と甘く囁かれた。


「おおう。琴音のはやばい! なんかやばい!」


「ちょっと! それどう言う意味よ!」


 アリサさんが頬を膨らませて、俺の足を踏んだ。


「いってぇ!」


「私、これでもASMRのプロなんだけど! 最近更に色っぽくなったって、評判いいんだけど!」


 ASMRってのは、音や声で心地よくなるコンテンツのことだ。耳かきされながら囁かれるのが有名だな。


「ふふん。秀ちゃんは私の方が良いみたいだね!」


 なぜか琴音がドヤ顔だ。


「ムッカ! 琴音ちゃん! 勝負よ! プロの意地を見せてやるわ!」


「いいけど! 勝負内容は?」


「私が右から、琴音ちゃんは左側から……しゅ、秀一君の耳を、声で攻めるのよ!」


「わかった! 余裕すぎる!」


「良い加減にしてください」


 いつの間にか、オレリア王女が目の前にいた。

 顔を真っ赤にして怒りマックスだ。


「聞いていれば、なんて破廉恥な! そういうのは帰ってからにしてください!」


「すみません」


「ごめんなさい」


「すみません」


 アリサさんが左下、たぶんコメント欄が表示されているところを見て、ギョッとしていた。チャンネルが炎上でもしたのかな?


「さ、さてと……冗談はさておき……あんまりやり過ぎないことね。チャンネルが赤くなっちゃうから!」


「アリサちゃんがそれいう?」


「私は普段こんなことしないんだけど……」


 アリサさんの目が泳いだ。


「最近あんた達をからかうようになってから、ちょっと怪しいのよ……」


 センシティブな配信を行うと、ライブスフィアから警告が来るんだよね。ガイドライン違反だって。

 最初は黄色い背景色の警告が来て、改善しないと赤い背景色……真っ赤じゃなくてピンク色だけど、警告がくる。

 ここまでくるとペナルティが発生して、それでも改善しないとチャンネル削除だ。


「アリサちゃん! 秀ちゃんをからかっていいのは私だけだよ!」


「毎日イチャイチャを見せつけられる、私の身にもなってよね!」


「うー! ちょっとだけだよ?」


「いいのかよ!」


 話がとんでもない方向にずれちゃったけど、王国としては俺達の誰かを取り込みたいらしい。

 好待遇で勧誘しても、反応が鈍かった俺達に、王家はオレリア王女との結婚をカードにしたみたいだ。

 とんでもないハニートラップにしか見えないけどな!

 

 オレリア王女と結婚すれば、ゆくゆくはこの国の王になれるかもしれない。

 知識を搾り取るだけ、搾り取られて、はいさようならって可能性もあるけど。


 それほど王家は俺達の知識や物資が魅力的だったってことだな。

 ダンジョン攻略の時に、エアテントとかこっちの料理とか見せすぎたのかもしれない。

 それとデーモンが化けたアルベール王子だな。奴の政策は相当優秀だったのかもしれないな。

 

 オレリア王女は立場上自分から声をかけない。待ちの姿勢だ。

 配下の者が、男性プレイヤーに声をかけ、オレリア王女に売り込むように声をかける。

 しかし誰も行かない。みんな帰る気満々だからな。遊びで付き合えば炎上するだろうし。責任取って残るなんてことになったら、目も当てられない。だから気合の入った衣装を着せられても、気まずくて困るだけだったんだ。


 そんなわけで、オレリア王女は不機嫌マックスになって、俺に当たってきたのかもしれない。


 そもそもプレイヤー達の関心はグランドクエストに向いていた。

 アルベールを倒した後、散り散りに逃げたモンスター達は、王国軍が引き続き討伐することになったが、王国軍だけで対処するわけではなく、当然周辺の都市にある冒険者ギルドにも依頼が行き、しばらくはどこのギルドでも大忙しになった。

 

 当然俺達のギルドにも討伐依頼がきて、みんな適度に受けて配信を行ったが、盛り上がりに欠ける配信ばかりになった。

 モンスターのレベルが低すぎるというより、プレイヤーのレベルが高すぎるのだ。


 常夏の島のダンジョンがアップデートされ、レベル三百まで解放されたが、みんなこぞってダンジョン配信したせいで、似たり寄ったりの内容ばかりになった。

 しかも急ぎで追加したせいか、レベルが違うだけで、既存のモンスターの使いまわしばかりだった。

 

 配信がマンネリ化した今、グランドクエストは新しい配信ネタの起爆剤になる。みんなそれに期待していた。

 あからさまなハニートラップのオレリア王女に、構っている暇なんてないんだ。


「あれ? オレリア王女様、ご機嫌斜めだね? どしたの?」


 ふらっとやってきた師匠の顔が赤い。自分は婿候補の対象外だと思って飲んでるな。


「決めました。あなたにします」


「あ?」


「私の婿になってください」


「……はぁ?」


 はああああっ!?

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