第123話 どうしてこうなった?
え? オレリア王女が俺に婿になれだと?
ありえねぇだろ!
頭湧いてるんですかっ?
しかも公の場で、王女の方からだと!?
そもそも男の方から求婚するルールじゃなかったか?
まずい、まずい。これはまずい。断ったら王家の面子がまる潰れだ。
これからアストラルゲートの建設で王家と繋がりが必要だっていうのによぉ!
あーもう! 意味が分からねぇ!
ゾクっと悪寒がした。
やばい。やばい。これは呪詛に匹敵する殺意に満ちた視線だ。
誰だ? って結城ちゃんじゃねーか!?
あれ? 結城ちゃんってそっけなかったけど、ちょっと脈ありだった?
おじさんすっごく嬉しいんだけど!
くっそ。今はそれどころじゃねぇ!
オレリア王女だ!
こいつ自暴自棄になって誰でも良くなってねぇか?
そもそも王家の人間に自由恋愛なんてないか……。
国と王家のために、最善になる相手と婚姻を結ぶのが王女の役割だ。
それが俺だと? ありえねぇ!
「おい。何考えてるんだ?」
俺はオレリア王女に少し圧をかけてみたが、さすがは王女様。こういうのに慣れてやがる。
「国のことを考えています。あなたは異世界人で、この世界にない知識を持っています。それはアルベールに化けていたデーモンと同様か、それ以上のものと見受けられます。そして異世界の物資をこの国に提供できます。あなた以上の方がいますでしょうか?」
「あぁ、俺以外にもいると思うけど?」
周りを見るとみんな視線を外しやがった!
秀一てめぇ! 何関係ねぇって面してやがる! 後で扱き決定! はい決定!
くっそう! 結城ちゃんが脈ありかもしれねぇんだぞ! オレリア王女に構ってられるかっつーの!
「こちらからはアストラルゲートの建設だけでなく、その知識も提供しましょう。もちろんアストラルゲートを維持する人員も」
こっちが喉から手が出るほど欲しいカードじゃねぇか!
「あ! あれだ! 知ってる限りの知識を提供する! それだけじゃねぇ。専門分野の人間がいたら知識を提供させる! もちろん食料なんかの貿易の窓口にもなる! この場で結婚まで進めなくてもいいとおじさんは思うな!」
「あなたは一見軽率に見えて誠実な方です。言葉遣いも皆に発破をかけるためのもの。そして自分を悪者にして物事を解決する。そんな自己犠牲も素晴らしいと思いますよ」
こ、こいつ……
「い、いやしかしだな……」
「王家に対するその口の聞き方を黙っているのも。私の好意です。これ以上私に恥をかかせる気ですか?」
「ぐ……」
ま、まずい。このままじゃ俺は王家侮辱罪とかで死刑? まぁ逃げるけど。そうなったら秀一達はどうなる?
やべぇ積んだか? キャサリンあたり身代わりに出来ねぇかなぁ……
「私も沖田を困らせたいわけではありません。今は婚約者にしましょう」
「あっ! 俺貴族でも何でもな……」
「既に名誉貴族ですよ。忘れましたか?」
そう言えば、どっかの会議でそんな話してたかもしれねぇ!
興味なさ過ぎて、記憶の彼方にいってたぜ!
「……承知しました。謹んで御受け致します」
どうしてこうなったぁあぁ!
俺はどこで、何を間違えちまったんだ!?
おいおい。せっかく結城ちゃんが脈ありかもしれねぇんだぞ!
あー終ったー! 俺終ったー!
「少し二人で話がしたいので、あちらへ」
オレリア王女は俺の返事を待たずに、パーティー会場からバルコニーへ歩き出しやがった。
こっちの意見とか意思とかは、関係ねぇってか?
バルコニーに出て、手すりの前まで来ると、オレリア王女は振り返った。
確かに美人だが、危険すぎて手を出したくない。俺の直感がやめておけと警報を鳴らしまくっている。
「おい。オレリア王女様よ。これはちょっとひでぇんじゃねぇか?」
「そうですか? 私から声をかけたのです。光栄に思ってください」
マジで言っているのか?
「……冗談です。そう怒らないでください」
「婚約も冗談だよな?」
「それは本気ですよ。事情は察してください」
「俺は帰るぞ」
「帰りたくならないようにしてみせます」
「……で? 本題と行こうじゃないか」
「魔王軍やデーモンの襲撃は、またあるのでしょうか?」
「さぁな。魔王軍襲撃はあるんじゃねぇか? だがよ、このままやられっぱなしは趣味じゃねぇ。こっちから打って出る」
「そうですか。なら王家は全力で支援します」
「まずは魔族領について教えてくれ」
「魔族領は元々人間の国でした。もう何十年も前の話になりますが、ある日魔王が魔族やモンスターを率いて現れ、その物量と強さの前に、人間の王国はなすすべもなく滅びました」
「魔王ってのはどこからきたのか? 別に魔族が住む土地とかあるのか?」
「わかりません。あまり文献が残っていないので」
享楽之神め。手を抜いたか?
「じゃあ、人が作った都市や街はまだ残っているのか?」
「冒険者の報告によると、国境都市から近い町や村は廃墟と化し、人型のモンスターが住み着いていたそうです。その先にある大きな都市も同様だとか。そしてそれ以上先に行って、戻ってきた冒険者はいません」
「ふむ。廃墟か。国境都市付近に、アストラルゲートを建てようと何度か攻めて来たみたいだが、廃墟と化したアストラルゲートは生きているのか? もし生きているとしたら、なぜゲートを使って攻めてこない?」
「冒険者の報告によると、どのアストラルゲートも破壊されていました。もうだめだと思ったら、まず行うのがゲートの破壊ですから。そしてゲートは国ごとに仕様が異なります。他国のゲートはその国の中でしか転移できません」
「なるほどな。仕組みを変えておかないと、他の国から侵略され放題ってことか」
「はい。それに国が把握していないゲートを、破壊して回る部隊もいますので」
「なるほどな。便利な反面、管理も大変ってことか。よし、今後の方針としては、その廃墟と化した都市まで行って、モンスターやらデーモンを制圧。そこを拠点にして魔王がいるところまでゲートを繋いでいくでいいか?」
「はい。文献によると魔王がいるのは魔王領の中央にある、ゴルドーラと呼ばれてる都市です。国境都市からゴルドーラまで、二つの街四つの都市があります」
「街は無視してもいいか?」
「はい。最低でも四つの都市は制圧して、ゲートを設置した方がよいです」
「ゲートの建設と維持はそっちに任せていいか?」
「はい。見返りはあなた達の世界の食料と技術。差し当たっては治水と疫病対策です」
「アルベールが進めていた事業か」
「……はい」
「わかった」
食料は通販。技術はネットで調べればいいし、調べた情報の精査は結城ちゃんに……相談しづれぇ……




