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第120話 浄火、怨念を断つ

「オオオォォォ!」


 怨霊は浄化の光に包まれ、デーモンの顔が次々と消えていく。

 しかし……

 

「足らないか」


 肝心のアルベールの顔だけが、苦悶の表情のまま張り付いていた。


「オン・シバ・ラタ・サイカイ・ソワカ!」


 琴音が呪文を唱え始めた。

 俺は考えるよりも早く、呪文を唱えながら駆けだした。


「オン・アグニ・カジャラヤ・ソワカ! 天より降りよ、邪鬼断罪の刃! 召刃・天焔業刀あまのほむらのたち! 急急如律令!」


 琴音より前に出て刀を正眼に構えると、俺の左右に蒼蓮と紅羽が並んだ。


浄炎菩薩じょうえんぼさつ月浄菩薩げつじょうぼさつ黒祓菩薩こくばつぼさつに申し上げる」

 

 怨霊が四方八方に触手を伸ばし、狂ったように暴れ出した。

 俺達は向かってくる触手だけを防ぐ。


「浄化せし純白の炎。邪を断ち、けがれはらう!」


 俺達は触手を弾くと、左右に散って射線を空ける。


震魂浄火しんこんじょうか! 急急如律令!」


 琴音の背後に曼荼羅模様の和風魔法陣が浮かび上がり、純白の炎が放たれた。


 純白の炎が怨霊を包み込み、怨霊が徐々に小さくなっていく。

 そしてアルベールの顔が最後の怨嗟を上げて、怨霊は徐々に消滅していった。


「……やったか?」


「たぶん」


 ここは戦場で辺り一面デーモンの死骸だらけだ。怨霊が完全に消えたのを確かめるのは厳しい。

 琴音と二人で穢れをチェックしていると、狐鈴が安心させるような笑みを浮かべながら近づいてきた。


「大丈夫じゃ。全て払われておる」


「狐鈴が言うなら大丈夫だな」


 俺は狐鈴の言葉にほっと息を吐いた。


「うむ。安心せよ。じゃが……これだけのデーモンの死骸を片付けるのは骨よの」


「うわぁ……」


 俺は再び辺りを見渡した。

 数えきれないほどのデーモンの死骸で埋め尽くされている。


「祝詞を使えるのは……」


 師匠は以前、「俺みたいな性悪オヤジには使えねぇんだよ」って言っていた。

 真田さんと御影さんは使えたはず。


「四人だけか」


「……あのさ」


 アリサさんが小さく手を上げた。


「教えてもらえば、できるものなの?」


「それなりの修行がいるから、すぐに出来るようなものじゃないぞ」


「そっか。残念」


「とりあえずこっちは俺達で何とかするよ」


「わかったわ」


 アリサさん、どこか悔しそうな顔をしてたな。

 本気で陰陽師になろうとしている。

 なんだかちょっと嬉しい。


「まぁ……その前に残党狩りだな」


 面倒なことは後回しだ……


◇◆◇◆◇◆◇◆


 アルベールとデーモン達が倒されたことによって、残ったモンスター達は逃走を始めた。

 素直にアストラルゲートに向かって逃げてくれれば問題ないけど、そう都合よく逃げてはくれない。

 散り散りになって逃げだせば、周辺の都市や街に被害が出る。

 広範囲な魔法や術を使って殲滅したいところだけど、王国軍の兵士を巻き込んでしまうので使えなかった。

 俺達は疲れた体に鞭を打って残党狩りを行った。


 そういえばレベルアップ弊害は俺達だけじゃなくて、やっぱり他のプレイヤー達も起きていた。

 俺達ほど急激に上がったわけではないので、復帰も早かったみたいだ。

 

 肉体的にも精神的にも疲れ切っていたが、みんな残党狩りに参加してくれた。

 もしかしたらボーナスステージのように思えたのかもしれないし、他のプレイヤーとレベル差が付くことが怖かったのもしれない。

 そのおかげか、全員のレベルが二百以上に上がっていて、まどかさんのパーティはみんな三百を超えていた。

 

 ふと気づいたことがある。

 もしかしたら愉悦之神の本当の狙いは、バランスの崩壊かもしれない。

 享楽之神が用意したモンスターやクエストのほとんどが、既にぬるいものになり、配信しても盛り上がりに欠けたら、それはもう愉悦之神の勝ちなのかもしれない。


 この時俺は、その推測が正しいことをまだ知らなかった


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