第116話 レベルアップ弊害による罠
三十分くらい戦っただろうか。
デーモンの数もかなり減ったところで、やっとアルベールが現れた。
でかい……とはいっても、こっちの機動式神と同じくらいだから五メートルくらいだろうか。
もはや人の面影はなく、紫色の肌に、大きな角、長い尻尾、そして硬そうな肌。
第一印象はメカマッチョだ。そして大きな蝙蝠の翼が、より大きく見せていた。
改めてアナライズを発動させると、『アルベール・デーモンエンペラー・レベル200』。
人間に化けていた時より、レベルが上がっている。
こっちが本来の力ってことか。
しかしモンスターの軍勢やデーモン達を倒し続けて、俺達のレベルは二百を超えている。
油断しなければ倒せる相手だ。
そう思ったら、アルベールが手を上げて、こっちに向かって振り下ろした。
するとアルベールの後方に控えていたデーモン達が一斉に襲いかかってきた。
「数が多い……」
俺と琴音は、再びドローンを展開しつつ、アサルトライフルから榴弾砲に切り換え、撃って撃って撃ちまくる。
「きりがない!」
「秀ちゃん! そろそろ弾も残りわずかだよ!」
「そろそろいったん引くか……えっ?」
なんだろう金色に光るデーモンがいた。それも数十体。
俺は勢いのまま金色のデーモンを打ち抜いたその瞬間。
「ぐあああっ!」
一気にレベルが上がり、強烈な筋肉痛と頭痛が襲いかかってきた。
「きゃああ!」
琴音も俺と同じ、レベルアップ弊害を食らってしまったのだろう。
メニューを意思だけで開くとレベル三百八十まで上がっている……
RPGでよくある、経験値がたくさんもらえるモンスターってやつか……
それを数十匹まとめて倒してしまった。
だめだ。倦怠感で考えがまとまらない。
「こ、琴音……引くぞ」
「う、うん……」
俺と琴音は適当に榴弾砲を撃つが狙いが甘い。
そしてデーモン達が次々と黒い炎を放ってくる。
「ぐはっ!」
俺は全てをかわし切れず、いくつか被弾した。
今回は全弾撃ち尽くしたら戻る予定だったから、回復役を置いてないんだ。
体中筋肉痛で腕がもう上がらない。
狙いも定まらない。
まずいと思ったその時、随時持続回復魔法、リジェネレーションを閃いた。
それと同時に無詠唱スキルを閃く。
ナイス閃き!
「愉悦之神の言った通りだな」
いつの間にかアルベールが目の前にいた。
気づけなかった!
「レベルアップ弊害はきつそうだな!」
アルベールの拳が機動式神の腹に突き刺さり、装甲が凹んだ。
「かはっ……」
更にアルベールの回し蹴りを食らい、俺はたまらず落下した。
憑依型機動式神は呪いの藁人形と同じく、全てのダメージが憑依者にフィードバックする。
この高さから落ちたら確実に死ぬぞ!
「ぐううっ!」
地上がグングン迫ってくる。
俺は何とか飛行魔法を制御して、ギリギリのところで上昇する。
急激な加速と停止によって、目の前がブラックアウトしそうになった。
「やあっ!」
かすむ視界の中で琴音の声がした。
琴音はアルベールに向かって、榴弾砲を撃ち続けた。
しかし狙いが甘かったのか、全て避けられてしまう。
その間に俺は体勢を立て直し、リジェネレーションを発動する。
琴音は榴弾砲を撃ち尽くしたのか、アサルトライフルに切り替えた。
「やる気満々じゃないか。自殺志願じゃなかったのか?」
「お前達を倒したら、俺達は天国にいけるそうだ!」
「愉悦之神がそう約束したのか!」
「そうだ。だから死ね!」
アルベールの背後に、無数の黒い炎が出現した。
「ハッチフルオープン!」
機動式神の至るところにあるハッチが開き、無数の式札が発射された。
「オン・ラハラ・ソワカ! 札よ。壁となれ! 急急如律令!」
黒い炎が俺達に向かって次々と発射されたが、札が盾となって防いだ。
しかし攻撃してきたのは、アルベールだけじゃない。追い付いてきたデーモン達が一斉に炎や魔力弾で追撃してくると、札の盾は一瞬で破壊された。
「琴音! 憑依解除! いったん戻るぞ!」
「了《 りょ 》!」
憑依が解け、視界が元に戻った。
俺は急いで呪文を唱える
「オン・ブール・セー・ジャラ・ヴィマーナ・ソワカ! 魂無き形代よ。呪縛の傀儡なり! 来たれ! 黒鉄の物の具! 急急如律令!」
ズドンっと機動式神が落下してきた。
空中で緊急憑依解除したからな……
それでも地面に落ちる前に回収できてよかった。
落下の衝撃であちこち壊れてしまったけど、大破するよりマシだろう。
「琴音!」
「大丈夫だよ! 秀ちゃん!」
「良かった。リジェネレーションは閃いたか?」
「うん。今回復中」
「とりあえず少し休憩だ」
「だね……」
俺が大の字になって倒れると、琴音が俺の胸に頭を乗せてきた。
「秀ちゃん成分も補給……」
「俺も琴音成分を補給だ……」
俺は琴音の頭に手を乗せてなでる。
「んんっ」
「……あんたら何やってるの?」
「……え?」
声をした方を見ると、仁王立ちしたアリサさんがいた。




