第115話 憑依型機動式神出撃
俺と琴音はアイテムボックスから、梵字がビッシリ描かれた布を取り出して地面に敷いた。
これで簡易的な儀式場を作る。続いて式神の依代となる大きな式札を取り出し、前方に置いた。
そして儀式場である陣の上で胡座をかき、印を結ぶ。
「オン・ブール・セー・ジャラ・ヴィマーナ・ソワカ! 魂無き形代よ。呪縛の傀儡なり! 来たれ! 黒鉄の物の具! 急急如律令!」
大きな式札が燃え上がり、青白い稲妻がバチバチと弾けた後、そこに白い巨人――憑依型機動式神が立っていた。
黒鉄とは古の言葉で鉄って意味なだけで色は関係ない。
装甲が白いのは邪を退け魔を払う意味があったりする。
「オン・ジャラ・クシャ・カジャ・ソワカ! 魂鎖の意交、魂の渡り、呪装の連結! 急急如律令!」
憑依の呪文を唱え、トランス状態から目覚めると、視点が地上五メートルくらいになった。
未だに慣れないんだよな。距離感なんていつもと全然違うし。
正直言うと大雑把な動きしかできない。
火力は半端ないけど、真の強敵と戦うことはできないと思う。
俺が未熟なだけかもしれないけど。
「十九式・二十ミリ・アサルトライフル」
俺の言霊に反応して、機動式神の両手に巨大なアサルトライフルが一丁ずつ現れた。
マガジンに入っているのは、弾丸ではなく式札だ。
この式札が弾丸を召喚してくれるので、マガジンの切り替えなく、大量の弾を撃つことができる。
その弾丸もマントラが刻まれた、対デーモン用の特殊弾頭だ。
「自立型ドローンシステム」
今度は両肩にミサイル発射装置みたいな四角い格納庫が現れた。
中に入っているのは、もちろんドローン。俺が敵と認識した標的に自動的に追尾して、刻印している術を発動してくれる。
倒しきったら自動で戻ってくる可愛い奴らだ。
琴音の機動式神を見ると、両手にショットガン、肩には俺と同じドローンシステムだった。
「いくぞ!」
機動式神に搭載された念話で、琴音に語り掛ける。
「了!」
飛ぶ。そう思うだけで、機動式神が地面を蹴って飛び上がった。そしてモンスターの軍勢を飛び越え、後方のデーモン達の元へ向かう。
前方に巨大な火の鳥が現れた。朱雀だ。しかも本物の朱雀だ!
朱雀はデーモン達を薙ぎ払った。レプリカの朱雀とは別次元だ。
「すげぇ……」
そして最後は炎を撒き散らし、遠くにいるデーモン達まで焼いていった。
「アレが本物の朱雀……」
俺も琴音も、あまりのすごさに言葉を失った。
朱雀が消えたかと思ったら、今度は青龍が暗雲から降りて来て、デーモン達に稲妻を落とし、体当たりして蹴散らしていった。
「アリサちゃん、すごい……」
「あぁ……もう終わりみたいだぞ」
青龍が消えると、アリサさんとセリーニがこっちに飛んできた。
(秀一様。もうアリサが限界なので引きますね)
頭の中にセリーニの声が響いた。
(あぁ。了解だ)
「琴音。アリサさんは一時離脱だ」
「あれだけの術を放てばねぇ。レベルアップもすごそう」
しばらくすると俺と琴音の下を、アリサさんとセリーニがすれ違うように抜けていった。
「んじゃ。琴音! 行くぞ!」
「うん。私達も負けられない!」
既にデーモン達は目の前だ。
俺は両手に持ったアサルトライフルの引き金を引く。
巨大なアサルトライフルから発射された弾丸が、デーモン達を木っ端微塵にしていく。
生身ならそこそこ手ごわい相手だけど、機動式神の前ではただの的だ。
グレーターデーモンやデーモンキングが回避行動をとるが、手数が圧倒的に違う。
「ドローン展開!」
俺の言霊に反応して、八機のドローンが発射され、回避するデーモン達に向かって飛んでいき、青白い雷のようなレーザーを発射した。
前方で青い線が幾つも走り、デーモン達を串刺しにしていく。
デーモン達もただやられているだけじゃない。
黒い炎を撃ち出しながら、こっちに迫ってくる。
「ハッチオープン! 呪符展開!」
俺は後退しながら、機動式神のあちこちにあるハッチを開け、そこから呪符がばら撒かれた。
「オン・ドラガ・ラシュマ・アグラヴァ・ランダ・クシャンバ! 式の札よ。炎輪となりて、万象を焼き断て! 爆破符・烈火陣! 急急如律令!」
呪符が連鎖的に爆発し、空に爆発の花を幾つも咲かせる。
「ふぅ。徐々にレベルが上がる分には、そんなにきつくないな」
「そうだね。大技で一気に倒さなければいける!」
アリサさんがデーモン達を大量に倒したおかげで、もはや残党狩りだ。
だが、この時俺達は思わぬ落とし穴にはまっていた。




